西岸地区各地で衝突:パレスチナ人9人死亡 2021.5.15

西岸地区では、検問所で、イスラエル兵士とパレスチナ人が衝突し、パレスチナ人に死者がでる事件が散発する中、14日、広範囲で、大規模なパレスチナ人とイスラエル軍が激しい衝突になった。

イスラエル軍によると、3000人ほどのパレスチナ人が、各地で、イスラエル兵たちに投石したり、火炎瓶をなげるなどしたため、イスラエル軍が実弾で対応。少なくとも9人が死亡した。

多くは、ナブルス近郊ウリフとジェニン近郊での衝突で、またエリコでも1人(20)でも死者が出ている。パレスチナ保健省によると負傷者は500人にのぼる。

ハマスは西岸地区の若者たちを煽動している。14日、9人もの死者が出た後、ハマスの報道官は、「西岸地区の自由なヒーローたち。あなた方の武器に祝福あれ。あなたがたの革命に敬意を表す」と発信した。

アッバス議長は、アメリカに対し、「占領軍であるイスラエルの軍が、計画的な殺人をしている。」と訴え、ガザと西岸地区に介入するよう求めたとのこと。

www.timesofisrael.com/at-least-six-palestinians-reported-killed-as-violence-spreads-to-west-bank/

<石のひとりごと>

9人もの命がまたなくなった。悲しむ家族がまた増やされてしまった。

今、親パレスチナの思いにある人は、イスラエル兵とは、残虐な占領軍にみえているかもしれない。戦わなければならない相手だと。

無論、殺人を擁護することはできない。また、戦場という異常な状況の中で、恐怖と戦いながら、残虐なことをしてしまうイスラエル兵が、時にでてきてしまうという点も悲しい事実である。

しかし、実際には、イスラエル兵の多くは20歳に届くかとどかないかの若者たちで、笑顔で友達と遊ぶ、まだかわいらしさも残る兵士たちが少なくないということも知ってほしいと思う。

イスラエル兵の中には、自分に向かって石を投げつけてくるパレスチナ人の憎しみに満ちた目を間近で見てしまい、「なぜそこまで憎まれなければならないのか」と心を病んで、自殺した人もいる。

この若さで、相手を殺すことになってしまった若いイスラエル兵を思うと心が痛む。兵役には、イエスを信じる若者たちも多くいる。どんな思いで従軍しているのだろうか。

パレスチナの若者もまた、まだ若い若い、中高生ぐらいの人も多い。ベツレヘムで、憎しみに支配されたパレスチナの10代の子供の目をみたことがあるが、それはあまりにも恐ろしいものであった。

パレスチナの若者もまた、何者かに支配され、相手を破壊し、自分自身をも破壊している。異常事態である。だからこそ、自殺にまで追い込まれたイスラエル兵がいるのである。

一度、1号線にあるパレスチナ人たちの刑務所を取材した。西岸地区ファタハ系のパレスチナ人たちはそれでも普通の感じであったが、ハマス専用の牢にいる人々は、何かえたいのしれない恐ろしさを感じたことを思い出す。

私たちが戦わなければならないのは、パレスチナの若者を憎しみに駆り立て、怒りで支配している背後にある闇であろう。

今後、死者が出れば、出るほど、パレスチナ側にもイスラエル側にも怒りや憎しみ、まちがった使命感が高まってしまう。この状況がなんらかの形で、1日も早く終焉、打開されるように祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。