アメリカの反人種差別デモ:週末に大規模集会予定 2020.6.6

スクリーンショット Times より

先月25日に、ジョージ・フロイドさん(46)が、ミネアポリスで警察官に殺害されてから、全米で暴動にまで発展した反人種差別デモ。略奪や暴動はおちついてきたことから、ロサンゼルスなどでは、外出禁止令は解除されている。

しかし、平和的な「黒人のいのちは大切」デモは拡大を続けており、デモが始まってから11日目になるが、まだ終わる様子はない。デモには子供をつれて参加したり、著名人が、フロイドさんに追悼を表すようにひざまづいて、反人種差別の意思表示をするようになっている。

4日には、マーチン・ルーサー・キング牧師の像の前で集会が行われた他、今日、6日には、ジョージさんの出身地ノース・カロライナでも記念集会が行われることになっている。6日はフロイドさんが殺害されてから2回目の週末になるため、全国各地でも大きなデモが計画されているという。

*続く警察への非難

ニューヨーク州バッファロー市では、機動隊に向かってきた75歳のデモ参加男性を、隊員が激しく突き飛ばして頭を打ち、大怪我を負わせたまま立ち去る様子がネットで流された。これがまた警察の暴力だとして、デモに火を注ぐ結果になった。

バッファロー市のブラウン市長は、大事にならないよう、ただちにこの件にかかわった警官2人を停職処分とした。すると、この処罰に反発した警官57人が、辞職すると主張して論議になった。

www.timesofisrael.com/us-gears-up-for-weekend-protests-amid-anger-at-new-police-abuses/

ニューヨーク市では、デモに便乗して略奪が多発したため、まだ夜間外出禁止令を維持している。デブラシオ市長が、「もはや収拾つかなくなっている」と述べると、ニューヨクタイムスは、市長こそ目を開けるべきであり、「収集がつかなくなっているのは警察だ。」とのコメントを出した。

<トランプ大統領の反応:経済回復成功?で強気崩さず>

ワシントンDCでは、ホワイトハウスに続く100メートルの大きな16番通りいっぱいに、黄色で、「Black lives matter」と塗りこまれたり、この通りに、「Black lives matter」という通り名が掲げられた。これらは自らも黒人のワシントンDCのバウザー市長が許可を出して実現したものである。

City Workers Paint ‘Black Lives Matter’ on Streets Leading to White House

This is the new 2-block-long mural on the streets leading to the White House, painted by the city of Washington, D.C. It reads: “Black Lives Matter." Read more. nyti.ms/2MwiO8C

The New York Timesさんの投稿 2020年6月5日金曜日

ホワイトハウスの目の前の道路に上記のようなペイントをされたことについて、トランプ大統領は、「バウザー市長は無能であり、そんな人物がワシントンDCを収める資格はない。」と述べた。

そのトランプ大統領だが、早期に経済活動を再開させたことで、主にレストラン雇用者など250万人が、職場復帰し、失業率は、4月14.7%であったところ、5月は13.3%と予想外の回復となった。

また、政府が早期に厖大な経済政策を講じたことから、経済回復への期待が高まり、こちらも予想外に、株価が市場最高値に至るかとも言われるほどになっている。トランプ大統領は、これを勝利だと述べた。

しかし、この記者会見において、トランプ大統領が、ジョージ・フロイドさんが、この結果を見ていて、今日はグレートな日だと喜んでいるだろうと言ったため、「不適切な発言だ。」として、再び非難が殺到する結果となった。

<いったい何がおこっているのか>

アメリカには、白人と黒人の間には潜在的ともいえる根強い壁がある。ニューヨークの病院で働いていた時、日勤は白人がほとんどで、夜勤は黒人がほとんどと両者の間には、否定できない隔たりを感じた。

これが良いことでないのはあきらかなことであるが、それを今さら摘発して、具体的に何がどう変わるのかということは、どうにもわかりにくい点である。おそらく、具体的な到達点をめざしているわけではなく、この現状はよくないということをそれぞれが表明しているということであろう。

そうなると、賛同者は一気に増えることになるし、これに賛同しない者は差別を容認していると見えてしまう。しかし、黒人自身の中にも、黒人に殺される黒人の方が多いと指摘し、今、白人ということにこだわりすぎているのではないかと逆の指摘をする黒人もいる。

この運動は、選挙の前に、右派に傾きがちな共和党のトランプ大統領を破滅させる目的で、左派の民主党が煽ったとの主張をする者もいるが、これも逆の選挙対策といえなくもない。

いったい何が起こっているのか、もう少し様子を見るしかないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。