ハマスに全員惨殺された一家の葬儀:家族を人質に取られている人たちの苦悩 2023.10.18

ミーア・シェムさんの母ケレンさん (AP Photo/Ohad Zwigenberg)

ハマスは想像超えるほどに残虐なテロ組織

ガザの病院での悲惨な様子が伝えられているが、イスラエルにもハマスが行った残忍な暴力で苦しむ人がいることも忘れてはならない。

これまでにイスラエル人の死者は1300人。これほどの人数の人々が1日のうちに、テロリストたちの手によって残虐されたのである。

明らかになってくる話の中には、手を後ろ手に縛られて生きたまま焼かれた遺体があったなど、その暴力の恐ろしさは、ホロコースト以来だと、ユダヤ人自身が言うほど(めったに言わない)で、いかに心理的にも大きな影響になっているかということである。

被害を受けた遺族や家族はじめ、負傷者を扱う救急隊員、遺体や残忍な現場を片付けるZAKA職員、またメディア関係者の間でも心理的なケアが必要になっている。

イスラエル政府は、ハマスがいかに残忍なテロ組織であるかを世界に示すため、ハマスが公開している残酷なクリップや、人質をどう扱うかのインストラクションを公開している。以下はその一部。

一家全員惨殺のクッズさん一家埋葬

先週土曜、ハマスに全員が惨殺されたクッズさん一家が、17日、ガンヤブネの墓地に葬られた。

亡くなったのは。父親のリバントさん、母親のアヴィヴさん、長女のロッテムさん(19)、ヨナタンさん(16)、イフタフさん(14)の5人は、5年前に、アヴィ

(Photo: Tal Shahar)

ヴさんの出身地であった、キブツ・クファル・アザに家を買って、新しい生活を始めていた。

ロッテムさんは、イスラエル軍の軍事訓練インストラクター、ヨナタンとイフタフ君たちは、テルアビブユースアカデミーのサッカー選手だった。5人は一つのベッドに抱き合うようにして惨殺されていた。

葬儀では、息子一家全員を失ったリバントさんの父親イエフダ・レビさん、妹のアディさんたちとともに、大勢の参列者が、深すぎる悲しみを共にしていた。

www.ynetnews.com/article/rjqvyn2zt

人質ビデオ公開は心理的恐怖:行き場のない怒り

日本のニュースでも報じられていたが、ハマスは、昨日、人質にしているミーア・シェムさん(21)の様子を公開した。ミーアさんは右腕を負傷して手当てを受けている様子であった。「帰らせてほしい」と言っていた。

これは先に幼児2人の世話をしている様子をアップしたのに続いて2回目である。家族にとっては、少なくとも生きていることがわかるのではあるが、子供の苦しみが伝わってくることと、事態がエスカレートするたびに、どうなるかの心配が倍増するので、新たな苦しみになっていく。

さらには、このビデオが撮られたのは、6日前とみられるという。もしかしたらミーアさんはもいう死んでいる可能性もある。ケレンさんは、きっとよいケアを生けていると思う。楽観的なるべきだと言いきかせているが、気持ちはジェットコースターだという。こうしたビデオについて、IDFは、心理的な恐怖を目的とするものだと言っている。

ミーアさんは、イスラエル人だが、フランス国籍を持つ二重国籍である。母親のケレンさんは、国際社会にも救出を助けてくれるよう、訴えた。

www.timesofisrael.com/begging-world-to-return-my-baby-mother-says-video-of-hostage-daughter-a-good-sign/

政府にも怒り:テルアビブの防衛省前で人質救出を訴えるデモ

outside of the Kirya military base in central Tel Aviv on October 14, 2023. (Gil Cohen-Magen/AFP)

ガザで捕虜になっている人は、199人と発表している。

このほとんどは、ハマスによるものと思われるが、イスラム聖戦も30人を捕虜にしていると主張しており、全部が明らかになっているわけではない。このうち、何人生きているのかもわからない。

軍は、その人々がガザのどこにいるのか把握に努めていると言っているが、テロ組織と交渉を行うつもりはないとも言っている。これから地上作戦もはじまるとなると、人質は、実質的には見捨てられたような形である。

家族たちは、火曜、テルアビブの防衛省前で、捕虜として発表された人々の写真を貼り、政府に救出を求める訴えを行った。企画したのは、妻と3人の子供を人質にとられているアビハイ・フロツさんである。家族の解放を訴えている。

www.timesofisrael.com/idf-notifies-relatives-of-199-people-that-their-loved-ones-are-gaza-hostages/

家族たちは、ハマスへの怒りだけでなく、この事態を事前に察知できなかった諜報機関や、ハマスの侵入を許しただけでなく、作戦ミスで、20時間以上もガザ周辺地域に治安部隊が到達できなかった政府にも怒りを感じている。

筆者の知人は、大きな音楽フェスティバルは、ネゲブ地方でも十分開催できたはずなのに、あれほどガザに近いところで開催する許可を出した政府に大きな責任があると言っていた。

石のひとりごと

本当にユダヤ人が通らされる苦悩ははんぱない。選びの民とはいうが、それは、彼らの苦悩を通して、神がどういうお方であるのかを証するために選ばれているということのようなのである。

10月6日に起こったことは、本当に誰もが予想していないことだった。世界で最優秀とされるイスラエルの諜報機関や軍にはあえりえないことであった。聖書には、イスラエルが、油断しているところに敵が入り込んでくることが書かれている。その様子を今回、想像させられる。

それゆえ、人の子よ、預言してゴグに言え。神である主はこう仰せられる。わたしの民イスラエルが安心して住んでいるとき、実に、その日、あなたは奮い立つのだ。あなたは、北の果てのあなたの国から、多くの国々の民を率いて来る。彼らはみな馬に乗る者で、大集団、大軍勢だ。(エゼキエル書38:14-15)

これに続いて、彼らがこの危機を通る中で、世界に神である主を知らしめると書いてある。

あなたは、わたしの民イスラエルを攻めに上り、終わりの日に、あなたは地をおおう雲のようになる。ゴグよ。わたしはあなたに、わたしの地を攻めさせる。それは、わたしがあなたを使って諸国の民の目の前にわたしの聖なることを示し、彼らがわたしを知るためだ。(エゼキエル書38:16)

今これほどの苦難を通っている彼らを通して、世界に何が発信されるのだろうか。(この預言が今始まったと言っているのではない)

しかし、その達成のために、用いられているとはいえ、その苦しみはあまりにもはんぱない。主が、個々の人々の痛み苦しみと痛みを覚えてくださるように。何よりも、まだ生きている捕虜たちを家族の元に帰してくださるように。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。