コロナ対策強化:「ワクチン拒否者は国全体を苦しめる」ベネット首相が国民に訴え 2021.7.23

国民に訴えるベネット首相 GPO

ファイザーワクチンのデルタ株感染予防効果39%?

イスラエルでは、感染者数が連日1000人を超え、重症者もじわり増えて75人。死者も毎日2-3人となっている。こうした中、ワクチンを終えているのに感染して重症になる人が特に高齢者の間で増えている。

保健省からは、イスラエルでほとんどの人が接種をうけているファイザーのワクチンが、デルタ株感染を防ぐ率は39%にまで下がったとの結果が出された。発症を食い止める効果も41%と低い値になっている。しかし、イギリスのデータでは、同じワクチンで、発症率を食い止める効果は88%との数字もある。

またイスラエルで出された不吉な数字については、特に分母の数が発症した高齢者の数が中心となっており、無症状の若年層の数が十分加味されていないとして、その統計方法に問題があるとの指摘がある。実際には、感染予防効果はそこまで落ちていないとの論議もある。

www.timesofisrael.com/israeli-uk-data-offer-mixed-signals-on-vaccines-potency-against-delta-strain/

いずれにしても、今できることといえば、ワクチンの接種と、国民ひとりひとりが危機感を持って、感染予防を行っていくことだけである。すでに、屋内でのマスクの着用義務を復活させたり、空港での水際対策を強化しているが、ベネット首相は、22日、コロナ閣議を開催。以下のように対策を強化することを決めた。

ワクチンしないと生活不自由へ:22日コロナ閣議

22日コロナ閣議内容ベネット首相は、できるだけロックダウンは避ける方針である。このため、ワクチン接種をしないと社会生活が困難になり、かつ、経済的にも負担になる形になっている。

①イベントは100人までは、屋内外で通常開催許可。100人以上の場合は、12歳以上で、グリーンパス(ワクチン完了者と陰性証明)を提示する場合のみ、入場を許可する。

②人々が集まる施設、レストラン、イベントなどでは、グリーンパスシステムを適応する。パスがない人は入場できない。結婚式などの重要なイベントでは、子供達にも適応する“ハッピーパス”を発行する。パスがないと入場できない。①②は国会を通過すれば、29日から開始する。

③8月7日からPCR検査は、個人負担とする。

④赤信号国(原則渡航禁止)にイギリス、グルジア、キプロス、トルコを加える。国会通過後30日から。

⑤ワクチン接種を完了している人も、帰国時にPCR検査を受け、陰性の結果が出るまで隔離する。ワクチン接種をしていない人は、帰国時にPCR検査を行い、その後7日間隔離する。7日目にPCR検査をして陰性であれば、隔離から解かれる。

ベネット首相から国民へ説明:ワクチン拒否者は国を苦しめる

ベネット首相は、このコロナ閣議の後、国民へのメッセージを発した。

「みなさん。私たちは、今重要なところに立っています。これから先、私たちの国がどうなっているのかが決まるという岐路にたっているのです。自由で開かれた社会か、またもやのロックダウンかです。目標は明らかです。感染予防対策を行い、日常生活を維持して、イスラエルの経済を守り、子供たち、も学校へ生き続けるということです。これは可能です。

第一波では6430人を失いました。200日ロックダウンして、経済が大打撃を受け、子供たちは1学期を失いました。

今、全世界がデルタ株のパンデミックにみまわれています。多くの国が赤信号です。オリンピックでさえ、史上初の無観客です。デルタ株の感染力は前のコロナの1000倍です。これを抑えるために、政府は3段階の対策を考えています。

①ワクチン接種、②ワクチンで高齢者を守ること、③マスクによる予防、です。特に第一のワクチンが大事です。12歳以上のすべての健康な国民には、ワクチンをうけていただきたいのです。ワクチンに行ってください。ワクチンにどうぞ行ってください。

世界には多くの国で、国民が求めてもワクチンを提供できない国がたくさんあります。しかし、イスラエル政府は、ワクチンに大量の資金を投資しました。国民すべてがワクチンを受けられるようにするためです。

それなのに、イスラエルの何百万人もの人が、ワクチンを拒否しています。12歳以上の全ての人に十分なワクチンがあるのにに、30歳以下の60万人以上が、まだワクチンの接種に来ていません。意見の違いは認めます。しかし、時に、議論をやめなければならない時もあります。我々の命が関わってくる時です。

科学が証明しています。ワクチンには効果があります。若い人にはほぼ100%、安全で効果があるという証明もあります。

国民のみなさん。それでもワクチンを拒否するする人は、自分自身と周囲に人々の健康をあやうくするだけでなく、イスラエル人全体の自由をおぼやかすことになります。私たち皆がワクチンを受ければ、日常生活を維持できます。

もし100万人がワクチンをうけなければ、800万人も自宅に籠ることになります。だから、ワクチンを拒否する人は、私たち皆を傷つけることになるのです。

ですから、閣議は、8月からはワクチンをしていない人は映画にいくことも、シナゴーグに行くこともできなくなります。また、ワクチンを拒否する人のために、ワクチンをしている人の税金を使って検査を提供することはできません。(検査有料)

次に高齢者政策です。イスラエルには、今12万人の高齢者が、高度な感染予防策の中で、高齢者ホームや病院で生活しています。これは詩篇79:1に基づいています。自立生活をしている人たちは自己管理に努めてください。孫に会うときは外で、マスク着用でお願いします。

それからマスク。これはみなさんしだいということです。マスクは科学的にも効果が証明されています。98%の防御ができます。屋内ではマスクを義務とします。これは要請ではなく、法的な義務にします。

まとめると、ワクチンを受ける。高齢者を守る。マスクを着用する。これでデルタ株を制覇できます。来年、私たちは経済のジャンプを期待できます、この危機を脱出するのです。来年は良き年になるでしょう。」

www.timesofisrael.com/bennett-vaccine-refusers-are-endangering-the-entire-country/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。