ゴラン高原で交戦:イスラエル兵2人死亡・7人負傷 2015.1.29

27日、ゴラン高原シリア側から、イスラエル領内へ、ミサイルが2発着弾。被害はなかったが、これを受けて、28日深夜過ぎにイスラエル軍がシリアの軍関係施設を空爆した。死傷者の報告はない。

続いて28日正午ごろ、レバノンとの国境の町、ガジャール均衡の民間道路を走っていたイスラエル軍軍用車に突然、レバノン領内から対戦車砲が発射され、イスラエル軍兵士2人が死亡。7人が負傷した。

この約1時間後、イスラエル軍がレバノン領内へ迫撃砲で反撃。この後、UNIFIL (国連暫定監視軍)のスペイン人兵士が1人死亡したと報告された。

交戦状態となった直後、イスラエル軍は、ヘルモン山でスキーを楽しんでいた人々を避難させ、スキー場を一時閉鎖したが、今は再び解放している。周辺住民には、侵入者の恐れがあったため、一時自宅待機の命令が出された。現場周辺の道路は今も閉鎖されている。

本日28日、ヒズボラが、一連のイスラエルへの攻撃について、18日にイスラエル軍が、ムグニエ司令官を含む6人の戦闘員とイラン軍司令官と兵士6人を殺害したことへの報復だとの声明を出した。(オリーブ山便り1/22参照) 

レバノンのテレビからは、作戦成功を祝う様子が伝えられている。ハマスや他のパレスチナ組織も続いて作戦成功を賞賛する声明を出した。イスラエルのテレビは、ずっと現場からの中継を行っている。

イスラエル軍は、ゴラン高原シリア側を18日に攻撃して以降、ヒズボラの報復の懸念があるとして、戦車や軍用車を国境付近に配備。侵入者を阻むため、国境にそって塹壕を掘るなど、厳重な警戒態勢をとっている。現在も厳戒態勢がとられている。

今後、このまま終焉するのか、エスカレートするのか、現時点ではどうなるかは、専門家でもまだ予想が不可能だという。

イスラエル軍によると戦死した2人は、ドール・ニニ軍曹(20)と、ヨハイ・カランゲル大尉(25)。ドールさんは、戦闘部隊隊員で、夏にガザで戦い、軍曹に昇格。ヨハイさんには、妊娠中の妻タリさんと1才の娘がいる。

<ヒズボラとイランがイスラエルに対する方針の転換か?>

今回のエスカレーションは、明らかに18日のイスラエルの攻撃で、ヒズボラの司令官ムグニエとイラン軍司令官を含む12人を死亡した事がきっかけとなっている。

イスラエルがなぜそこまで大きな攻撃に出たのかについて、バル・イラン大学のエフライム・インバル教授は、ヒズボラとイランが、具体的に何を計画していたのかは不明だが、最近、イスラエルと最前線の均衡状態を破って、新たな戦闘状態をつくりあげようとしているとみられると解説する。

インバル教授は、イスラエルは、市民が攻撃される前に、できるだけ危機がまだ国外にあるうちに処理する方針であると改めて強調。歴史をみれば明らかだが、ヒズボラとイランは、無条件にユダヤ人の殺害を望んでいる。だから、これは攻撃ではなく、防衛であると主張する。

ここで、注目されるのは、シリアのアサド政権がヒズボラとイランに加わっていない事である。またイスラエル兵が死亡した攻撃は、シリア領内からではなく、レバノン領内からだった。シリアはイスラエルとの戦闘に加わりたくないと推測できるとインバル教授。

まだまだ先行きはほとんど読めない状況だが、戦争へとエスカレートしないよう、とりなしが必要である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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