エルサレム郊外で17歳ナイフテロ:1人死亡 2018.7.27

26日午後9時、エルサレムとラマラに近いイスラエル人入植地アダム(人口5000人)で、イスラエル人3人が、パレスチナ人にナイフで刺されるというテロが発生した。

このうち、ヨタム・オバディアさん(31)が、何度も刺されて死亡。もう1人(58)も上半身を刺されて中等度の負傷。3人目のアサフ・ラビッドさん(41)は、これを見て駆けつけ、銃を出そうとして右肩をさされたが、車に残してきた銃を取り、テロリストを3回撃って射殺した。

アサフさんによると、テロリストは、血まみれになりながら、銃をとりに走ったアサフさんを殺そうとして追いかけてきたという。自分が死ぬか相手が死ぬかだと思ったと語っている。

このテロが発生したとき、不審な車が走り去るのが目撃されたため、共犯者がいる可能性があるとして、イスラエルの治安部隊はアダムの家屋一軒一軒を回って捜査した。今後も、部隊の数を増強して、西岸地区への捜索に入るとみられる。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5317912,00.html

死亡したオバディアさんには、妻と2人の息子(2歳と7ヶ月)がいた。地域のセキュリティに、家族ぐるみで貢献していたという。

事件は、トゥービーシャバットとよばれるユダヤ人のバレンタインデーの夜であった。ヨタムさんは、妻のタルさんに愛を告白するサプライズ・ディナーを計画しており、そのために用意していたものを両親の家に取りに行く道中で、殺されていた。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5318010,00.html

またオバディアさんは、父のアブラハム・オバディアさん(66)にとっては、一人息子だった。アブラハムさんは、近年中に、両親と、3人の兄弟を失ったという。一人息子の死を聞いた時、「次は私だと思っていた」と完全なショック状態だという。

www.timesofisrael.com/settlement-in-shock-after-father-of-two-yotam-ovadia-killed-in-terror-attack/

本日行われた葬儀では、小さな息子が「お父さん、お父さん」と泣いていたという。

www.timesofisrael.com/eulogizing-terror-victim-yotam-ovadia-at-funeral-ministers-lay-blame-on-pa/

<テロリストは17歳パレスチナ人>

事件を起こし射殺されたテロリストは、エルサレム北部のパレスチナ人地区、コバル在住のモハンマド・タリーク・ユーセフ(17)だった。モハンマドは、アダムのフェンスを乗り越えて侵入し、公園近くでテロ行為に及んだ。

治安部隊はただちにコバルにあるモハンマドの実家に捜査に入り、これまでにパレスチナ人4人を連行している。家族親族のイスラエルへの入国許可は停止された。また、家屋を取り壊すための測定も実施された。

この時150人ほどが、治安部隊に火炎瓶をなげるなどして衝突があったが、負傷者はなかった。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/249639

<残る疑惑>

この事件は、ちょうど1年前、パレスチナ人がユダヤ人入植地ハラミシュに侵入し、安息日を祝っていたサロモン一家のうち3人を惨殺した事件に,犯行の経緯がよく似ているため、治安当局は関連がないかを調査している。

またモハンマドは、犯行に及ぶ前日、フェイスブックに、「イスラエル軍のガザへの対応に反対する。革命の時が来た。」などと、若干、17歳にしては深すぎるのではないかとも思える内容を投稿していることから、背景に関しても精査されることになる。

<イスラエルの対処:アダムにイスラエル人家屋400件増築へ>

リーバーマン防衛相は、こうしたテロへの最善の対策は、西岸地区ににもっとイスラエル人の家を建てることだとして、今回被害にあったアダムに、400軒のイスラエル人家屋建設を許可するよう指示した。

なお、この400軒は、すでに許可申請が出されているものであり、このうち150軒がすでに建設中である。今回、残り250軒の建設許可が出たということである。アダムには、今1000軒の家があるので、1.5倍の広さになるということである。

www.timesofisrael.com/liberman-advances-plans-for-400-new-homes-in-terror-attack-settlement/

<石のひとりごと>

一つの若い家庭がまた破壊された。この若い奥さんと小さな2人の息子のところに、ヨタムさんはもう二度と戻ってくることはない。こんなあまりにも唐突な別れに、この家族はいったいどう対応していくのだろうか・・。

イスラエルでは、残念ながら、こうしたテロは、今にはじまったことではない。また・・ということであり、昨日のこのテロも、明日までにはもう報じられなくなるだろう。

記事を書いた私自身も、申し訳ないことに、昨年のテロ事件はもうすっかり、あとかたもなく忘れてしまっていた。昨年の記事を見ると、本当に多くのイスラエル人がテロの犠牲になっている。逆から見れば、パレスチナ人の若者もまた多くが帰らぬ人になったということである。

今回テロリストとして名を挙げられたモハンマドは、写真をみると、かなりの美少年。生まれる場所さえちがっていたら、こんな人生の終わりかたはしなかったであろう。

だれが一番笑うのか。サタンであろう。憎むべきはサタンなり。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。