深刻化するイスラエル国内の問題 2020.8.21

エイラットの警察 スクリーンショット チャンネル12https://www.n12.co.il/news-law/2020_q3/Article-cec8515774d0471026.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=173113802

エイラットで16歳少女を30人がレイプで全国市民デモ発生

コロナ危機により、経済も悪化して、社会に様々な歪がでていることは、イスラエルも世界と同様である。家庭内暴力の増加が指摘されている他、先週、イスラエル南端の町エイラットで、16歳の少女がホテルで30人以上にレイプされるという痛ましい事件が発生した。

少女は、友人とともにエイラットへ旅行。エイラットの知人たちとも飲食中に、トイレでホテルの部屋に戻ったときにレイプされたと訴えている。これまでに報じられた情報によると、30人以上が並んで順番待ちして部屋に入っていったとのこと。このニュースでイスラエル中がショックに陥った。

警察は特別班を立ち上げ、これまでに20歳代の2人を逮捕。残りを追っている。テルアビブ(約1000人)、エルサレム(150人)、ハイファなど全国で、被害者を支持し、このような事件に反発するデモが発生した。

www.timesofisrael.com/teen-victim-tells-police-gang-rape-suspect-offered-her-videos-report/

予算不足で青少年校正施設閉鎖へ:ユース8000人が路頭に迷う懸念

イスラエルには、様々な理由で落ちこぼれて、学校にも家庭にも戻れなくなっている子供たち(14−18歳)がいる。こうした子供たちを救出する施設の一つが、1980年代から活動しているHILAと呼ばれる施設で、120の市町村で運営されている。

HILAは、落ちこぼれた子供たちを預かり、中学卒業と高校進学のための試験合格を目指す。こうしたプログラムは他にもあるが、HILAは特に高い評価を得ている組織のようである。

しかし、今政府が、ネタニヤフ首相とガンツ氏が対立し、今年度予算がまだ合意できていないことから、HILAでは、年間経費40億シェケル(1200億円)が不足し、運営できなくなっているという。HILAは7月に閉鎖を予告している。

ヤミナ(右派党)ナフタリ・ベネット氏は、HILAが閉鎖になった場合、課題のある子供たち8000人がホームレスになって路頭に迷うと警告。「総選挙をするかどうかはどうでもよい。ともかくも、このプログラムは継続させなければならない。」と訴えている。

実際のところ、プログラムの教師たちは、失業しても、失業保険で給与と同額に近い補償をえることになり、国としての出費は、それほど変わるものではないという。HILAを維持することはできるのではないかともみられている。

また、HILAへの予算配分がもれている一方で、ユダヤ教超正統派たちへは、政治的な配慮から、不公平ともいえるほどの補償が行き渡っていると指摘する市民も少なくない。ベネット氏は、ネタニヤフ政権のコロナ対策は、完全に失敗であると主張している。

www.jpost.com/israel-news/israel-shuttering-programs-for-at-risk-youth-due-to-budget-crisis-638950

石のひとりごと

UAEとの合意という、久しぶりの明るいニュースで、メディアは湧いていたが、国内には様々な歪が発生しているようである。また、ネタニヤフ首相とガンツ氏の不一致が表面化しており、総選挙の足音はますます大きくなっている。内部からの崩壊にならないようにとのとりなしも必要である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。