シリアからイラン関係武装勢力撤退の動きをIDFも確認 2022.9.17

ガンツ防衛相と新しく任命されたヘルツィ・ハレヴィ参謀総長 GPO
 An Israeli attack targeting a Syrian airport tore a hole in the runway and also damaged a nearby piece of tarmac and structure on the military side of the airfield, satellite photos analyzed Friday by The Associated Press showed. (Planet Labs PBC via AP)

シリアでは、ここしばらく、かなり断続的にシリア領内のイラン軍に関係するとみられる地域への攻撃が報じられていた。最近では、今月2日にアレッポ国際空港への攻撃で、滑走路にダメージを受けるという攻撃があった。すぐに修理したとのニュースが入っていたが、6日に再度攻撃があり、空港はしばらく使えなくなっている。

これに先立ち、先月には、ロシア海軍も駐留している、シリアから地中海に続くタルシシの港周辺への攻撃が実施された。修復のため、港は一時閉鎖状態になっている。これらの攻撃で、イランからヒズボラへの武器搬送が、著しく妨害されていることから、イスラエルが行っているとみて間違いないだろう。

また最近、注目されているのは、これまでは避けていたとみられるロシア軍駐屯地周辺への攻撃もちゅうちょしなくなっている点である。度重なるイスラエルの攻撃で、シリア軍兵士の死者も増えている。シリアのアサド大統領が、イランにシリアからイスラエルを攻撃しないよう苦言を漏らすなどの動きも出始めていた。

こうした中、今週、サウジアラビアのメディアが、イラン軍とヒズボラ関係の武装勢力が、ロシアの要求に応じてシリア領内から撤退していると報じた。ロシアが、イランに、特にロシア軍周辺から撤退するよう指示したのではないかとみられている。ロシアはイスラエルとの不用意な衝突は望んでいないとみられる。

こうした中、イスラエル軍からも、イラン軍やヒズボラ勢力がシリアから撤退していると確認したとの発表があった。

ガンツ防衛相によると、イランはシリアに少なくとも10ヶ所のミサイル製造拠点を持っている。ヒズボラは少なくとも15ヶ所の拠点で、シリア人傭兵を雇用したり、武器の密輸や準備を行っている。イスラエルは、これらの地点への攻撃を続けてきた。この作戦を、戦争と戦争の間の戦いという意味のヘブライ語から、MABAM作戦とよんでいた。

イスラエル軍は、イランとヒズボラのシリアからの撤退について、MABAM作戦の結果(勝利)であるとの見方を発表した。

www.jpost.com/israel-news/article-717261

しかし、だからといって、イスラエル軍が、すぐに、攻撃の手を緩めることはない。17日深夜すぎ、シリアのダマスカス国際空港とその周辺への攻撃が行われ、シリア兵5人が死亡したとのニュースが入っている。

シリアによると、攻撃はガリラヤ湖方面から飛来したミサイルによるものだったという。(イスラエルによるものということ)

www.timesofisrael.com/syria-says-israeli-strikes-hit-damascus-area-five-soldiers-killed/

石のひとりごと

イランやヒズボラの撤退とは、近年にない動きである。はたして、イスラエルの執念に負けたといっていいのだろうか。

イスラエルとロシアの関係は今悪化の様相にある。ラピード首相はドイツはじめ、ヨーロッパへの接近姿勢をみせている。ポーランドを通じて、ウクライナへ武器を送ったとの情報もある。ロシアもイスラエルに対して厳しい顔を見せ始めている。

しかし、今は、ウクライナ情勢が厳しくなる中で、イスラエルと衝突するようなめんどうは避けたいということなのだろう。

11月の総選挙でラピード首相が、留任する可能性はなかなか厳しい状況にある。ライバルのネタニヤフ氏は、プーチン大統領との個人的なコネクションから、自身が首相になれば、治安は改善すると言っているがどうだろうか。ロシアも長い目で状況を見守っているのかもしれない。

国際情勢の動きはなかなかに難しい時代に入っているようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。