全国で反ネタニヤフ首相デモ:警察と衝突で38人逮捕 2020.10.5

本文内ツイッターからスクリーンショット

長引くコロナ危機と、先の読めないロックダウン。ある日、隔離を言い渡され、収入源がなくなる。子供達は家で騒ぎ立て、これからどうしたらいいのかわからない。例祭なのに高齢の親たちにも会えない。この状況で、まともに入られる人は少ないだろう。

二転三転する政府の政策、超正統派を贔屓する傾向にある政府と、一般の人々の間に、ネタニヤフ首相と政府への不信感は高まる一方である。こうなると、政府の指示に従う気にならなくなってくるのも無理はない。これは疫病対策では最悪の流れになっている。

ネタニヤフ首相は、昨年から汚職問題で刑事裁判の最中である。そんな人物を首相にしておくわけにはいかないとして、ネタニヤフ首相の辞任を求めるデモが、エルサレムの首相官邸前広場で行われて一月以上になる。コロナ禍になっても、参加する人は後をたたない。

このデモについては、政府は、民主国家の立場から、禁止することが難しいのだが、感染拡大とその死者がうなぎのぼりであることを受けて、つにデモも20人まで、移動は1キロまでに規制する方針を決めた。すると、広場から1キロ以内に家を借りて、デモに行けるようにする人もいた。

どうなることかと懸念されていたが、3日土曜夜、エルサレムだけでなく、テルアビブなど全国で、反ネタニヤフ首相デモが発生した。主な主催者は、ブラック・フラッグと呼ばれる反ネタニヤフ首相の組織である。

参加者は、全国で10万人とも伝えられている。テルアビブでは、デモ隊と警察が暴力的な衝突となり、38人が逮捕された。

デモ隊は、警察が過ぎた武力を行使したと訴え、テルアビブのフルダイ市長は、警察は、感染予防が目的ではなく、デモを取り締まることを目的としていたと訴えた。デモ隊がソーシャルディスタンスを守ろうとしていたからである。

一方地方では、道路にそって、十分間隔をあけた状態で、国旗やプラカードを持って立っている市民たちの様子もあった。

<石のひとりごと>

今回、デモは、国内各地で行われたとのことだが、それでもまだ、国民の多くはデモに参加せず、これを冷たい目で見守る人の方が多いだろう。しかし、徐々にネタニヤフ首相への反発は高まりをみせているような気がする。

UAEとの合意など輝かしい結果はあったかもしれないが、そんなことより、群衆にとっては日々の生活の方が重要である。デモの勢いが増している様子や、テルアビブでは、フルダイ市長まで、デモ側に立っている様子を見ると、今後、コロナが解決に向かわなければ、ネタニヤフ首相の立場は日に日に難しいものになっていくのではないかと、さすがに懸念されるところである。

特に今トランプ大統領がコロナ感染とのニュースが入っているので、それに輪がかかったともいえる。しかし、そこは、超・あきらめない、ネタニヤフ首相。今後どういう動きに出てくるのか、注目される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。