UNRWA職員ハマス協力疑惑:日本もUNRWAへの追加支援停止を発表  2024.1.29

ロイター

UNRWA職員のハマス協力疑惑

26日に、国際司法裁判所が、イスラエルに「ジェノサイド」にならないようにとの指示を出した日、イスラエルは、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の職員12人が、10月7日の残虐なイスラエル人虐殺(1200人殺害。240人誘拐)に直接関わっていたと発表した。

国連によると、12人のうち1人は死亡が確認され、9人はすでにUNRWAから解雇されたという。2人はまだ調査中である。

イスラエルが訴えた12人のうち、7人はUNRWAの学校教師で、その他は、事務員、ソーシャルワーカー、倉庫管理者などであった。

犯罪の内容については、ニューヨークタイムスが一部、発表したところによると、1人はハン・ユニスの学校カウンセラーで、女性誘拐に関わっていた。また別の1人は、ソーシャルワーカーで、イスラエル兵の遺体をガザへ搬入し、爆弾や車両の手配もしていた。もう1人は、97人の虐殺そのものに参加していたとのこと。

www.nytimes.com/2024/01/28/world/middleeast/gaza-unrwa-hamas-israel.html

*UNRWAとは

イスラエルが建国した後の1949年に、国連で設立が決まり、1950年から、難民となったパレスチナ人の支援を行なっている。当初は約50万人だったが、その子から孫も難民で登録しているので、75年経った現在はその10倍以上の590万人に膨れ上がっている。

このため、難民キャンプは、58か所。当初はテントだったが、今は、コンクリートの建物になっている。難民学校は、706校。難民医療施設は140か所。UNRWAの職員も、増えて、3万人近くになり、その99%が、現地パレスチナ人だという。これではハマスの言いなりにならない方がおかしいだろう。

このUNRWAの活動を回していく資金として、集まった献金は、2022年度で、11億7000万ドル(約1800億円)である。難民支援は、自立を支援することが目的であるのに、75年経ってもこの状態であるということは、単に依存を生み出しただけで、すでに失敗しているといえる。

www.aljazeera.com/news/2024/1/28/which-countries-have-cut-funding-to-unrwa-and-why

日本も支援停止発表:欧米先進国の支援に頼るUNRWAの課題

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)職員のハマス協力疑惑が発覚すると、まずは、アメリカが、UNRWAへの支援を一時中止すると発表。

続いて、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、フィンランドが、UNRWAへの資金提供を一時停止すると発表。フランスは、2024年度のUNRWAの支援を計上しておらず、状況に応じて検討すると発表した。

一方で、アイルランドとノルウェーは、UNRWAへの支援を継続すると発表した。

こうした中、29日、日本が、UNRWAの職員が残虐行為に関わっていたという容疑に憂慮するとして、支援を一時停止すると発表した。日本は、11月の補正予算案で、UNRWAへ、昨年より500万ドル多い、3500万ドル(約52億円)を計上していた。この送金をしないという

UNRWA支援国家

ことである。

www3.nhk.or.jp/news/html/20240129/k10014338781000.html

UNRWAへの資金援助国は、ダントツのアメリカ、続いてドイツ、EU、スウェーデン、ノルウェー、その次の6位が日本である。

上位国の多くが、支援を停止すると言っているので、UNRWAは、支援金の60%近い予算を失う見通しとなった。

www.aljazeera.com/news/2024/1/28/which-countries-have-cut-funding-to-unrwa-and-why

UNRWAからの反応

UNRWAのフィリップ・ラザリニ代表は、「少数のスタッフの行動を受けて、これほどの支援停止になったことにショックを受けている」として、資金援助再開を求める声明を出した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/unrwa-chief-urges-countries-to-reconsider-shocking-decision-to-pull-funding/

しかし、アルジャジーラによると、UNRWA報道官が、危機感とともに、アラブ諸国に対し、「石油で潤っている国はどこにいる?それらの国々が支援したら一気に問題は片付く」と述べたとのこと。アラブ諸国からは、サウジアラビアが、日本より少ない8番目で2700万ドル、クエートが19番目で1200万ドル、カタールが20番目で1050万ドルとなっている。

どうする?ガザの難民

ハン・ユニスでの激しい戦闘が続く中、ガザの人々が、さらに南部のラファ方面へ避難していく様子が伝えられている。支援金が止まることで、被害を直接受けるのが、これらの難民たちである。逃げても逃げても次の所へ避難しなければならない。水も食べ物も保障はない。

その悲惨な様子に心痛む思いだが、この様子を見てハマス指導者はどう思うのか。自分たちが人質を連れて、表に出て来れば、すぐにもこの戦争は終わると、イスラエルは言い続けているのである。いわば、この悲惨の責任はハマスに掛かっているようなものである。

また、アラブ諸国にも責任がないとは言えない。パレスチナ人を支持すると言いながら、支援は少ないわ、難民は全く受け入れないわである。ハマス難民の責任をイスラエルだけに追及するのは、不条理である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。