ネタニヤフ首相まだ改革停止宣言せず:国会前に改革反対派・推進派デモ集結で暴力衝突懸念 2023.3.27

March 27, 2023 (photo credit: REUTERS/STRINGER)

27日午後7時(日本時間28日1時)ネタニヤフ首相の司法改革停止宣言はまだ出ず

GPO

ネタニヤフ首相は、27日午前中にも司法制度改革のプロセスの停止を国民にむかって宣言すると予想されていたが、予定時間から7時間以上経った今もまだ発表はない。

国内では、ネタニヤフ首相が、ギャラント防衛相を解任したことを受けて、労働組合(ヒスタドルート)のアーロン・ダビッド氏が、全国的なストを宣言し、空港が飛行機の発着を停止した。

27日朝からは、全国の自治体、救急外来以外の医療、病院はじめ、多くの店舗が閉鎖してストライキに入った。全国でデモが再開され、エルサレムでは、国会前に7万から10万人のデモ隊が集結。周辺道路や、電車駅、路面電車が封鎖された形になっている。

もめる閣議・発表遅延はネタニヤフ首相の作戦か:司法改革反対派デモ隊と推進派デモ隊が衝突懸念

国会では、国会開催まえの閣議で激しい論議になっている。レビン法相は、司法改革制度の発起人のような人物だが、ネタニヤフ首相の決断に従うとの意思表示をした。

左:ベン・グブール氏、右:スモルトリッチ氏
October 26, 2022. (Gil Cohen-Magen / AFP)

しかし、宗教シオニスト政党のスモトリッチ氏が、改革の停止を強く反対している他、極右オズマ・ヤフディ党のベン・グビル氏に至っては、もし改革を停止するなら、連立から離脱すると脅迫しているという。司法制度改革法案を提出しているロズマン氏も加わり、改革推進派に立ち上がるよう呼びかけた。

www.jpost.com/breaking-news/article-735535

これを受けて、推進派もエルサレムに集まり始めている。その中には、エルサレムのサッカーチームのファンクラブながら、過激な右翼で知られるベイタルも含まれているという。暴力的な懸念が出始めている。こうした中、ネタニヤフ首相が、今に至るまで、改革停止の宣言を遅らせているのは、推進派が到着するのを待っているのではないかとの推測も出ている。

肝心のネタニヤフ首相はどれほどの思いをもっているのかだが、やはり、司法制度改革はやるべきとの強い思いは持っているようである。

ネタニヤフ首相は、ロンドンで受けたインタビューの中で、「司法の権限が強すぎて、政府の動きが縛られてしまう。」と言っていた。この番組は、ネタニヤフ首相が、司法改革を停止するとの見通しから、本来月曜夜放予定だったが、前倒しで、月曜朝に公開された。

www.timesofisrael.com/netanyahu-in-weekend-interview-overhaul-necessary-as-supreme-court-too-powerful/

実際のところ、イスラエルの司法の権限が強すぎると言うことは以前からも論議になっていたという。しかし、今この内戦にも発展するような事態になってしまった以上、とりあえずは、これを一旦停止して、仕切り直しをするべきだとの声が与党の間からも出ているとのこと。

www.timesofisrael.com/things-fall-apart-2/

治安維持はぬかりなく・・

しかし、ユダヤ人通しの争いがエスカレートしている様子は、言い方は失礼ながら、国外、特にイスラエルの敵たちからは、なんとも滑稽に見えているかもしれない。

しかし、そこはイスラエル。肝心なところは押さえているのか、西岸地区でイスラエル人トラック運転手を襲ったパレスチナ人でイスラム聖戦のメンバーを逮捕した。こんなニュースが、デモ関連のニュースの間にぽっくりと入っているのであった。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/shin-bet-says-islamic-jihad-member-behind-west-bank-shooting-has-been-arrested/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。