国防問題に発展:ギャラント防衛相とネタニヤフ首相の対立 2023.3.24

ネタニヤフ首相とギャラント防衛相(左)、ハレヴィ参謀総長 GPO

軍と国が対立する危機:国民へのメッセージをめぐる攻防

司法制度改革への強い反発は、イスラエル軍予備役兵の間からも出ており、司法制度改革がすすむなら、政府の招集に応じないとする予備役兵が急増していることはお伝えした通りである。

シリア・イラン情勢が緊迫する中、ハレビィ参謀総長が、防衛上の危険であるとの懸念を表明。加えて、民主主義が友好の条件だと釘をさす最友好国アメリカはじめ、湾岸諸国との関係にもひびが入り始めており、イスラエルの防衛が本当に危なくなってきている様相になりはじめている。

これを受けて、ギャラント防衛相は、ネタニヤフ首相に司法制度改革を一時停止するべきだと、メディアを通して発言すると表明した。予定は、23日午後7時30分からであった。その30分後にはネタニヤフ首相が、国民にメッセージを語ると言われていたので、防衛相と首相の間で、司法制度改革法案は一旦、全部保留にすることで合意したとの発表になるのではないかとの憶測が広がった。

ところが、ネタニヤフ首相は、その少し前にギャラント防衛相を召喚。国防が危ういとと警告するギャラント防衛相に対し、なんとか和解をこころみたいので、あと数日まってほしいと頼んだという。ギャラント防衛省はこれに応じて、国民への会見を延期した。

ところが、その30分後の午後8時、ネタニヤフ首相は、司法制度改革の停止ではなく、バランスを約束しつつも、最高裁選任関連法案は予定通り行うという発表したのであった。

ネタニヤフ首相ばこの夜、ロンドンへの外交訪問が予定されていたので、この国民への発表のために、移動を午前4時に延期し、発表後の午前4時に出発したとのこと。

www.timesofisrael.com/defense-minister-said-to-warn-pm-he-wont-back-overhaul-legislation-in-current-form/

内戦の危機を乗り越えられるか:法案審議の一時停止をめざして

ギャラント防衛相は、この件で、辞職も厭わない覚悟(後に本人は否定)で首相に、この改革のいったん停止を申し出たとの情報もあり、もしそれが聞き入れられなかった場合、予備役たちの反発はさらに深まると予測されている。最悪、クーデターの気配を予測する記事もある。

前軍参謀総長、前防衛相で、国家統一党(中道左派)のガンツ党首は、政権のリクードや、ユダヤ教政党の指導者たちとの話し合いを続けているという。ガンツ氏は、とにかく、法案の審議を、一時停止するということが鍵だとの説得を行なっているという。

しかし、右派政党、特に極右のオズマ・ヤフディ党が、これを受け入れるはずがなく、「ギャラント防衛相は、右派から離脱した」として、国民を騙そうとしているといった声明を出している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。