重症者増加中:検査と治療薬ストックに限界 2020.7.13

ハイファのランバンホスピタル地下駐車場の病棟 出展:ランバンホスピタル

イスラエルでは、先週から複数の地域でロックダウンが始まったが、その結果はまだ先になるとみられ、昨日も24時間の感染者は1206人。有症者は、18296人で、イスラエル軍が運営する中間施設となるホテルに収容される人が増えている。

重症化する人は、24時間で17人増えて151人。死者は、8人増えて、362人となった。

統計からみる数字では、3−4月の重症化率が、1.8%であったところ、現時点では、0.7%と低くなっている。しかし、最もハイリスクとされる人の感染率をみると、こちらも3−4月が5.5%であったところ、3.3%に減少している。

このため、日本と同様、今、感染者数が激増しているにもかかわらず、重症化率が低いのは、今は、ハイリスクの人が前より保護されている結果であり、ウイルスの危険性には変わりはないとみられている。

www.timesofisrael.com/at-risk-groups-less-hard-hit-in-2nd-wave-causing-fewer-serious-cases-analysis/

<検査・治療薬に限界>

こうした中、イスラエルでは、検査件数が毎日2万件以上になり、人材にも限界がみえてきたことから、濃厚接触者を割り出す時間を半分にして、検査数の削減に入った。

また、他の薬と違って致死率を62%下げた治療薬デムレシビルも、ストックが底をつき始めており、中等度の患者への投与を停止せざるをえなくなりはじめている。

ハイファの総合病院ランバンホスピタルのミカエル・ハルベルタル院長は、イスラエルが感染に対するコントロールを失い始めていると警告した。しかし、同時に、イスラエルの経済をみれば、もはや、ロックダウンはできず、経済を止めてはならないとの考えていると語った。ウイルスとは別の原因(経済苦)でのコロナ被害者が出てくるからである。

今後、病院への圧力は高まると考えられるが、日本と同様、コロナ、ロックダウンなどで、病院の経済力も相当な赤字で非常に苦しいという。ランバンホスピタルには、緊急用の地下大病院施設を備えているが、その準備のためにも、政府からの支援が必要だと語っている。

www.timesofisrael.com/cut-off-in-mid-treatment-israel-running-out-of-lifesaving-covid-drug-remdesivir/

<ランバンホスピタルの緊急地下病院>

ランバンホスピタルには、主にミサイル攻撃を想定して、有事には急遽、駐車場を病院として利用する施設が整っている病院である。イスラエルでは最大の緊急地下病院で、最大2000床まで収容できる。これは緊急病棟としては世界最大。

ハルベルタル院長によると、今後、コロナ患者が増えてくることを鑑み、コロナ対策として、4段階を準備しているという。①低圧室の準備(肺炎患者に備え)、②コロナ病棟A:30床と、ICU6床、③コロナ病棟B:66床、ICU32床(12床増床可能)。

これ以上になると、地下病棟を使い、900床、ICU300床にするとのこと。

しかし、この3ヶ月のロックダウンで、日本と同様に、ランバンホスピタルも、相当な赤字が出ているとのこと。政府はそれに対し、対策がなされていないとのことであった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。