新型コロナウイルス:イスラエルの対応 2020.2.1

Medical staff members wearing protective clothing to help stop the spread of a deadly virus which began in the city, work at the Wuhan Red Cross Hospital in Wuhan on January 25, 2020. - The Chinese army deployed medical specialists on January 25 to the epicentre of a spiralling viral outbreak that has killed 41 people and spread around the world, as millions spent their normally festive Lunar New Year holiday under lockdown. (Photo by Hector RETAMAL / AFP)

31日、中国での死者が昨日より40人以上増えて213人、感染者が、東アジアだけでなく、欧米や中東など15カ国で約9800人となった。人から人への感染が、中国以外でも確認されたことから、31日、WHOが、緊急事態宣言を出した。

この問題について、イスラエルでは、先週、疑わしいケースが3人(イスラエル人2人、パレスチナ自治区で働く中国人1人)出たが、全員コロナウイルスは陰性であった。以後、世紀の取引発表などで忙しくなってしまい、この問題は、イスラエルでは、あまり大きくはとりあげられていなかった。

www.timesofisrael.com/health-ministry-israelis-cleared-of-coronavirus-diagnosis-after-lab-tests/

実は、イスラエルでは、これより先、1月初頭から、すでに国内の流行り風邪で、15人が死亡していたのである。

www.jpost.com/Israel-News/Flu-death-toll-rises-to-15-vaccines-still-in-short-supply-612855

これまでのところ、中国にいるイスラエル人たちは、慌てて帰国しようとする人もなく、むしろ、「必要物品はそろっているし、このままビジネスを続けたい。」とする人のほうが多いと言っている状況であった。

しかし、感染が拡大するのを受け、30日、イスラエルのエルアル航空は、むこう2ヶ月間、中国便をすべて停止にする措置を発表。これに続いて、リッツマン健康相も、中国からの便すべての着陸を禁止すると発表した。

国民に対し、中国への渡航は延期するよう、また、中国にいるイスラエル人には早急に出国するようにとの勧告を出した。

中国からイスラエルへの直行便はなくなっているが、ヨーロッパ等を経由する便があれば、イスラエルへの帰国は可能である。しかし、多くの国が、中国からの発着を停止しているので、出るなら早いほうがよいだろう。

14日以内に中国にいて帰国した人は、帰国後14日間、自宅での隔離とされる。

しかし、今の所、政府は、中国、香港の大使館職員などは、現地にとどまり、市民たちの帰国支援にあたるようにと指示している。また、政府が特別機を出して、市民の帰国を促す様子はない。

www.timesofisrael.com/israel-bars-all-flights-from-china-as-death-toll-there-from-virus-tops-170/

世界ユダヤ協会によると、中国には約2500人のイスラエル人が、ビジネス等で、在住している。その中国人たちが、新年で帰国し、イスラエルへ戻って来ることができなくなっている可能性がある。

余談になるが、今の健康相は、超正統派政党統一トーラー党の党首で黒服のヤアコブ・リッツマン氏である。健康相はネタニヤフ首相が兼任していたが、汚職疑惑を受けて、急遽、このポストが、ユダヤ教政党へ分配されたのであった。

科学とは、ほぼ無縁の超正統派の大臣が、科学の最前線である感染症対策の責任者とは、どうにも違和感を感じるところである。

そのせいで、イスラエルの対処が若干、いつもより遅いのか、実際それほど危険はないのかは不明・・・

<中国に残って奉仕活動:ハバッド派>

ユダヤ教超正統派のハバッド派は、世界中に支部をおき、イスラエル人やユダヤ人旅行者の支援を行なっている。コロナウイルスの感染が広がる中国のハバッド派は、全国15カ所を拠点に、ユダヤ人たちの支援にあたっている。

中国政府の様々な規制から、食物規定コシェルの食べ物の調達が難しくなっているほか、シナゴーグでの安息日に集まる人は、感染を恐れてか、最小限になっているという。ハバッド派のHPによると、アメリカからの母娘のアメリカへの帰還を助けたとのこと。

四川省成都市(武漢から車で6時間)のハバッド派のラビ・ドビ・ヘニグはその妻サラレとともに、「私たちは中国から出ない。ここで、愛と喜びの光になる。ここにいるすべての人々の助けをしていくつもりだ。」と語っている。

www.jpost.com/Diaspora/How-are-Jews-in-China-coping-with-the-coronavirus-615928

<武漢の牧師より>

FOXニュースが伝えたところによると、多くのアメリカ人が、政府の帰還への要請を断り、武漢にとどまっているという。伴侶がアメリカ国籍でない場合は、一緒に連れて行けず、ペットもおいていかなければならないからである。

そうした一人、ドン・ペレズさんは、武漢では、異様に中国政府の規制が厳しくなっていると語る。物流が途絶えているので、そのうち、食料がついて、暴動になる可能性が懸念され、そのほうが、コロナウイルスより恐ろしいと語る。

名前は出さず、武漢の牧師と名乗る人物は、「状況はかなり厳しい。でもエレミヤ29:11にあるように、主の計画は平和であり、悪いものではないと信じている。今は試みの時だが、主は、滅ぼすのではなく、私たちを成長させてくださる。」と語っている。

また、「私たちには、恐怖に覚えるこの町のために、キリストの平安を祈る責任がある。祈る想いがないなら、主の愛の心を求めてほしい。そうして、祈ってほしい。主のあわれみだけが、この町を救えるのです。」と訴えている。

www.foxnews.com/faith-values/coronavirus-china-wuhan-christian-pastor

<ウイルス漏洩の疑惑?:武漢に細菌兵器研究所>

武漢には、中国の生物兵器の研究所がある。このため、コロナウイルスのでどころではないかとのうわさが流れた。イスラエルからの情報という声もあったが、むろん、イスラエルではそのような話はでていないし、証拠もない。今の所、コロナウイルスの発生源は、武漢の生鮮市場とされている。

ただ武漢にこのような研究所があるということは興味ふかい点ではある。

www.washingtontimes.com/news/2020/jan/24/virus-hit-wuhan-has-two-laboratories-linked-chines/

<石のひとりごと>

コロナウイルスについては、日本でも連日ニュースの中心となっている。しかし、イスラエルが不思議にも落ち着いているので、少なくともいまのところは、それほどの緊急事態とは見ていないのかもしれない。本当の緊急事態なら、イスラエルは必ず動くからである。

とはいえ、イスラエル人は、自分の命のことで、国の指示待ちということは絶対にない。危機感を持った人はすでに、行動に出ているだろう。

一方、日本のニュースでは、国が禁止にしてくれないからと文句を言いつつ、中国の工場へ今、戻ろうとしている日本人の様子が報じられていた。中国から緊急に政府が日本人を連れ戻しているのに、今、中国へ行こうとしている人がいるということに驚かされた。

国が指示を出さないからといって、会社も休みにできないのか?だから社員は中国へ今この時に、戻らなければならないのか?国に不満を言っている社員は、その前に自分で会社にきちんとかけあったのか?

また、武漢から日本へもどって、相当数の日数がたってから、発熱した男性が、コロナウイルスの検査を希望したところ、医療機関からは、発熱だけでは検査できないと言われたという。発熱のほかに症状がともなわなければ、検査はできないという決まりだった。

男性は、自分が武漢に行っていたと言い張ったが、それでも検査してもらえず、しかたなく、家で自主隔離したという。

国の指示がないと、いかに緊急性が高くても会社は休業できないのか? 納得できないのに、社員はなぜ中国へ向かうのか? 医療機関なのに、決まりと緊急性とどちらが大切か、判断を誤っていないか? イスラエルと日本の危機に対する考え方の違いを、日々、実感させられている。

私自身も、自分の国のことばかりで、武漢の人々を覚えて祈ることがなかったので、武漢の、特にクリスチャンたちを覚えて祈っていただければと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。