パレスチナ自治政府治安部隊隊員がイスラエル軍司令官を射殺:エスカレート続く西岸地区情勢 2022.9.17

殺害されたバル・ファラ司令官

衝突が続くパレスチナ情勢だが、14日夜明け前、西岸地区のパレスチナ人村のジャラマ近く、イスラエル領との境界、検問所付近で、イスラエル軍とパレスチナ人2人との戦闘になり、イスラエル軍を率いていた司令官、バル・ファラ将校(30)が死亡。パレスチナ人2人、アフマド・アベドとアブドゥル・ラフマン・アベドも死亡した。

メディアによると、ファラ将校たちは、アフマドたち2人の逮捕に行ったところ、手製のマシンガンと、自動銃で武装していた2人の反撃を受けたという。いわば情報収集ミス、情報漏れの可能性もあり、調べが進められている。

問題は、この2人のうち1人が、パレスチナ自治政府治安部隊の諜報関係部隊員であった点である。イスラエルが今、西岸地区に入って行って、テロリストをとりしまりを図っているのは、自治政府が影響力を十分に発揮できないために、イスラエル軍自身が、これを担うことになっているのである。

その中で、その自治政府の治安部隊隊員が、イスラエル軍の司令官を殺したということである。自治政府の支配力がますます弱体化していることを表しているとも考えられるが、今後、自治政府がこれをどう対応するかで、状況は大きく変わる可能性がある。

今はイスラエルとテロ組織の対立だが、イスラエルとパレスチナ自治政府の対立という構図にまで発展しかねないということである。ラピード首相は、深刻なエスカレートだといい、ガンツ防衛相も、これをどう取り締まるのか、自治政府に警告を発した。

www.timesofisrael.com/lapid-pa-servicemans-involvement-in-killing-of-idf-officer-an-escalation/

バルさんは、大勢が見守る中、14日夜、ネタニヤの墓地に葬られた。バルさんの恋人のアリエル・サバンさんは、「私の最も恐れていたこと悪夢が起こってしまった」と深い悲しみを語っている。バルさんの実家は今、悲しみでいっぱいになった若者でいっぱいになっているという。

バルさんの兄、タルさんは、「悪夢は時に本当になるものだ。」と語る。バルさんは、司令官として、命じられてではなく、すすんで戦争で任務を果たしてきたのだが、帰ってきた時には時に、「なぜ自分にこんなことが起こるのか。」と罪悪感も語っていたという。

www.jpost.com/israel-news/article-717172

秋の例祭シーズンに向けての治安状況

イスラエルでは、今週末から新年(ローシュ・ハシャナ)に始まり、10月中旬まで秋の例祭シーズンとなる。Yネットによると、イスラエル軍は、これまでに、秋の例祭中にたくらんでいたとみられるテロをすでに70件、未然に摘発したとのことである。(今年に入ってから合計240件(自爆テロや誘拐の計画含む)を摘発)

これがイスラエル軍が西岸地区で、危険な任務を果たしていることの結果である。

無論、これからも西岸地区での作戦は継続するが、警察は、エルサレムと西岸地区入植地を中心に、全国に警察官2万人を配置して、あらゆるテロに備えるという。

www.ynetnews.com/article/r1rp0nrgi#autoplay

石のひとりごと

イスラエル人であるということは、ほんとうに厳しい。平和主義を主張できる私たちは、特に恵まれているということを知らなければならない。

これからも、テロを取り締まるイスラエル兵たち、テロを起こそうとするパレスチナ人たち、そしてテロの犠牲になるかもしれないイスラエルの人々を覚え、これから一月あまり、しっかりとりなしを。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。