UAEにイスラエル大使館開設:アブラハム合意その後 2021.1.26

UAEにイスラエル大使館

24日、イスラエルは、UAEのアブダビに、エイタン・ナエ大使(57)を派遣し、正式にイスラエル大使館を開設した形になった。この同じ日、UAEでもテルアビブに大使館を開設することが決まり、両国は、対等な外交関係を本格的に開始する。イスラエルはドバイに領事館も開設する予定である。

ナエ大使は、ワクチン接種後にUAEに到着。今はUAEの取り決めに従い、自粛中である。今後、数ヶ月は、臨時の大使館で執務をとりながら、恒久的な場所を探すことになっている。

www.timesofisrael.com/israel-officially-opens-embassy-in-united-arab-emirates-with-arrival-of-envoy/

イスラエルは、すでにバーレーンに大使館を置いている他、イスラエル外務省によると、まもなく、モロッコにも連絡事務所を置くことになっている。昨年アブアハム合意に加わることを表明したスーダンとも話が進んでおり、25日、エリ・コーヘン諜報大臣が、イスラエル政府要人として初めて、チームとともにスーダンを訪問。国交正常化署名にむけた準備を開始した。

トランプ大統領が、昨年9月に達成した歴史的なアブラハム合意は、成長を見せている。

www.timesofisrael.com/first-israeli-minister-makes-sudan-visit-after-normalization/

まずは経済関係の構築が目標:ヨナタン・ナエ大使

アブラハム合意の中で、UAEとの関係が非常に早く、進められている背景には、イスラエルとUAEが、双方ともに、国交をすすめることによつ経済的な繁栄を見ているからである。その可能性は限りなく大きい。ドバイには巨大な貿易港があり、地域の貿易の中心的な働きを担っているからである。

UAE、バーレーンは、イランと目と鼻の先である。アメリカでバイデン新政権が、イランとの対話を示唆する中、それと時を同じくして、アメリカの中東における最大の友好国、イスラエルが、イランと敵対するUAEに大使館を開設するということは、外交上、微妙といえる動きである。

さらには、西岸地区におけるイスラエルに立場、パレスチナ国家設立問題においても、UAEとイスラエルは対立する部分もそのままである。

ナエ大使は、現時点ではこうした政治的な領域を協議するのではなく、まずは、UAEとの経済的な協力関係と互いの繁栄を目指したいと言っている。

www.timesofisrael.com/arriving-in-uae-israeli-envoy-sets-sights-on-budding-trade-bonanza/

Never Again: 湾岸諸国4カ国アラブ人がヤドバシェムでホロコーストを学ぶ

イスラエルでは、27日、アウシュビッツ強制収容所の解放を記念する国際ホロコースト記念日を迎える。これに先立つ先月、アブラハム合意に参加しているUAE,バーレーン、モロッコ、まだ合意には至っていないがサウジアラビアのアラブ人が若いイスラエル人たちとともに、ヤドバシェムを訪問。ホロコーストを覚える時を持っていた。

この時、アウシュビッツからのサバイバーであるベラ・クリーゲルさんが、ナチス医官のメンゲレの人体実験にさらされた経験を話した。

この訪問を実施したのは、Sharakaと呼ばれる湾岸諸国・イスラエル企業センターであった。このグループは、この後、オンラインでもセミナーを行い、リブリン大統領が挨拶を行った。参加者は、ユダヤ人、アラブ人、ドルーズクリスチャンと多様な人々100人であった。

リブリン大統領は、コロナ禍で、再び国境が閉じられ、互いの距離が広がった。しかし、同じ人間であることの自覚と、ともに働く必要を実感したのではないかと述べた。その上で、コロナ禍で、今また反ユダヤ主義的な陰謀論者が増え、シナゴーグやユダヤ人施設への暴力が増えていると語った。

これを受けてシャハラは、ホロコーストを定義付け、イスラエルとともに、イスラエルをボイコットするBDSムーブメントに対立することも話し合われたとのこと。

孤立する?トルコ

このたび、在UAEイスラエル大使としてアブダビに到着したエイタン・ナエ大使は、元在トルコ大使であった。ナエ大使は、2018年にトルコ政府が、追放した大使である。この時以来、イスラエルとトルコは互いの大使を召還したままで、政府どうしの関係は冷え込んだままになっている。

しかし、湾岸諸国がイスラエルに歩み寄っていることから、トルコは今になって、イスラエルとの関係を回復させたいような動きを見せている。しかし、イスラエルは、これに強い態度で臨んでいるようである。

かつてイスラエルにとっては、トルコだけが、アラブ諸国の中で話ができる国であった。しかし、今は、ハイファ沖の天然ガスからギリシャやキプロス、ヨーロッパにもつながりができている上に、今は湾岸諸国の中にも友好国ができたので、もはやトルコだけが頼りではなくなったからである。トルコが追放したナエ大使が、UAEへの大使になったことも、またその象徴のようでもある。

www.timesofisrael.com/boxed-in-turkey-tries-to-rekindle-ties-but-israel-can-now-play-hard-to-get/

石のひとりごと

アブラハム合意ーイスラエルと湾岸諸国がこのように接近するとは、予想もできないことであった。トランプ大統領とそのチームが成し遂げたことは、まさに平和への歴史的な貢献といえる。ノーベル平和賞ものとの記事もあった。

そのトランプ大統領の弾劾裁判がいよいよ来月8日ごろに始まるとのニュースが入っている。これほどの功績を残した大統領が2度も弾劾の扱いを受けるのである。だからこそ逆に、トランプ大統領が、世に反して、主の働きの前進のために用いられたという証であるかもしれない。

ただ、中東はあっという間にすべてがひっくり返ることもありうるので、これからも見守りつつ、とりなしていきたいと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。