神殿の丘で衝突エスカレート:ヨルダンとトルコが警告 2022.4.18

Palestinian demonstrators clash with Israeli police at Jerusalem's Al-Aqsa mosque compound on April 15, 2022. (Photo by AHMAD GHARABLI / AFP)

ラマダンを前に、一連のテロ事件で14人の犠牲者を出したイスラエル。高い警戒体制で、ラマダンを迎え、最初の金曜日4月8日はなんとか平和に終わったため、イスラエルは西岸地区とガザからの入国規制を緩和していた。

神殿の丘で子羊犠牲計画の右派20人逮捕

しかし、その翌週14日、エルサレムと西岸地区入植地の過激右派ユダヤ教徒のグループ“神殿の丘に戻る”が、過越の祭りの前に神殿の丘で、子羊の犠牲捧げようとしているとの情報が出る。

グループは神殿の丘に第3神殿を建てることを目指しているグループである。ハマスは、どんなことをしてでも阻止するとの声明を出した。

正式なイスラエルのユダヤ教ラビ局は、神殿の丘で犠牲を捧げることは認めていない。ヘルツォグ大統領も、13日のイフタルの食事にイスラムの指導者を招いて、イスラエルが、ステータス・クオ(現状維持)を守るとの約束も表明していたのであった。

警察は、捜査を進め、グループの1人の自宅で、実際に子羊を発見。20人を逮捕した。

www.timesofisrael.com/four-extremist-jews-arrested-for-planning-animal-sacrifice-atop-temple-mount/

神殿の丘で投石でイスラエル治安部隊がアルアクサモスク入り:パレスチナ人400人逮捕・150人負傷

しかし、その翌日の15日、過越入りの朝、4時ごろ、若いパレスチナ人たちが、パレスチナの旗やハマスの緑の旗を振りながら神殿の丘に行進し、イスラエルの治安部隊に石を投げつけるなどしてきた。さらには、下の嘆きの壁にむかって石を投げつける者もいた。アルアクサモスクの中から、バリケードを張って、その後ろから治安部隊に石を投げる者もいた。

これにより、祈りに来ていたイスラムの人々に危害が及び、158人が負傷。東エルサレムのマハセッド病院に搬送されたとのこと。その後、イスラエルの警察は、アルアクサモスクに入り、パレスチナ人400人を逮捕した。モスクにイスラエル人が入ることは、いわばタブーだが、警察は、イスラムの礼拝を通常通り継続するためと説明している。

しかし、イスラエル警察が、アルアクサモスクに、しかもラマダン中に入るということは、イスラム教徒にとっては決して看過できないことである。

さらに、イスラエルの警察が、神殿の丘で、パレスチナ人に暴力を振るう様子がSNSで拡散されたことから、ハマスは、イスラエルが、アルアクサに襲いかかってきたというような声明を出した。以前のように、このままガザとの戦争に発展する可能性も懸念されている。

実際、17日朝、ガザ周辺では、サイレンがなる事態となったが、これは間違いであったとのこと。しかし、緊張が高まっていることは間違いない。

旧市街周辺でイスラエルのバス投石襲撃で9人逮捕・17人負傷

イスラエル警察が、アルアクサモスクへ入った後の17日朝、数百人のパレスチナ人が、ユダヤ人が旧市街内の嘆きの壁などを訪問するのを妨害しようとして、旧市街東側に集まり、そこを通過してユダヤ地区の嘆きの壁へ向かうエゲッドの公共バスに投石を始めた。

これにより、窓が破壊され、13歳の少女を含む複数の乗客が負傷した。合計10台のバスが被害にあっている。

この日、アルアクサモスクでは、パレスチナ人の若者たちが、イスラム教徒以外が、ハラムアッシャリフ(神殿の丘)に入ってきた場合に備えて、石などをモスク内に蓄積していたが、最悪なことにユダヤ人数人が神殿の丘を歩いてを発見。投石し、警察と衝突となった。

この時に警察との衝突で、パレスチナ側赤十字によると、パレスチナ人17人が負傷したとのこと。

ベネット首相は、17日、神殿の丘周辺で、治安維持を図っている部隊に対し、暴徒にはあらゆる手をつくしてよいとして、治安回復に全力を挙げるよう、支持した。しかし、こうなると武器を使うことも自由にということでもあるので、万が一、パレスチナ側に死者が出ると、状況はさらにエスカレートすることにもなりかねない。

ヨルダンとトルコ首脳が警告

神殿の丘での混乱を受けて、ヨルダンのアブダラ2世国王と、トルコのエルドアン大統領は17日、イスラエルを非難する声明を出した。アブダラ国王は、イスラエルが、ラマダンの緊張の中で、ユダヤ人を神殿の丘へ行くことを許可したことについて、現状維持を守らなかったと非難した。

エルドアン大統領は、イスラエルが、アルアクサモスクでの礼拝を妨害して、衝突を扇動していると非難した。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。