捕虜交換1回目:イスラエル人13人と外国人11人無事イスラエル領内へ 2023.11.25

(Courtesy)

イスラエル人13人と外国人11人無事イスラエル到着

ハマスとイスラエルが合意した休戦と人質交換の第一回目が昨日24日が無事完了した。双方とも休戦を守っており、続いて本日第二回目の交換が実施される見通しとなっている。

昨日は朝7時(日本時間午後2時)から、双方ともに攻撃を停止。それから約10時間後、ハマスは、ガザ南部、カン・ユニスの病院で、赤十字にイスラエル人13人とタイ人10人、フィリピン人1人を引き渡した。

そこから、人質たちは、赤十字の車に分散してラファ国境へと移動した。以下は、ラファ検問所に到達する人質たちを乗せた赤十字の車。ラファから、エジプトへは歩いて移動したもようである。

いったんエジプトが受け取り、イスラエル側へ引き渡したあと、ヘリコプターでイスラエル領内のハツェリム空軍基地へと移動した。

着後、移動の際には、人質一人につき、兵士一人がサポートし、まずは、心理ケア専門の人が、人質たちを受け入れて、今どこにいて、自宅はどうなっているかなどの話を聞いたとのこと。子供たちは、今回4人と予想以上に少なかったが、おもちゃなども準備され、心のケアに万全の準備がなされていた。

その後、5か6病院へ分散し、医療検査を受けてから、家族に面会している。

同じ頃、テルアビブでは、人質13人の解放を、祈りで見守る人々が集まっていた。

49日ぶりに帰国したイスラエル人:母親3人とその子供4人・高齢女性6人

今回、生きて帰国できたイスラエル人13人は、全員キブツ・ニール・オズ(ガザ国境から3キロ・400人在住)から拉致された人々で、3人の母親とその幼い子供たち4人。70歳代高齢の女性6人。このうち4人はドイツ国籍も持っていた人々だった。

心理的精神的な影響はまだわからないが、身体的には特に問題はないと伝えられている。人質たちは、徐々に家族と再会を果たしている。

ドロン・カッツ・アシャーさんとその娘ラズちゃん(5)とアヴィヴちゃん(2)

*ドロンさんの義理の母エフラト・カッツさん(69)はハマスに殺され、そのパートナーのガディ・モシェさんは拉致された。
ドロンさんの夫であり父親のヨニさんは、この日キブツにいなかったので、拉致される前にドロンさんからの連絡は受けていたという。
愛する妻と娘たちとの再会を果たしたヨニさんは、IDFに深い感謝ととも残っている人質の解放を訴えた。
ヨニさんは、ドロンさんが持っていたスマホで人質たちの位置を追いかけたほか、ドロンさんがドイツ国籍ももっていたことから、ドイツにも必死で釈放に向けて働きかけるよう、訴えていたとのこと。

www.jpost.com/israel-news/article-775017

ダニエレ・アロニさん(44)とその娘エミリアちゃん(5)
*ダニエレさんの姉とその夫、その双子の女の子たち(3)はまだガザにいる。

 

 

 

カレン・ムンダーさん(54)とその息子オハッド君(9)その祖母ルーティさん(78)
*ルーティさんの夫、アブラムさんはまだガザにいる。家族はシムハット・トーラーで親族を訪問中に被災していた。

 

 

 

ヤファ・アダルさん(85)ゴルフカートに乗せられているクリップが流れていた人
*3人の子供と7人の孫、8人のひ孫がある。孫の一人たミールさん(38)はガザで人質になっている。ヤッファさんは、認知症があったとのことだが、ハマスにしっかりした表情で拉致されている姿が、イスラエル人に勇気を与えていたといわれる。

 

アディナ・モシェさん(72)*夫のサイードさんはハマスに殺された。

マルガリット・モシェさん(78)写真は家族と再会したマルガリットさん

 

ハナ・カツィールさん(77)
*夫のラミさんはハマスに殺され、息子アブラハムさんは、おそらくガザにいる。ハナさんは、イスラム聖戦が死亡したと発表していたのだが、今回生還した形である。

ハマスとイスラム聖戦の間にコミュニケーションがあるということだが、別の見方をすれば、イスラム聖戦に人質になっている人もいるということでもある。ハマスとは別の交渉も必要になる可能性が懸念されている。

オハナ・ペリさん(79)*息子のナダヴさん、ポプウェルさんはまだガザにいる。

イラン仲介で解放されたタイ人10人とフィリピン人1人

タイ政府によると、タイ人で10月7日に殺された人は少なくとも32人。拉致されたのは26人とみられている。今回は、その中の10人が解放されたということである。10人の名前は未公開も写真は公開されている。

フィリピン人は、ゲリエノール・ジミー・レアノ・パチェコさん(33)。ジミーさんは、キブツ・ニール・オズで、アミタイ・ベン・ツヴィさん(80)のケアワーカーだった。ハマスが来て連れ去られた時、ベン・ツヴィさんは、そのことを友達に通報した直後にハマスに殺された。

www.timesofisrael.com/13-israelis-including-4-kids-back-in-israel-after-held-hostage-in-gaza-for-49-days/

本日の人質交換について

イスラエルは、本日釈放されるイスラエル人のリストを受け取っている。今夜もまた同じ手順で、十数人が戻ってくる予定である。これが4回、4日続き、可能性として、10人ずつ1日の休戦が継続されることになっている。

なお24日朝、北部でサイレンが鳴ったが、迎撃ミサイルが対処して、それ以上の問題にはなっていない。

ネタニヤフ首相からイスラエル市民へ

Kobi Gideon (GPO)

ネタニヤフ首相は、昨日からずっと、ガラント防衛相、ハレヴィ参謀総長とともに、テルアビブのイスラエル軍拠点キリヤに詰めて、動向を見守っている。

捕虜がイスラエル領内に入ると、ネタニヤフ首相は、国民にむけて、「今、13人の帰還が完了した。一人一人は世界を意味する。(一人を救うことは世界を救うというユダヤ人の格言)

イスラエルは、捕虜になっている人全員を戻すことに全力を尽くす。それが戦いの大きな目的の一つである。私たちは、戦争の目的を全て達成する。」と語った。

石のひとりごと

人質が戻ってきたことは、本当によかった。しかし、彼らの心の傷、またまだガザにいる人々とその家族を思えば、両手を上げての祝いにはなれないようである。まだこれは始まりであり、戦いはまだこれからなのだ。

An IDF officer embraces Danielle Aloni after her embrace from Hamas captivity on November 24, 2023.

しかし、今回の人質交渉を動かしたのは、被災者家族たちとそれを支える人々であったとも言われている。

イスラエル人が一つになり、まるで自分の家族が人質になっているかのように、皆が心を痛め、皆が本気で人質解放を願っているように思う。(写真は、戻ってきた人質を抱きしめるイスラエル軍女性兵士)

それで、ネタニヤフ首相も、ハマス殲滅を優先する勢いであったが、方向転換したとも言われている。無論、人質をとりもどすことだけが最優先ではない。イスラエル人は、ハマスを殲滅させることについても一致している。この両方を成し遂げるということである。

それにしても、この戦争になる前、イスラエルは、分裂直前であった。それがこれほど一瞬で、一致になるとはだれが想像しただろうか。先日、スティーブンス栄子師と話す中で、ハマスに殺された壮絶な虐殺は理解を超えるのではあるが、主がその主権の中で、イスラエルを分裂から助けたという一面も否定できないということである。

かつて、イスラエルがローマ帝国に滅ぼされたのは、イスラエル国内が深く分裂していた時だった。人間はどうにもおろかで、違いに争って、どんな危険が近づいているかさえ気がついてないときがある。私たちは、大きすぎるイスラエルの痛みから、学ぶべきことがあるということかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。