エルサレムのバス停2箇所で爆弾テロ・1人死亡22人負傷:爆弾テロ再来懸念も 2022.11.24

Israeli security forces gather in Jerusalem following an explosion at a bus stop which wounded at least seven people, two of them seriously, on November 23, 2022. (Photo by Menahem KAHANA / AFP)

早朝バス停での爆弾テロ

23日朝7時、ラッシュアワーの時間帯に、エルサレムの入り口付近の2つのバス停に仕掛けられた爆弾が爆発するというテロ事件が発生した。これにより、カナダ出身のイシバ学生、アリエ・シューパックさん(16)が死亡。22人が負傷。このうち1人が重傷。2人が重篤となっている。

以下はBBCによる報道

各社メディアが伝えているところによると、朝7時、国道1号線、エルサレム市への入り口付近にあるギブアット・サウル近くのバス停で大きな爆発が発生。18人が負傷し、近くのシャアレイ・ツェデック病院に搬送された。そのうちの1人がアリエさんだった。

その30分後の7時半、続いてエルサレム北部ラモット・ジャンクションのバス停で同様の爆発が発生。5人が負傷した。スコーパス山ヘブライ大学病院に搬送されたが全員軽傷とのこと。

いずれのケースも、爆弾に多くの釘が混入してあり、より多くの人々を殺傷しようとしていたことがわかる。また、人が多く集まっていることを確認してスイッチを入れる遠隔操作が可能な高度な爆弾だった。

これが、個人的発作的なテロではなく、少なくとも2人がかかわる組織的計画的なものと考えられることから、かつての爆弾テロの再来ではないかと国内で緊張が高まっている。警察は、一回の爆発後、一時エルサレムからの出入りに使われる1号線を遮断。エルサレム市内、特に混雑するエリアに、警官を増強配備し、警戒体制をあげている。全国でも同様の警戒体制になっているとのこと。

www.timesofisrael.com/police-bolster-forces-hunt-for-terror-cell-behind-deadly-jerusalem-bombings/

現場からの証言:子供たちが登校中でパニック

朝の7時と投稿時刻であったことから、被害にあった多くは登校途上にあった子どもたちやティーンエイジャーだった。ラモットでは、バス停に向かっていた子どもたちが、爆発を目撃していた。爆発は、バス67番の近くで発生し、釘が多数飛び出してバスの車体や窓ガラスに穴が多数みられる。運転手のガバイさんはただちに扉をあけ、乗客が逃げられるようにしていた。現場は、悲鳴と子供の泣き叫びでパニックになっていたという。

Ynetによると、爆発の直前に男が乗客の写真を撮ってから去っていくのを目撃したティーンエイジャーがいた。その後この少年も重傷を負った。爆発の衝撃が大きく、付近の家でもその衝撃が感じられたとのこと。登校前だった子供たちは外出しなかった。

www.timesofisrael.com/we-saw-people-running-children-crying-witnesses-describe-jlem-attack-aftermath/

アリエ・シューペックさん(16)葬儀

亡くなったアリエ・シューペックさん(16)

最初の爆破テロが発生した、エルサレムのギブアット・サウル、隣接するハル・ノフは、超正統派ユダヤ教徒たちが多く住むエリアである。今回犠牲になったアリエさんは、カナダ国籍だが、イスラエル国籍も持ち、1年前からこの地域にあるイシバ(ユダヤ教神学校)の学生として学んでいた。

事件当日の朝、アリエさんは、気分が芳しくなかったので、休むかどうか迷って、最終的に行くことにしたとのこと。アリエさんは、怒ることを知らないような穏やかな少年だったという。

エルサレムで行われたアリエさんの葬儀には、家族と数百人の超正統派たちが集まっていた。アリエさんのイシバの校長、ラビ・シュレイバルは、1年前にもアリエさんのクラスメートの葬儀を行ったとのこと(原因は不明)で、まさか2人めを見送るとは思わなかったと語った。

また「ユダヤ教では、死ぬ直前に悔い改めたら、それは100%の悔い改めと認められる。しかし、彼にはその時間すらないまま、突然行ってしまった。」と語った。

アリエさんの父親モシェは、「主は与え。主は取られる。息子は私たちに重要なことを教えている。彼が家族と過ごした時間すべてに感謝する。」と述べ、葬儀にきた人に感謝を語った。

警察の捜査開始:犯行声明はなし・ハマスは称賛

今回のテロが、どの組織によるのかの発表はない。ハマスは事件を称賛する声明を出したが、ハマスの指示によって実施されたものとはまだ不明である。

近年、パレスチナ人の間では、パレスチナ自治政府はじめ、既存団体に対する不満が、特に若者の間に広がっている。その一つの動きが、ここ数ヶ月の間に明るみに出てきた、ライオンズデンとよばれるムーブメントである。

このムーブメントは、汚職にまみれ、結局国を立ち上げられていない、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら、古くからの指導者に反発を表明している。しかし、自治政府を攻撃するのではなく、“すべての悪の根源”であるイスラエルにテロをしかけることで、(イスラエルとある程度の協力がある)自治政府を追い詰めようとしているとも言われている。

先月、イスラエル軍とパレスチナ自治政府は、これを抑え込んだと発表した。しかし、ライオンズデンは、物理的な組織ではなく、ムーブメントなので、ISの時のように、指導者がいなくなっても決して終わらないという性質のものである。

この2件の爆破テロがその影響かどうかは不明だが、これからイスラエルがどう動くかで、事態がエスカレートする可能性もあるので、今繊細な状況にあるといえる。

ラピード首相、ガンツ防衛相がテロリスト逮捕と治安の回復を宣言した他、アメリカを訪問中だった、イスラエル軍のコハビ参謀総長が、予定を1日繰り上げて、木曜朝に帰国した。右派をひいての新政権設立を目前とするネタニヤフ次期首相(予定)は、病院にいる負傷者を訪問。治安の回復を約束した。

www.timesofisrael.com/police-bolster-forces-hunt-for-terror-cell-behind-deadly-jerusalem-bombings/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。