テルアビブ・エルサレムにも警報 2014.7.9

<イスラエル軍の攻撃>

7日夜、イスラエル軍は、「境界防衛作戦」を開始。24時間が経過した。これまでにイスラエル軍は、ガザ地区150カ所を空爆。

このうち、5カ所はハマス指導者自宅で、大物指導者ムハンマド・サアバン(24)を殺害している。これまでに死亡したパレスチナ人は、ハマス関係者ばかりで11人という報告がある。

この他、テロ目的のトンネル10本、ミサイル発射地点98カ所、武器庫18カ所を空爆で破壊した。ハマスは武器庫をモスクに隠していたので、5件はモスクを破壊した形になっている。

イスラエル空軍は、非常の優れた情報収集能力と世界一のピンポイント攻撃技術を持っている。空爆と行っても、かつてのB29の爆弾投下ではない。まさに「そこだけ」穴があけるような、するどい攻撃である。そのため破壊は、思ったよりも限局している。

<イスラエルへの攻撃:イスラエル軍データ>

境界防衛作戦が始まってから、24時間の間にガザから発射されたミサイルは135発。8日夕刻からハマスはイスラエル中央に向けて長距離ミサイルを使い始めた。

ハマスは、短中距離のロケット弾の他、射程80キロの長距離ミサイルも含めて1万発以上のミサイルを保有している。テルアビブを超えてエルサレムまで攻撃する事が可能である。

テルアビブにミサイルが飛来、迎撃ミサイルが撃墜したのは8日夜7時ごろ。この時、走行中だった電車は緊急停止。乗客は全員伏せたという。

午後10時には、テルアビブだけでなく、アシュケロン、アシュドド、カイザイリヤ、ハデラなど海沿いの都市、ベイトシェメシュなど内陸にまで至り、エルサレムでも警報が鳴り響いた。ハイファでも警報が鳴ったが、これは誤報。

エルサレム市は、万が一に備え、市の公共のシェルターを解放したと発表した。

ミサイルがテルアビブから内陸にまで至っていることを受けて、ベングリオン国際空港では、発着の安全性を検討中である。

エルサレムの神殿の丘では、アラブの群衆がが、イスラエルにミサイルが撃ち込まれているのことに対し、歓声を上げてよろこんでいた。https://www.youtube.com/watch?v=e86zg3SDDxE

<以外に落ち着いている?都市の住民>

ミサイルが全国的に撃ち込まれていることを受けて、迎撃ミサイルシステムが全国的に配備された。この迎撃ミサイル、一発あたりのコストは非常に高いが、的中率90%とも言われる優れものである。

テルアビブでは、警報が鳴っても、逃げないでカフェでコーヒーを飲んでいる人がいる。迎撃ミサイルが撃墜するところを見物している人もいる。

エルサレムで警報が鳴った時、あわてて階下のシェルターに降りたが、降りて来ているのは2人だけだった。シェルターは鍵がかかったまま。

娘と降りて来ていた婦人は「中に入らなくてもいいのよ。階段のところにいれば大丈夫。」と言っていた。サイレンが鳴り終わると「終わったわ。」といってさっさと部屋に戻って行った。

イスラエル軍は、迎撃ミサイルは100%ではないと住民に危機感を促しているが、良くも悪くも、ミサイル攻撃は、今に始まったことではないので、今のところ、住民は前ほどあわてていないようである。

かくいう私自身も、サイレンが鳴っても前ほどあわてなくなっている。麻痺か慣れか・・・異常な状態だと思う。

しかし、南部のガザの近すぎるところの住民は状況が違う。近すぎて、迎撃ミサイルが間に合わないため、何も配備されていない。また近すぎて、発射と同時に着弾するため、警報もならない。まさにいつ死ぬかという思いをしていることを覚えていただきたい。

<南部:海から上がって来たテロリスト>

8日夕刻、南部のイスラエル軍基地に武装したテロリストが海から上がって来て、侵入しようとして銃撃戦となった。空軍、海軍も協力して4人を射殺。1人は負傷した。

イスラエル軍は今後もテロリストの侵入があるとみて、警戒している。

<予備役4万人まで招集>

イスラエル軍は、作戦の拡大とともに、予備役を4万人まで招集することを決めた。

今共に学んでいる友人の息子のベニヤミンさんが呼び出された。笑顔がきれいで背の高い立派な23才の青年である。身近に徴兵される人が出ると、なんとも落ち着かない。クラス担当の先生やクラスメートも招集される可能性が出て来た。

予備役の徴兵とは、普通の男性たち、お父さんたちが急に戦場に出て行く事である。彼らを見送る家族の痛みを今回は特に強く感じる。

ガイドコースの学びそのものにも影響が出始めている。全国的にあちこちで道路が閉鎖しているため、現地に行って学ぶ事ができないのである。

テレビでは、夜中の今も断続的にニュースを流している。戦時下にあるということを意識しないではおれない。今夜は服を着たまま寝る事とする。

<ネタニヤフ首相から住民へ>

ネタニヤフ首相は、8日夕刻、国民に対し、次のように述べた。

・・私たちは、今、平和を取り戻すための戦いを始めた。ハマスの攻撃に緩やかに対応したが、ハマスはますます攻撃してきた。市民にロケット弾を撃ち来んでくるものをこのまま放っておくわけにはいかない。

今夜、ハマスだけでなく、あらゆるテロリストに対処するよう、作戦の拡大を命じた。しかし、イスラエルが標的とするのは、テロリストであってガザの市民ではない。

ハマスは市民を盾にする。もし万が一っ市民が巻き添えになったとしたら、それはハマスの責任だ。

この作戦は長くかかるかもしれないので忍耐してほしい。今、イスラエル全体とイスラエル人すべてがひとくくりにして狙われている。私たちは、正義を信じて共に立たなければならない。私たちは、市民たち、子供たちに平穏が戻るまで作戦を続ける。・・・

このまま双方の市民に被害がでないよう、特にシェルターにいる子供たち、すでにPTSDを抱える南部の子供たちを覚えて、従軍中、また徴兵された兵士たち、何よりも戦争を導くネタニヤフ首相を覚えてお祈りください。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

1 comments

明日カナダから、甥のBar Mitvhaの為イスラエルヘ経つ予定だったので生の現地の情報が得れて有り難いです。今も尚、旅行を延期すべきか思案中ですが、、、

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