まだ終わらないコロナ対策:イスラエルでインド型変異株7人発見他 2021.4.19

ベングリオン空港でPCR 検査場に出入りするイスラエル人たち スクリーンショット

イスラエルでは、現時点で、ワクチン接種を2回終えた人が、497万人を超えた。新型コロナに感染した人はワクチンを1回だけ受けていることから、その人々も含め、1回終わった人は、534万人。

これで、現在、実効再生産数は0.71で、1日の感染者は100人(陽性率0.7%)を下回っている。重症者も200人を下回った。このため、18日からは、屋外でのマスク着用の義務は解除された。子供達の登校も全て許可され、皆元気に登校している。

エルサレム・アッセンブリー(ユダヤ人教会)でも、次週土曜日より、屋内での礼拝が100人まで許可となり、まだ事前登録制ではあるが、入れない人は、バルコニー(屋外)に座れるので、全員一緒の礼拝が可能となった。また、礼拝後の軽食でのフェローシップも、屋外のテラスで再開できることとなった。

外国人観光ツアー客については、5月23日から、ワクチン接種済み証明(イスラエルが認証するもの)を持つ人だけからなる団体旅行に限り、再開になる。知人のバスドライバーは、25日から仕事が入ったと言っていた。ただどんな風になるか詳細は聞いていないとのこと。

ナフマン・アシュ教授
出典:イスラエル政府

しかし、危機意識の高いイスラエルである。こうなっていても、まだ両手を上げての解除にはなっていない。コロナ担当ナフマン・アシュ教授は、集団免疫の達成には、全国民の75%が抗体を持たなければならず、まだ到達していないと釘を刺す。

アシュ教授は、確かに死亡率は劇的に下がってはいるが、まだ油断せず、屋内、また大勢がいるところでは屋外でもマスクを着用するよう、常に持ち歩くよう、国民に警告している。

こうした中、非常に危険なインド型変異株がイスラエル国内でも発見され、不気味な気配を投げかけている。

www.timesofisrael.com/israel-has-not-reached-herd-immunity-indian-variant-a-concern-says-virus-czar/

帰国イスラエル人7人から危険なインド型変異株発見

保健省は、16日、帰国したイスラエル人7人(ワクチン未接種)から、これまでにはなかったインド型変異株を発見したと発表した。7人のうちの多くは帰国時、ベングリオン空港での検査で見つかったが、帰国後の隔離中に発見されたケースもあるとのこと。7人がどこから帰国したかは発表されていない。

インドのインド型変異株によるコロナ感染拡大は今、驚異的なスピードとなっている。1日の感染者数は、27万人と世界一の速さになっている。医療は崩壊しており、一つのベッドに患者が2人寝ている事態である。死者は、毎日1700人まで増えた。なお、これまでの感染者は、1400万人、死者は17万4000人。

インドは世界一のワクチン生産国なので、国内ですでに1億回のワクチン接種が行われたが、総人口が14億人に近いのでまだまだ不十分である。しかし、海外にワクチンを販売して収入を得ているので、販売はやめられない。

ロイターによると、国内がワクチン不足に陥っている中、インドから海外へ輸出されたのは5460万回分、近隣国への無償提供が1000万回となっている。バイデン大統領はインドをクアッドに加えて、中露のワクチン外交に対抗しようとしたが、インドはそれどころではなさそうである。

jp.reuters.com/article/health-coronavirus-india-idJPKBN2C101Y

この危険なインド株がイスラエルにも入ったということである。今のところ、新種のコロナで不明点も多く、イスラエルが使っているファイザーのワクチンにどう反応するのなどの詳細はまだわかっていない。

www.timesofisrael.com/7-cases-of-indian-covid-variant-detected-in-israel/

新たなワクチン購入・計3600万回分の契約締結か

上記のように、イスラエルでは、コロナ禍が終わったとの意識には、まだなっていない。すでに国民全員分のワクチンを確保しているのだが、今は、すでに予備ワクチンを購入することに力を入れている。

すでに国民の半数以上は接種を終えているのだが、これから始まる予定の12歳から15歳までの子供達の分と、2回接種が終わったあと、3回目が必要になった時の備えである。また今後さらなる新しい変異株が出てくるかもわからないことから、先に準備するのだと保健省ディレクターのチェジー・レビ氏は語っている。

Times of Israelによると、18日、政府は、ファイザーとモデルナの2社と合計3600万回分のワクチンを購入することで合意したとのこと。

それによると、まずは、15億シェケル(約45億円)が、2社に支払われて、1800万回分のワクチンが届く予定。ネタニヤフ首相が望んだのは、一度に3600万回分(大部分はファイザー)だったが、支払い問題でファイザーを一悶着あったと伝えられている。

今は、1800万回分(半分づつ)2回に分けて、しかもファイザーだけでなく、モデルナも入ってくるとのこと。イスラエルの人口は930万人なので、総人口全てを2回以上カバーできるワクチン量のようである。

注目は、イスラエルが、mRNAワクチンだけを購入している点。今、世界で血栓の副反応で物議をかもしているアストラゼネカは採用していない。

www.timesofisrael.com/israel-said-close-to-deal-for-18-million-vaccine-doses-bypassing-cabinet-vote/

グリーンパス:ワクチン接種しなかった人は公的機関から解雇か

イスラエルでは、ワクチン接種2回を終えた人、または感染して回復し、抗体を持っている人に対して、グリーンパスと呼ばれるアプリが交付される。様々な娯楽施設が、入場にあたり、グリーンパスの定時を条件づけている。

一方、ワクチン接種に同意できないとして接種を拒否している人にグリーンパスはない。代わりに、週に2回PCR検査を行い、その証明書を持ち歩くことが義務付けられている。

これはイスラエル人知人の情報で確認はしていないのだが、この場合のPCR検査は、実費払いになっている可能性がある。そうなると、非常な出費になると考えられ、実際的には、生活ができなくなることを意味する。

こうした中、市町村委員会のダニエル・ハルシュコビッツ氏によると、市町村など公的機関が、職員や市民への感染予防のため、グリーンパスを持っていない職員を解雇する権利を行使することができるようになった。

人権問題とともに、社会の深刻な分断をもたらす可能性がある。

www.timesofisrael.com/unvaccinated-public-servants-can-be-fired-if-they-refuse-virus-tests-report/

このグリーンパス問題は、イスラエルに始まり、国際社会でも徐々に現実的になり始めている。日本にもやがてやってくる問題である。

www.nytimes.com/2021/04/06/us/politics/vaccine-passports-coronavirus.html

石のひとりごと

イスラエルは、すでに国民の半数以上がワクチンを終えているのに、すでに次の状況に備えて、新たにワクチンを大量に購入するという。ここでもイスラエルの先読みがもう始まっている。

一方、日本は、まだ先進国でダントツ最下位という状況が続いている。国内ではわずか0.9%の人しか接種できていないのに、はっきりした次の納入の見通しすら立っていない。

兵庫県にある実家の市(総人口27万人)では、5月から高齢者へのワクチン接種が始まるが、市に届いているのは、聞いて驚く、たったの500人分だった。

ニュースによると、菅首相が、アメリカ訪問の際に、ファイザーのブーラ氏に電話して、9月までに全員分のめどが立ったとのことだが、口約束だけでは、話にならない。実物がいつ届くのかというところまで、交渉を詰めて帰ってくるべきであった。

また今アメリカは、対中政策において、日本の協力を得るために接近してきている部分もあるのだから、バイデン大統領と交渉して、ブーラ氏に交渉してもらうことはできなかったのだろうか。

そうはせずに、ブーラ氏に電話(日本からでも可能)とは、本気でワクチンを得ようという気があるようには見えない。しかし、忖度に慣れている日本の政治家に、文化考え方の違う外国人との効果的な交渉を期待する方がおかしいのかもしれない。

また、まだ、日本では諸国に比べて死者は“少ない”という認識が通っていることにも驚かされる。コロナに国民の命が奪われても、少ない場合は受け入れるということであり、それを深刻に受け止めて、これから増えていくかもしれないという将来を予測して対処することがないのである。

死にゆく運命にあらがわないというのが日本文化なのかもしれない。そこが、何がなんでも生き残るというサバイバル根性のイスラエルと大きく違うところである。

しかし、事態はだんだん深刻になりつつある。大阪はすでに医療崩壊の様相になっており、死の選択、つまり、治療を諦めなければならない人が出始めている。まだ救われていない多くの日本人の命が、日々失われている。政府に期待できない今、全てを支配する天地創造の神に祈らなければならない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。