ラファ攻撃・孤立しても殺しに来る者とは戦う:ネタニヤフ首相 2024.5.10

ガザ国境に待機するイスラエル軍戦車と軍用車 May 8, 2024. (AP/Tsafrir Abayov)

ラファ攻撃・アメリカとの意見の相違

October 28, 2023. (AP Photo)

バイデン大統領が、イスラエルのラファへの侵攻は受け入れられないとして、イスラエルに供与する予定の爆弾の送付を差し止めた件。

イスラエル国内では、アメリカが大きな方向転換と、どのメディアも大きくトップで報じていた。極右政治家べン・グビル氏は、Xに、「バイデンはハマスを愛している」などと投稿して、物議をかもした。

アメリカは、イスラエルを見捨てたというわけではない。ただラファ侵攻については、人質交渉において、ハマスを硬化させることになり、イスラエルの国際社会での立ち位置も悪くなるとして、それ以外の方法を模索すべきだと主張している。

いわば友として、考えてくれているのではあるが、イスラエルと分析や意見が異なるということである。

実際、アメリカは、イスラエルへの他の支援は継続するとしており、ただガザの戦闘については受け入れられないとカービー報道官は強調している。実際、アメリカが保留にしたのは、ラファへの攻撃に使われる恐れのある爆弾だけであり、それ以外の膨大なイスラエルへの軍事支援は継続される。

中道左派で、筆頭野党のベニー・ガンツ氏は、アメリカは、貴重な旧友であり、決別するべきではないとして、ベングヴィル氏のXへの投資を非難。アメリカとの直接の対話は続けるべきだと言っている。

ネタニヤフ首相も、明らかにアメリカと意見が違っていることを認め、この違いを乗り越えることを希望すると言っている。

しかし、同時に、「前にも言ったように、孤立するなら孤立して戦う。我々を殺しにくる者とは戦うしかない。爪の皮でも戦う」と明言している。

www.ynetnews.com/article/b1owhk9m0
www.jpost.com/breaking-news/article-800630
www.timesofisrael.com/idf-says-its-has-enough-munitions-for-rafah-netanyahu-if-we-must-well-stand-alone/

ラファからの避難民15万人:戦闘でイスラエル兵3人負傷・トンネル10本破壊

イスラエル軍によると、ラファで戦闘域に入るとして避難勧告が出された地域から避難した人々は15万人にのぼっている。これまでの戦闘で、ハマス戦闘員五十人が死亡。破壊した地下トンネルのシャフトは10本。罠の爆弾で、イスラエル兵3人が負傷(中等度)した。

まだ限定的であり、新たなステージに進む様子はない。しかし、ラファ検問所には、大量の戦車が入っている様子が伝えられている。

しかし、問題はラファだけではない。ガザでは、いったんハマスがいなくなっていた地域にも再度戻りつつあり、戦闘が再開している。

ガザ市では、イスラエルが25ヶ所へ空爆し、地上戦も行われている。

人道支援物資搬入の問題

イスラエルがラファの検問所を制覇したことで、今4箇所ある検問所はすべて、イスラエルが支配する形になった。国際社会の激しい非難の中、イスラエルは、ケレン・シャローム(ハマスにイスラエル兵4人が殺された地点)からの搬入を行なっている。

アメリカがガザ沖に、建設中だった物資搬入のための桟橋も完成し、搬入が始まる予定である。先月、イスラエル軍の誤爆で7人のボランティアを失ったWCKも活動を開始している。

しかし、エイラットに向かっていた(?)物資搬入のトラックの一団を、ミツペ・ラモンで、人質家族を含む活動家500人ほどが、一時的に妨害する動きもあった。

このグループは、人質を返さないハマスに支援物資を渡すことに同意しないと訴え、これまでからも同様のデモを行っていた。問題は国内でも多様になっている。

テルアビブ市が恒例のゲイ・プライド・パレードをキャンセル

Tel Aviv LGBT pride parade 2015

テルアビブ市は、これまで25年間、毎年ゲイ・プライド・パレードを、市の行事として、盛大に行っている。世界中から15万人といった大群衆が集まる非常に盛大な行事である。

今年は6月2日から9日で、パレードは7日に予定されていた。

しかし、ロン・フルダイ市長は、戦争中で、まだ人質が100人以上いることにかんがみ、「今は祝うときではない」として、イベントを中止すると発表した。

一方、エルサレムでは、5月30日に、予定通りパレードは行うが、人質解放のテーマとともに行うと発表した。

www.timesofisrael.com/tel-aviv-cancels-annual-pride-parade-out-of-respect-for-hostage-situation/

石のひとりごと

イスラエルは来週14日が独立記念日である。ホロコーストの時も、イスラエルが独立戦争を戦った時も、世界はユダヤ人を助けなかった。

1947年から1949年までの独立戦争では、中東5カ国の軍に攻め込まれ、ユダヤ人の国は消え去ると確信していたからである。この時戦った人々の中には、ホロコーストをなんとか生き延びたユダヤ人も多かった。ところが、イスラエルは、領土を拡大するに至ったのである。

イスラエルは今また、世界から助けどころか、理解もない中でハマスやヒズボラと戦ている。今回も主が介入してくださるだろうか。

しかし、ガザにいるイスラエル軍の戦車の大群を見ると、これからどうなるのかとなんとも不安な思いにもなってくる・・。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。