大荒れのエルサレムとヤッフォ:ユダヤ人とパレスチナ人が乱闘も 2021.4.24

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4月13日にイスラム教ラマダンが始まった。以来、東エルサレムのダマスカス門周辺や、テルアビブのヤッフォなどで、パレスチナ人とユダヤ人、イスラエルの治安部隊との暴力的な衝突が、ほぼ毎日続いている。

特にエルサレムでは、22日、ユダヤ人の極右勢力約300人が東エルサレムの旧市街で「アラブ人は死ね」などと言いながら行進したため、パレスチナ人、治安部隊も絡んで大乱闘となった。

さらにはユダヤ人左派もデモを予定するなど、混乱と緊張が続いている。(注:エルサレムの町全体が緊張、混乱しているのではなく、東エルサレムの旧市街地域だけである)

国連とヨルダン政府は、双方に落ち着くように呼びかけている。アメリカ政府は、特にアメリカ人が、極右ユダヤ人、パレスチナ人双方から憎まれていると考えられるためか、自国民に対し、特に注意を呼びかけている。

ラマダン中の警戒体制中の衝突

イスラエルは、コロナ対策の観点から、ラマダン期間中も、西岸地区からエルサレムの移動、また、神殿の丘(イスラム教のハラム・アッシャリフ)への入場を制限している。日没後もレストランなどの営業にも制限を課している。

ラマダン期間中は、通常でもパレスチナ人との衝突が発生しやすいのだが、コロナ対策でパレスチナ人たちがさらに反発していることから、警戒体制がとられていたが、案の定、ダマスカス門周辺で治安部隊との小競り合いが報じられていた。

東エルサレムからは、自転車に乗っていた超正統派の若い男性が、複数のアラブ人に襲われ、蹴られる様子などが、Twitterにアップされた。

テルアビブのヤッフォ(アラブ人とユダヤ人と半々の町)では18日、イシバ(ユダヤ教神学校)のラビ2人がアラブ人に襲われた。これを受けて、右派政党ヤミナのナフタリ・ベネット氏はじめ、複数の右派政治からがこれを非難する声明を出した。

すると、その夜、右派ユダヤ人ら30人が、ヤッフォで、この暴力行為を非難するデモを行なった。警察官が駆けつけたが、アラブ人たちと口論になり、そのうち、火炎瓶を投げ始め、警察も威嚇手榴弾を投げる乱闘となった。

極右ユダヤ人グループ300人のデモ・続いて左派も対抗デモ予定

上記のような様子を受けて、エルサレムでは22日夜、極右ユダヤ人約300人の一団が、あえてダマスカス門から、「アラブ人は死ね」「アラブ人は出ていけ」と言いながら、行進した。一部は、投石したり、ごみ収集箱に火を放ったりした。

これにより、パレスチナ人たちと乱闘になり、治安部隊は暴動班が出動。放水車だけでなく、威嚇用手榴弾、催涙弾まで使って両者を引き離して乱闘を抑えようとした。するとパレスチナ人たちは、治安部隊に投石するなどして反発。

赤新月社(イスラムの赤十字社)によると、パレスチナ人105人が負傷。うち22人が入院して治療を受けてい流。治安部隊の方も、顔に石が当たるなど負傷した警察官は22人。うち3人が病院へ搬送された。この日だけで、逮捕者は50人に上った。

この翌実23日は、イスラムの礼拝日である金曜日は、神殿の丘への出入りは比較的平穏に進んだが、日没後に再び衝突が発生。Times of Israelが伝えたところによると、東エルサレムを通りがかったユダヤ人の車両が投石され、車から脱出して逃げようとしたユダヤ人を集団でボコボコにするアラブ人の様子が、Twitterにあげられている。

これに続いて、極右ユダヤ人たちが左派や、東エルサレムのアラブ人家屋を襲撃する様子がTwitterに上げられた。

すると今度は、左派グループのピース・ナウが、土曜安息日明けに、極右が左派やアラブ人を攻撃しているとして、対抗デモを予定しているとのこと。

暴動の原因は?

新型コロナ・パンデミックが落ち着きを見せ始めるやいなや、この状況である。何が、人々をここまでの暴力にかき立てるのか。一つは、ソーシャルメディアが人々の心を煽っていることが挙げられる。

今、イスラエルでは、総選挙の後もまだ新政権発足の見通しが立たず、右派はより右派に傾き、左派はより左派のアイデンティティを確認する流れになっている。

パレスチナ人たちも、ワクチンが滞り心理的な不安定に加え、経済の悪化、さらにパレスチナ人たちは、パレスチナ自治政府が5月にハマスも交えた総選挙を予定しており、政治的な不安材料がある。イスラエルは、東エルサレムでの選挙運動を許可していないので、反発もある。

パレスチナ自治政府内部では、アッバス議長(85)に変わろうとする若手のファタハ指導者の間で争いもあり、結局また延期になる見通しとなっている。こうなると、ハマスが承知せず、パレスチナ人の間で、激しい衝突になる可能性もで初めている。

せっかく新型コロナの影響から抜け出し始めたと思ったら、この状況である。

エルサレム全域がこんな様子になっているのではなく、乱闘は、東エルサレムやヤッフォ、西岸地区の極めて限局した地域で、その時間帯だけの混乱であると思われるが、それでも、この不穏な憎しみと敵意の空気がとりのぞかれるよう、とりなしを。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。