ベネット首相・アメリカでの安息日:エルサレムポスト記者 2021.8.30

アメリカで滞在中ホテルで平日にも祈るベネット首相 GPO

課題満載の中で、アメリカでの初の首脳会談に行ってきたベネット首相。すでに帰国して、現実のイスラエル社会での任務に戻っている。

そんな首相の正統派ユダヤ教徒としての一面が伺える記事があった。バイデン大統領との会談が延期になり、アメリカで安息日を過ごすことになった首相の様子である。

これまでの首相とは違ったベネット首相の一面を、エルサレムポストの記者が、新鮮な思いで書いたものである。

www.jpost.com/israel-news/a-shabbat-to-remember-with-the-prime-minister-reporters-notebook-678004

急な変更で安息日をアメリカで

アフガニスタンでの緊急事態により、バイデン大統領との会談が24時間延期になった。ベネット首相は、イスラエル史上はじめての正統派(超正統派ではない)首相である。安息日中の移動はユダヤ教の律法により禁じられていることから、ベネット首相とその一行、記者団も全員、土曜日没で安息日が終わるまでイスラエルに帰国できないこととなった。

しかし、コロナ対策で、首相やメディア関係者も一行みな、カプセル扱いであっため、ホテルの外に出ることができい。在米イスラエル大使館は、急ぎハバッド派ユダヤ教ラビの協力を得て、ホテルの一室にシナゴーグをしたて、トーラーの巻物も準備し、安息日の食事もホテルの中で準備した。

しかし、メディア関係者たちは、自分たちでコシェル(食物規定)の食料の調達をしなければならかったという。金曜日、首脳会談を終えて記事をまとめ、解説も合わせて本国へ送るとすでに、日没が近く、もはや土曜夜までの食糧の準備をする十分な時間は残されていなかった。

そんな中、Times of Israelの記者の知り合いが、他社の記者の分もあわせて、食料が準備できたとのこと。メディアどうしの協力は、あまりない中、これはスペシャルなことであったと思われる。

金曜夜の安息日のテーブルでは、関係者が集まっている中、ベネット首相が、安息日の祈りと少しのメッセージを語った。その内容は、サウル王とダビデ王をあげ、どの王にも失敗はあるが、そこから何を学んでどう生かしていくかがよい王を決める、という内容だったという。

食事が終わると、ベネット首相は、「特別な安息日だった。」と述べ、記者たち一人一人のところへ回ってきて、仕事のことや、安息日の準備はうまくいったかなどとと尋ねてから、部屋に戻っていったとのこと。エルサレムポストの記者も、本当に特別だったと書いている。

その後、記者たちの会話では、「こんなフレンドリーな首相はあっただろうか」ということだったらしい。前のネタニヤフ首相は、トランプ大統領と同様にメディアを信頼せず、目の敵にしていたという。

これまでの首相の中には、たくさん酒を飲んでいたりした人もいたとのこと。ベネット首相は、今回、妻を同行させていない。予定外だったアメリカでの安息日はどう過ごすか聞かれると、本を4冊注文したとの答えていた。静かに本を読んで過ごすということである。

翌日の土曜安息日は、記者たちも仕事をせず、リラックスしたとのこと。そうして日没になるやいなや、いつもの戦場のような記者活動に戻り、イスラエルへの飛行機に乗りこんだとのことであった。

ベネット首相もまた、イスラエルに戻るやいなや、コロナとの戦い、緊張高まるガザとの問題などに戻っていったのであった。

*この時の特別な経験については、エルサレムポストの後に、Times of Israelもさらに詳しく報告する記事を出していた。リラックスした安息日を皆と共に経験し、「イスラエル人はこれで一つになれるのだ。」と締め括っている。同行した記者たちにとって本当に特別な経験であったようである。

www.timesofisrael.com/getting-to-know-the-pm-our-unexpected-shabbat-in-a-dc-hotel-with-bennett/

石のひとりごと:安息日とは

旧約聖書によると、神は6日かけて天地を創造した。そうして7日目は、仕事を終えて、休まれたと書かれている。(創世記2:2)また、後に、モーセに十戒(ユダヤ人の律法の基盤)を与えた時には、神は人間にも7日目には休むよう命じられた。これが安息日である。

人間も休息が必要ということであるが、同時に、7日目は仕事をせず、すべてのものは、この神に由来することを思いだし、その神に敬意と感謝を覚える日ということである。ユダヤ人はこれをしっかり守るために、特にイスラエルでは、安息日には店は閉まるし、バスや電車も動かなくなる。

一方、旧約聖書と、それに加えて新約聖書も信じているキリスト教徒は、イエスキリストが金曜に十字架にかかって死に、安息日の土曜日は何もおこらず、日曜朝によみがえったことから、日曜日を安息日と数えている。しかしキリスト教徒は、ユダヤ教徒ほど、安息日を遵守していない人が多い。日曜でも買い物は行くし、人によってはしっかり仕事に行っている人もいる。信仰のない人にとっては、日曜は自分が楽しむ日と認識されている。

人間は、おおむね、自分で自分の生活を支えていると思っているので、天地創造の神がすべてを動かしているとは思えない。目に見えない神を、実生活で優先することは難しいのである。ましてやその神にまかせて、うまく行くとは思わない。だから、日曜も休まず自分の力で動いてしまうのである。

筆者もそのようなことに陥ってしまってしまいがちだが、ユダヤ人の友人は、「この日はあなたが、神が創造した世にちょっかいを出さない日」と教えてくれた。自分の力でどうにかするのをやめて見る日ということである。ちょっかいを出さないようにする日ということである。

存外、その方が、ことは丸く、そして、早く進むものである。自分の計画ではなく、神の計画とその確かさにまかせる。それが安息日である。

しかし、この安息日を守るということ。ユダヤ人にとっては、さらに深い意味がある。国をあげて、これを守ることによって、この聖書の神に敬意を表する姿を表すことである。イスラエルは、これを実質的に守ることによって、この神への実質の敬意を表して、その神の存在を世界に知らせているのである。

そういう意味では教会も同じ使命をもっているといえる。炎のランナーという映画があったが、これは、キリスト教徒で安息日(日曜)を守ることをつらぬいいたオリンピック選手の物語であった。彼は日曜に走らなかったが、結果はよりよいものとなった。神に栄光を、そうしてその結果として、自分にも栄光をもたらしたという結果である。

ネタニヤフ前首相も、安息日を守り、ユダヤ教の教えには忠実であった。しかし、ベネット首相は、正統派として、イスラエルの神に祈りつつ仕事をしている、安息日を優先するという姿勢を明らかにしたということである。

なお、ベネット首相は、アメリカへ渡航前に、安息日でも休まず3回目ワクチン接種をすすめるよう、指示した。これは命に関わる問題と判断されたためと国民に説明している。ユダヤ教にとって命は神に与えられたものなので、それをできるだけ守るということは最重要事項との認識である。明らかにそれを守る行為については、安息日でも例外もあるとされている。

聖書には次のように書いてある。ベネット首相のこれからのあゆみに注目したい。

もしあなたが安息日に出歩くことをやめ、わたしの聖日に自分の好むことをせず、安息日を「喜びの日」とよび、主の聖日を「はえある日」と呼び、これを尊んで旅をせず、自分の好むことを求めず、むだ口を慎むなら、そのとき、あなたは、主をあなたの喜びとしよう。

「わたしは、あなたに地の高い所を踏み行かせ、あなたの父ヤコブのゆずりの地であなたを養う」と主の御口が語られたからである。イザヤ58:13

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。