エスパー米国防長官解任であわてる?イスラエル 2020.11.14

ミレー米参謀総長とオンライン会談するコハビ参謀総長 出展:IDF

アメリカ大統領選挙後の混乱が続いているが、まだトランプ大統領が大統領であることには変わりはない。

トランプ大統領は、10日、米軍のトップ、マーク・エスパー国防長官を解雇し、次に国家テロ対策センターのクリスファー・ミラー長官が、国防長官代理を務めると発表した。

解任の理由は明らかではないが、トランプ大統領とエスパー国務長官は、BLMでのデモに軍を投入することに反対、NATO(北大西洋機構)に関しても、トランプ大統領と、意見が対立していたという。なお、トランプ大統領が、国務長官を解任するのはこれで2回目である。

www.bbc.com/japanese/54882911

エスパー氏が解任されると、続いてエスパー氏の首席補佐官や、高官ら3人も離任した。後任には、トランプ大統領に忠実な人々が着任している。

退任わずか2ヶ月に迫ったところでのこの動きは暴挙とも見え、アメリカでは、トランプ大統領が、残りの任期2ヶ月の間に、どんな暴挙に出るかわからないとの懸念も広がっている。

www.cnn.co.jp/usa/35162310.html

<コハビイスラエル軍参謀総長:マーク・ミレー米参謀総長と会談>

米軍のトップがこのように解任され、指揮に空白が生まれるということは、米軍に頼っているイスラエルとしても穏やかなことではない。

イスラエル軍のコハビ参謀総長は、クリスファー・ミラー新国防長官が就任した翌日の13日、オンラインで、米軍で同じ立場にあるマーク・ミレー参謀総長と会談中東情勢について話しあった。

クリストファーミラー国防長官が新しく就任する式典において、ミレー総長は、私たち米軍は、ユニークな存在だ。一人の指導者に誓いをたてるわけではない。」と、意味ありげなコメントを出していたとのこと。

www.timesofisrael.com/israeli-us-military-chiefs-speak-after-trump-fires-top-pentagon-officials/

<イスラエル首脳:選挙後24時間後にバイデン候補に挨拶の電話>

トランプ大統領が失脚するということは、イスラエルにとっては、大きな方向転換を余儀なくされる可能性を意味する。

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領とは相当懇意であったことから、ネタニヤフ首相と、リブリン大統領が、勝利宣言を出したバイデン候補に祝辞を送ったのは、バイデン氏の勝利が見えてきてから24時間近くたってからであった。

ネタニヤフ首相は、バイデン氏への祝辞とともに、これまでのトランプ大統領のイスラエルへの好意的な政策を具体的にあげて感謝を付け加えた。

ネタニヤフ首相は、文字通り、トランプ政権に文字通り寄りかかっていたようにみえていた。UAEとの国交正正常化にあたり、アメリカがF35をUAE販売することを黙認するという、国防に関わる重要事項にいたるまで、トランプ大統領との密会的な交渉ですべてと決めていた。

この件については、次期首相に決まっているガンツ氏は、蚊帳の外であった。当然、ガンツ氏はこれを快く思っていない。ガンツ防衛相は、ネタニヤフ首相より数時間前に、バイデン氏に祝辞を送っている。

イスラエルでは、今、トランプ大統領という後ろ盾を失ったネタニヤフ首相の立場があやうくなるのではないかとの憶測から、ネタニヤフ首相が、4回目総選挙を言い出すのではないかと予想する記事も出ている。

<石のひとりごと>

これから、アメリカはイランとの核合意について、どういう動きをするのか。湾岸諸国が、イスラエルとの国交正常化を続けていくのかどうか。中東でアメリカはどんな動きをするのか。

ネタニヤフ首相がトランプ大統領の敗北するという場合を予測していなかったとは思えないが、これからの舵取りをどうしていくのか、主の導きの中で、イスラエルを導いていくようにと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。