大規模サイバー攻撃でイランのガソリンスタンド麻痺 :イランの厳しい現状 2021.10.27

イランへのサイバー攻撃:反政府勢力によるものか

26日、イラン全国のガソリンスタンドで、ガソリン購入のためのカードが使えなくなり、車の長蛇の列となった。このカードは、イラン政府が一部補助する形でガソリンを購入できるカードで、これを使おうとすると、「サイバー攻撃64411」という表示が出て、給油ができなかった。このカード以外の通常価格の場合は、ガソリンの購入は可能であった。

イラン政府によると、数時間後には、全国のガソリンステーション2200箇所で、復旧できたが、全部戻るのは、28日水曜になるとの見通しである。原因について、イラン政府は、サイバー攻撃があったと発表した。しかし、どこからも犯行声明は出ておらず、何者によるものかはわかっていない。

しかし、攻撃がイスラム最高指導者ハメネイ師への攻撃と見られる点がいくつかあがっている。表示の64411は、イランのイスラム最高指導者ハメネイ師のイスラム法関連の質問サイトの番号だという。

この数字は、7月にイランで発生した鉄道へのサイバー攻撃にも使われていた。Times of Israel によると、イスラエルのサイバー企業チェックポイントは、7月の攻撃は、ハッキンググループ“インドラ”(ヒンズー教の神の名)によるものであったと発表していた。これが何者かは不明である。

この他、海外のペルシャ語放送が流した、イスファハン(イラン都市)からとする映像には、道路わきの大きな看板に、「ハメネイ!ガソリンはどこだ」とか、「ジャマラン(ハメネイ師の家があるテヘラン北部の町)のガソリンスタンドはただだ。」などとの表示が出されていた。

イラン国内に、今のイスラム政権に反発する勢力が、存在していることは間違い。

www.timesofisrael.com/iran-blames-fuel-shutdown-on-cyberattack-from-unnamed-country/

イラン内政の危機:インフレと失業、旱魃による水不足

イランでは今、50年で最悪といわれる干ばつと、それによる水不足、異常な熱気に見舞われている。今年7月には、水問題をきっかけとする反政府デモが発生。政府の反撃で、少なくとも8人が死亡したのであった。

www.timesofisrael.com/tehran-suffering-worst-drought-in-50-years-says-water-supply-official/

トランプ前米大統領は、2018年に核合意から離脱して、イランへの経済制裁を再開している。ネタニヤフ前首相は、イスラエルの水技術を提供するとして、反政府勢力を奨励し、反政府勢力による、現政権の打倒を目指しているといった動きを見せていた。

その後イランでは、主要産業である石油の輸出が激減し、インフレが続く。失業率も右肩あがりで、12%を超えている。しかし、ロシアと中国が、イランとの経済活動を継続したことから、イラン経済は非常に悪いながらも崩壊せず、アメリカの経済制裁を耐え抜いた様相である。

www.cnbc.com/2021/03/23/these-6-charts-show-how-sanctions-are-crushing-irans-economy.html

また、イランに関するエキスパートによると、今のイラン政権は、まだかなり勢力を維持しているので、反政府勢力が立ち上がれる状況にはないとのことであった。

こうした中、今、過激右派とも目されるライシ政権が立ち上がったのであった。

*イランのコロナ情勢は第4波を越えたものの、まだ1日に10000人前後が感染し、150人以上が日々死亡している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。