ウクライナからユダヤ人孤児90人他移民者イスラエルに到着:避難民受け入れに課題も 2022.3.7

Israeli Prime Minister Naftali Bennett welcomes a group of orphans from the Alumim orphanage in the Ukrainian city of Zhytomyr, on arrival to Israel at Ben Gurion Airport, Sunday, March 6, 2022.(AP Photo/Maya Alleruzzo, Pool)

ウクライナからユダヤ人孤児ら移住者到着

ウクライナ国内の様子が日に日に悪化する中、ウクライナから出国避難してくる難民は、すでに150万人を超え、第二次世界大戦以来の速さで難民が発生している。

イスラエルも、ウクライナから10万人のユダヤ人移民を受け入れる準備をすすめており、ウクライナ国境では、ユダヤ機関や、ICFJ(国際ユダヤ・クリスチャンフェローシップ)が複数の国境で、イスラエルへの移住センターを開設。イスラエル行きを希望するユダヤ人たちの手続きが急がれている。

移住コールセンターで働くボランティアは40人で、これまでに移住希望との問い合わせは1万件。このうち5000件は、今すぐにも移住を希望している。

www.timesofisrael.com/in-moldova-ukrainian-jews-anxiously-wait-out-war-in-synagogues-and-jewish-centers/

こうした中、イスラエルでは6日、ルーマニア経由で、90人の孤児(2歳から12歳)がベングリオン空港に到着し、ベネット首相と、タマル・シャタ移住相に迎えられた。この日、ウクライナ隣接3カ国から約400人(メディアによっては300人)が到着している。この人々は、ユダヤ機関を通過しているので、全員ユダヤ人であるとみられる。

www.timesofisrael.com/90-jewish-orphans-who-fled-ukraine-greeted-by-bennett-ministers-at-airport/

イスラエル政府は、ウクライナから移住してくる人々に、一時金を支給している。個人の場合は、6000シェケル(約23万円)、夫婦は、11000シェケル(約40万円)、家族は15000シェケル(約57万円)を一回だけ支給する。

これは、通常の移住において、最初の6ヶ月の間に支給される、個人1万9000シェケル(72万円)、家族3万6000シェケル(136万円)に加えて支給されるものである。この形で、イスラエルは、10万人のウクライナからのユダヤ人を受け入れる準備を行っている。

www.timesofisrael.com/ukrainian-immigrants-to-israel-to-be-recognized-as-refugees-receive-financial-help/

移住者には子供が多いことから、まもなく2000人のウクライナ育ちの子供たちを、学校システムに受け入れることになるとのこと。しかし、ヘブライ語ができないと思われるので、どうなることか。これについては、教育省が動き始めている。

非ユダヤ難民の課題

アエレット・シャキード氏
Knesst

しかし、大きな課題が持ち上がっている。シャキード内務省によると、ロシア軍のウクライナ侵攻から10日間の間に、ウクライナからイスラエルに到着した人は2034人だが、この中で、イスラエルに移住できる資格を持つ人は、わずか10%の200人ほどだった。

シャキード内務相によると、今のペースで行くと、今月中に、1万5000人が到着するが、このままでは、ユダヤ人でない人が増えてしまうことになる。

内務省によると、イスラエルには、今すでに2万6000人のウクライナ人違法滞在者がいて手を焼いているという。すぐにも何か対処を考えなければとシャキード氏。

ウクライナ人でユダヤ人だと自覚する人は4万3300人。帰還法で、イスラエルへ移住できるとされるユダヤ人(両親のいずれかがユダヤ人か、祖父母のうちいずれかがユダヤ人)は20万人である。シャキード内務相は、ウクライナでの緊急事態を受けて、このユダヤ人の定義を若干緩和したとのことであった。

今のところ、イスラエルは、非ユダヤ人で、イスラエルに移住できる見込みがない人は、入国時に1万シェケル(約40万円)のデポジットを払うことしているが、当然ながら、国内からも非人道的だとの批判もある。

シャキード内務相は、イスラエルはウクライナとは地続きでないのに、ウクライナ移民を受け入れている。これは世界でもイスラエルだけだと、反論しつつ、頭を抱えているもよう。

www.timesofisrael.com/israel-expecting-massive-influx-of-ukrainian-refugees-struggles-to-form-policy/

3月7日ウクライナ情勢:欧米はウクライナ亡命政府の可能性も検討か

ウクライナでは、難民が150万を超えたが、総人口は、4400万人。まだほとんどは、戦時下にあるウクライナにいる。3回(3回目は今日)の停戦交渉において、マリウポリなどの都市において、難民のための避難回廊とそのための一時停戦で合意はするのだが、これまで2回の試みは、いずれも失敗に終わり、難民は避難できていない。

ロシア軍の攻撃は、住宅地に及んでいるほか、避難する市民にまで攻撃の標的となっている。ゼレンスキー大統領は、NATOに、ウクライナ上空を飛行禁止区域にするよう要請したが、そうなると欧米とロシアが直接の戦闘に入って、第三次世界大戦のようになってしまうため、この要望には応じられていない。

ゼレンスキー大統領は、欧米に対し、戦闘機の供給など、さらなる軍事支援を要請。アメリカはポーランド経由で、ウクライナに戦闘機を供与する検討を始めている。

アメリカの戦闘機がウクライナに搬送されるということではない。ポーランドに今あるロシア型の戦闘機をウクライナにまわし、アメリカはポーランドに戦闘機を供与するというしくみである。しかし、これについては、ポーランドが難色を示している他、ロシアが警告を発するなど、まだ決定ではない。

首都キエフ周辺では、じわじわとロシア軍が迫っている。今は南部都市ヘルソンがロシア軍に制覇された他、マリウポリでも封鎖されているとのこと。

7日、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が、オデッサに砲撃を向けていると警告を発した。ロシア軍は、チェルノブイリと、サポロジエ原子力発電所を制覇し、今もう1箇所への攻撃を開始しているとのニュースが入っている。

原子力関係への攻撃は、特に世界を震撼させているが、プーチン大統領は、核施設への攻撃はウクライナが仕掛けているのであるから、それを防ぐためにロシア軍が制覇していると言っている。

こうした中、ロシアに対し、いまだかつてない規模の世界中からの経済制裁が行われているのだが、文化的にもボリショイ劇場が反対を訴えている他、ネットフリックス、TIKTOKがロシアでのサービスを停止すると発表。アメリカは、ロシアからの原油輸入を禁止する検討すらはじめている。

それでもプーチン大統領は、ウクライナに対する当初の要求をいっさい変えていない。

今日になり、欧米は、ゼレンスキー大統領がウクライナから出て、亡命政府になる可能性を検討し始めているとのニュースが出始めている。

www.cnn.co.jp/world/35184532.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。