ソビボル虐殺収容所からシェマーイスラエルのペンダント 2022.1.29

ソビボル跡から出てきたペンダント 写真:イスラエル考古学庁

国際ホロコースト記念日の日、イスラエルの考古学庁は、ポーランドにある虐殺収容所の一つソビボルで、シェマ・イスラエルと彫り込まれたペンダント3つを発見したと発表した。

ポーランドにある虐殺収容所で最も有名なのは、アウシュビッツだが、それ以前にも3つのガスによる虐殺収容所があった。それが、ソビボル(22万人)、トレブリンカ(87万人)、ベルゼック(50万人)である。数字はそれぞれの場所で虐殺されたと見られる人の数。

ソビボル発掘現場 CNN

この3箇所は、ユダヤ人たちをガス室で虐殺していたが、1943年末ぐらいまでに予定していた虐殺を終えると、全部破壊され土の下に、あとかたもなく、証拠隠滅されてしまったのであった。

そのため、考古学者が、発掘しながら、当時何があったのかの研究を続けている。

今回、ペンダントがみつかったのは、1942年から1943年にかけて稼働していたソビボル虐殺収容所であった。ここで22万人とも25万人とも言われるユダヤ人が殺害されたのである。

今回みつかった3つのペンダントは、一つはガス室に入るまえの脱衣所で、もう一つは別のガス室前脱衣所、もう一つは、埋葬場の近くでみつかった。

ペンダントは、一面に、ヘブライ語でシェマー・イスラエルが書かれており、2つは、シェマーの反対側に、十戒の石板を掲げるモーセの絵が描かれていた。一つはウクライナから、あと2つはポーランドとチェコスロバキアからのものであった。すべて手作りで、当時、東ヨーロッパで流行っていたデザインであった可能性がある。

www.timesofisrael.com/shema-yisrael-pendants-uncovered-in-polands-sobibor-death-camp/

シェマー・イスラエルは、聖書申命記6:4にあり、「イスラエルよ、主は私たちの神、主はただ一人である」というもので、ユダヤ人はこれを祈りの時に告白し、自分の神を常に覚えるのである。すべてを剥ぎ取られガス室に至るまで、神によりたのもうとしていた人々の存在がリアルにみえるようである。そこまでの状態になってもまだ、頼れるのはこの神だったのである。

シェマーについては、ポナリーの虐殺の穴で、ユダヤ人たちが並ばされて銃殺される直前まで、「シェマー」と叫んでいた人がいたという証言もある。神の思いは本当に全部はわからない。それでも、私の神はこの神しかいない。ユダヤ人と、彼らの神との関係は、本当に深い。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。