トランプ大統領:サウジアラビアに米軍3000を派遣へ 2019.10.21

リアからの撤退を決めたトランプ大統領だが、米防衛省からの情報としてTimes of Israelが伝えたところによると、中東全域でみれば、14000にまで戦力を増強している。11日、ペンタゴン(米国防省)は、サウジアラビアに、米軍3000を増強すると発表した。

2基のパトリオット迎撃ミサイル、THAAD弾道ミサイル迎撃ミサイルシステム、2飛行戦闘部隊、1遠征部隊などがサウジアラビアに配備される。

これは、先月、サウジアラビアの油田が攻撃され、さらにその後、サウジ沖でイランのタンカーがミサイルによるものと思われる攻撃を受けて地域の緊張が急速に高まってきたからである。

サウジアラビアの油田攻撃については、イランは否定。イエメンでサウジと戦っているフーシ派(イラン背景)が、この油田を含めサウジの油田3分の1を破壊したと主張したが、サウジアラビアはじめ、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスは、イランによるものであると言っている。

www.timesofisrael.com/us-deploying-3000-more-troops-to-saudi-arabia-to-boost-air-defenses/

フーシ派はイランのバックアップで戦っているので、いずれにしても攻撃はイランということである。

トランプ大統領は、サウジアラビアは、対イランにおける大事な同盟国だというと同時に、貿易において、かなりのお得意様であると説明。

また、「よーく聞いてくださいよ。」といいつつ、「なんと、私の要請に応じ、サウジに駐留する米軍の費用は、全部サウジが負担してくれることになった。」と発表した。

www.reuters.com/video/2019/10/11/trump-says-saudi-arabia-will-pay-the-usf?videoId=611590123

<変化するサウジアラビア>

サウジアラビアは、厳格なイスラム主義国で知られてきたが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の登場で欧米化がすすんでいる。

女性に運転を認め、今回は、観光客を受け入れるビザを発行することを決めた。とはいえ、服装の規則始め、政治的会話も禁止、アルコール禁止などの規則はそのままである。

また男性と女性が同席することも最低限となっているが、今回、ようやく外国人夫婦に限りホテルで一緒に滞在をに認めたとのこと。普通の旅行とはだいぶイメージが違うようである。

しかし、BBCによると、サウジアラビアには、他に類をみない風景や遺跡が魅力だとのこと。

www.bbc.com/news/world-middle-east-50013068

エゼキエル38章では、シェバやドタンと表現されているのが、サウジアラビアの地域で、終末におけるイスラエルへの攻撃には加わっていない国であるとみられている。

<レバノンで大規模反政府デモ:ヒズボラ(イラン)台頭の可能性は?>

変化が続く中東だが、レバノンで、ベイルートなど全国の都市で、大規模な反政府デモが続いている。原因は、ワッツアップなどの通信関係で新たな課税が決められたことからである。

レバノン政府は、すぐにこの課税を撤回すると発表したが、デモは、広く反政権デモへと発展。群衆となり、「革命だ」と叫んでいる。デモに参加している市民たちは、日常生活がいっこうに楽にならないとして、政府に根本的な政治改革を求めているのである。

BBCによると、レバノンは、多額の借金を抱えており、このままだと、今年末には、借金が、GDPの150%にまでふくれががってしまうという。電気の供給も滞るようになっている。

ハリリ首相は、ただちに、政府役人の給与を半分にするなどの改革案を提示。政府には3日以内に合意するよう要請を出した。

www.bbc.com/news/world-middle-east-50118300

ところが、デモが発生するとまもなく、レバノンのキリスト教(マロン派)政党が、「今の政府は、この危機を解決できない。」として、連立から離脱すると発表した。

レバノン政府は、イスラム教シーア派、シーア派過激ヒズボラ、スンニ派、キリスト教と群雄割拠状態であるが、今は、大きくヒズボラの政党に牛耳られている。アウン大統領も親ヒズボラで知られている。

その中で、ハリリ首相は、スンニ派の首相として、これまで綱渡りを続けてきた。この状況の中、2017年、ハリリ首相は、個人的に友好関係にあるサウジアラビアを訪問した際、そこから辞任を表明したことがあった。

この時は、フランスの仲介で、ハリリ首相はレバノンに帰国。復帰して、今にいたるまで首相を続けていた。しかし、今回、大規模なデモを受けて、再び辞任をちらつかせているという情報もある。

レバノンが混乱する中、シリアに続いて、レバノンでもヒズボラ、つまりはイランがが台頭してくることがないか、懸念されるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。