陸海空・ガザ総攻撃準備と空爆でハマス司令官ら4人死亡:スデロット住民(3万)避難完了 2023.10.16

地上軍兵士たちとハレヴィIDF参謀総長 IDF

ガザとの戦闘は10日目に入った。イスラエルでは緊急統一政府が立ち上がり、ガンツ元参謀総長が加わっていることもあり、ネタニヤフ首相の指揮、指導力も、徐々に以前のように活発になってきているようにみえる。

軍も、ハマスの奇襲を許してしまった諜報機関のミスを直視するとともに、これからの大規模な作戦の準備を進めている。

陸海空からの攻撃最終調整段階:ガザへの大規模攻撃のタイミングは?

News Week

イスラエル軍は、すでに36万人の予備役を召集。14日土曜には、陸海空全方向からガザへの総攻撃を行う準備ができていると発表した。

その上で、ガザ北部の住民110万人に対し、期限をつけて、南部への避難を呼びかけたのであった。

しかし、期限を過ぎても、限定的な進行が北部にあっただけで、その後は、大規模な空爆は行われているものの、25時間以上経った今もまだ、ガザへの大規模な地上侵攻は始まっていない。

IDFコンリクス報道官は、大規模な作戦は、ガザの民間人がいなくなっていることが確認できてからのことだと言っている。しかし、民間人の避難完了を待っているだけではなく、その間に、さらなるハマス地点の破壊と、ハマスの司令官や工作員を排除する作戦を行っている。

また、地上軍として侵攻するとみられる司令官らを空軍機にのせて、ガザの詳細な地図をもとに、ガザ上空から地上の様子を把握させることも行っている。

www.timesofisrael.com/air-force-flying-ground-forces-commanders-over-strip-ahead-of-expected-offensive/

ガザへの空爆はハマス関連施設を集中的:ハマスのハイレベル司令官計4人死亡

最新ニュースでは、日曜、ハマス上級司令官ムアダズ・エイドを殺したと発表。昨日は、イスラエルへの侵攻を指揮したとされる、ヌクバ部隊、カンユニス大隊、ビラル・アル・ケドラ司令官が死亡したとイスラエル軍は発表していた。

イスラエル軍によると、アル・ケドラは、キブツ・ニリムとキブツ・ニール・アムでの殺戮を指揮した人物だった。

www.timesofisrael.com/idf-kills-hamas-commander-who-led-deadly-border-attack-as-rocket-fire-on-south-resumes/

その2日前にも2人のハマス司令官を殺害しており、そのうちの一人は、同じくヌフバ特殊部隊の司令官アリ・カディだった。

このアリ・カディは、2005年に、イスラエル人実業家の誘拐・殺害で逮捕されたが、2011年にネタニヤフ首相が、ガザ捕虜になっていた兵士、ギラッド・シャリートさんとの交換で釈放したテロリストの中に含まれていた人物だった。

イスラエル軍報道官は、ガザにいるハマスのアヒヤ・シンワル含む指導者の殺害に重点を置くと言っている。

www.timesofisrael.com/a-week-after-murderous-attack-on-south-idf-kills-two-hamas-commanders-in-gaza/

この他、今もまだ、ガザからイスラエルへ侵入してくるハマスがおり、昨日、ガザ近郊のキブツ・ニール・アムで、武装ハマスが一人射殺された。

テルアビブ周辺にまでガザからロケット弾:ガザ周辺住民とスデロット住民の避難はほぼ完了

ガザからイスラエルへロケット弾攻撃は、12時間あいてからまた攻撃が始まると言った様相で、戦闘が始まった当初のように、大量のロケット弾が一気に飛来するようなことにはなっていないが、南部には攻撃が散発している。

昨日は、テルアビブや、ネタニヤなどから一時ハイファぐらいまでサイレンが鳴るようにはなっているが、迎撃ミサイルが撃墜しているのか、大きな被害は報告されていない。

イスラエル軍がすでにガザのミサイル関連施設をだいぶ破壊したとも考えられるが、ハマスは単に長期戦に備えて、発射を少なくしているとの見方もある。ハマスは、武器を製造する能力を持っており、外からの支援には頼っていないとの情報もある。

イスラエル政府は、戦争が勃発してから、すでにガザから4キロ以内に住む25のキブツ住民1万3000人を、最南端エイラットなどへ避難させた。

Israelis load their belongings onto a bus as they evacuate from the southern Israeli town of Sderot, Oct. 15, 2023 (AP Photo/Ariel Schalit)

加えて、ガザへの総攻撃を前に、ガザ北部国境から2キロに位置するスデロット(ハマスの侵入で50人死亡)の住民3万人ほぼ全員が、避難を完了した。スデロットは、少人数は残っているが、ゴーストタウンのようだという。その後、アシュケロン南部など32の地域住民も避難を開始した。

避難先は、最南端のエイラット、エルサレム、テルアビブなどのホテルとなっている。この移動については、軍によるものではなく、民間手段を使っていたため、移動や宿泊費用は政府が提供する。予算は3300万ドル(約50億円ほど)に上る。

こうした中、退避せず、わずかに自宅に残っている人々もいる。この人々は、軍や政府に対し、ここで何が起こったのかを忘れさせないためだと言っている。彼らの存在を覚え、ハマスを完全に地上から抹殺するという使命を完了してもらうためと言っている。

www.timesofisrael.com/as-exodus-turns-sderot-into-a-ghost-town-some-stay-as-a-reminder-of-whats-at-stake/

捕虜家族・犠牲者遺族の悲痛すぎる心情

イスラエルでは、戦時下統一政府になってから、ネタニヤフ首相の動き方が、以前のようにすばやくなった印象がある。テルアビブの治安閣議はじめ、最前線訪問、捕虜家族訪問も活発に行っている。

回収している遺体への調査では、レイプ、恐ろしい拷問の跡が確認されており、遺族の心情を思うとこれからどう生きるのかとも思う。

以下のフェイスブックのサイトでは、犠牲者家族の証言が集められている。

note.com/oct7_japan/?fbclid=IwAR1kKREhdkfQXhfdmAB2ewLfjRFOeMJT41xrAspix76GB4EJ3bBSiRasSks

ヘルツォグ大統領は、回収した犯罪の証拠となる資料から、ハマスのイスラエル人誘拐マニュアルを世界に向けて発表し、ハマスがテロ組織以外のなにものでもないと訴えている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。