イラン情勢その後 2018.7.11

イランでは、アメリカが核合意から離脱し、8月から徐々にイランへの経済制裁を再開し、11月からはいよいよイランからの原油の輸出に制裁ををはじめると発表してからすでに経済への大きな打撃が始まっている。

国内では反体制のデモや、労働者のストも頻発しているが、これらは今の所、武力で鎮圧されている。

イランは、2015年の核合意ー包括的共同行動計画(JCPOA)を、維持するためには、アメリカの経済制裁による経済の打撃をヨーロッパに補うよう要求している。もしそれが実現しないなら、イランも合意から離脱する、つまり、イランは核開発を再開すると脅迫している。

2015年にイランとJCPOA核合意に至ったのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシアの6カ国である。アメリカ以外の5カ国は、イランとの合意が崩壊しないよう、打開案をイランに提示したが、イランのロウハニ大統領はこれを不十分だと受理しなかった。

フランスのマクロン大統領は、ヨーロッパだけで、11月までに、イランが要請するような経済の補填は難しいとの見解を述べ、イランに対し、(合意を離脱するといった)脅しはやめるべきだと逆に釘をさした。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5305096,00.html

今後のイランの出方に関する見通しについて、イスラエル国家治安研究所(INSS)の所長で元イスラエル軍諜報部長官のアモス・ヤディン氏の予想は以下のとおりである。

8月から始まるトランプ大統領の経済制裁が、イランへの圧力となって功を奏した場合、好ましい結果とそうでない結果が予想される。

好ましい結果は、①イランが、さらに確実な核放棄にむけた合意内容への変更に応じる。②今のイスラム政権が倒れ、民主的な政権に交代する。

好ましくない結果は、③アメリカの経済制裁耐えながら、アメリカ抜き5カ国と現在の合意を維持してトランプ大統領の任期が終わるのを待つ。④今の核合意の期限は10−15年なので、そこまでただただ耐えて、再びウラン等の濃縮を再開する。

最悪のパターンは、⑤イランが合意から離脱し、ウランの濃縮を強行的に再開する。ヤディン氏は、この最悪の可能性は5%以下だとしながらも、決して否定できないと警告する。

今後、イランがどのように出てくるのか。中東のいかなるエキスパートも予想できないようである。

<石のひとりごと:現実味おびてくるエゼキエル38章(聖書)>

エゼキエル38章には平和に住んでいるイスラエルに、ペルシャ(イラン)を含む多くの国々を従えて、北の果ての国(ゴグ)から大軍勢が攻めのぼってくることが預言されている。エゼキエル書はこの時、イスラエルに大きな地震が起こると書いている。

イスラエルは、今、南北に危機をかかえながらも、市民生活においては、建国以来、おそらく最も平和で繁栄した時をむかえている。

そのイスラエルが今一番、神経をとがらせているのが北部情勢で、その中でも、最も得体のしれない動きをしているのが、北の果ての国ロシアである。そのロシアは、シリアとイラン(ペルシャ)に大きな影響力を持ち始めている。

北の果ての国ロシアが、諸国を従えてイスラエルに攻め入る形や、イスラエルに大きな地震が発生する可能性まで重なって、いよいよエゼキエル38章が現実味を帯びてきているようである。まだ読んだことのない人はぜひ。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。