ハマスと戦争120日目・イスラエル戦史上2番目の長さに:ハマス戦力2/3打倒か 2024.2.3

ガザのイスラエル軍 IDF

ハマスとの戦争120日目:ハマス戦闘員70-80%無力化か

ハンユニスを視察するガラント防衛省 GPO

ハマスとの戦闘が始まってから120日となった。イスラエルが直面した戦争の中では、独立戦争が20ヶ月と最長である。それ以外では、1982年の第一次レバノン戦争が116日なので、ハマスとの戦争は、これを超えたことになる。

なお、その次は、2006年の第二次レバノン戦争で34日、1973年のヨム・キプール戦争で19日、1967年の六日戦争が6日。

1)ハン・ユニスでの戦闘でハマス1万人無力化:ガザ他地域でも戦闘

イスラエル軍は、今も全く休みなく、ハン・ユニスへの攻撃を続けている。IDFによると、ハン・ユニスへの攻撃が始まってから、撲滅したハマス戦闘員の数が、1万人を超えたという。

それ以前に、1万人以上撲滅していたことや、負傷して動けなくなっている者も入れると、全ハマス戦闘員が3-4万人だったとすると(どう定義するかだがこの数字は、本当に武装している戦闘員のみの数字)、すでに70-80%を無力にした可能性がある。

新しい情報では、ガザにある数十のモスクが、ハマスやイスラム聖戦の基地として機能していたことを証明する文書を発見した。

ハマスが、宗教指導者を使って、人々をイスラエルとの戦闘に煽っていたことになる。ハン・ユニスをだいぶ抑えたとみられるイスラエル軍は、今、さらに南部のラファへも進軍していく様相にある。

また、地元メディアによると、イスラエル軍は、海軍の援軍を得るなどして、再びガザ全域での戦闘も行っているようである。こうなると、さすがに、ガザからのロケット攻撃のサイレンは、もうほとんど聞こえなくなっている。

www.timesofisrael.com/idf-says-battles-continue-across-gaza-conflict-now-longest-since-1948-independence-war/

*イスラエル兵の最善の心のケアは戦場へ戻ること!?

長い戦闘で、精神的ケアを必要とするイスラエル兵も当然出ている。ところが、そういう兵士たち3000人を調べたところ、82%は、最前線へ戻っていたことがわかった。メンタルヘルスの専門家によると、現場に戻った方が、心の病の長期化を防ぐ可能性が高いとのこと。さすがイスラエル人。

www.timesofisrael.com/idf-82-of-soldiers-treated-for-mental-health-since-oct-7-are-returning-to-duty/

2)戦後に向けて?ガザ国境に緩衝地帯をつくりつつあるイスラエル軍

IDF

ガザ国境の住民が、戦後にできるだけ不安なく帰宅できるようにするためか、イスラエル軍は、全長60キロに及ぶガザ地区との国境線に沿って、緩衝地帯を造る作業を行っていることが、メディアで報じられている。

緩衝地帯とは、建物や障害物がなく、当然、トンネルもなく、イスラエルへ入ろうとする危険因子を、十分遠くにいるうちに発見できるようにするためのエリアである。

緩衝地帯は、今のガザの領域内に設定され、その中に含まれる建造物はすべて破壊しているということである。

先月には、その一環の作業をしていた時の事故で、イスラエルの予備役兵21人が死亡することにもなっていた。

国際社会は、この緩衝地帯設立のために、イスラエルがガザの建物を破壊していることを問題視している。

www.ynetnews.com/article/bk6jhsq96

カイロで人質交渉まだ継続中:家族はガザ国境で人道支援物資搬入を阻止してデモ活動

ハンユニスの墓地 Jan. 17, 2024. (AP Photo/Mohammed Dahman)

しかし、まだシンワルはみつかっておらず、人質の情報もわかっていない。

イスラエル軍は、ガザの墓地を掘り返して、人質の遺体ではないかどうかを確認する作業すら行っていたという。なんとも悲惨な作業である。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/ex-idf-spokesman-israeli-military-dug-up-graves-in-gaza-to-search-for-hostages-bodies/

エジプトのカイロでは、現在、エジプトとカタール、アメリカを介して、イスラエル人人質の解放に向けての交渉が続けられている。時々、とんでもなく不条理な交換条件とかも情報も出てくるが、まだ確定のものはない。

今日からブリンケン国務長官が、イスラエル含め中東入りして、緊張の緩和に向けた外交努力を行うことになっている。

人質家族たち数十人は、すぐにも人質の解放を求めて、1週間以上前から、ガザとの国境付近で、人道支援物資の搬入を妨害するデモ活動を行なっている。

家族は、「ハマスが、人質を引き渡さないのに、イスラエルはハマスの言いなりに必要なものを引き渡すべきでない。」と訴えている。

家族たちは、明日から木曜にかけて、エルサレムに向けて、デモ行進を行い、最終的には、ネタニヤフ首相との会談に臨む予定。

www.timesofisrael.com/protesters-blocking-delivery-of-aid-to-gaza-plan-march-to-jerusalem

どうするガザ避難民:エジプト国境ラファへ押しやられる中で戦闘になるか

ガザでの戦闘は、ハンユニスからさらに南部のラファ方面へ向かおうとしているようだが、こうなると、ガザの避難民がどこへ行ったらいいのかということになる。

Rafah in the southern Gaza Strip on February 2, 2024 (SAID KHATIB / AFP)

ガザ南部には、北部から移動して、ハン・ユニスに至った避難民がいるが、またさらに南へ、エジプトとの国境のラファ方面へ逃げるしかなくなっている。

そこでこれから戦闘が始まろうとしているのである。国連は、イスラエルに難民を北部に移動させるよう言っているが、イスラエルにその動きはない。

今、ガザ住民200万人近くが、行き場を失い、UNRWAへの支援も停止して、人々は生きる道をすべて失おうとしている。エジプトは、ガザの避難民が、怒涛のようにエジプト側へ流れ込んで来るのではないかと懸念している。

以下はラファの様子。国連はラファは、「絶望が圧力鍋状態になっている」と警告している。これでは、ハマスに怒りをぶつけるガザ市民の声が出て来ても不思議はないだろう。

石のひとりごと

いろいろな要素がばらばらに進行していて、まさにカオス状態だ。ここからどうにかして、オーダーを取り戻すことが、果たして人間にできるのだろうか。

本当に先が見えてこない。だからこそ主の介入に期待する。

かつて、イスラエルのベン・グリオン初代首相は言った。「現実的であるためには、奇跡を信じなければならない。」

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。