イランとのサイバー戦争? :イスラエル国内でも被害連発 2021.11.1

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ガソリンスタンドへのハッキングはイスラエルとアメリカによるとイラン

イランとイスラエルの間では、水面下ですでに戦争状態にある。その大きな部分がサイバー戦争である。今週発生した、イラン全土のガソリンスタンドへのサイバー攻撃について、イラン政府高官は、まだ調査中として断定はしないものの、おそらくイスラエルとアメリカによるものと述べた。

イランのライシ大統領は、イスラエルとアメリカは、イラン市民の怒りから混乱を誘発しようとしていると述べた。実際のところ、今回のサイバー攻撃がイスラエルではなく、イラン国内の反政府勢力によるものとの可能性は否定できないとのこと。

しかし、イランでは、2010年に、核プログラムがサイバー攻撃を受け、ウランを濃縮する遠心分離機の一連が、故障したことがあった。この時の攻撃は、イスラエルとアメリカが開発したStuxnet ウイルスによるものとみられている。

www.timesofisrael.com/iran-official-blames-israel-us-for-cyberattack-that-crippled-gas-stations/

イスラエルのLGBTを襲うイラン?サイバー攻撃:身代金100万ドルを要求

27日、イスラエル国内のLGBT(同性愛)のデート・サイト“アトラフ”が、イランによるとみられる“ブラック・シャドー”と名乗るグループにハッキングされた。すでに登録者の個人情報が、一部ネットに流されている。登録者は100万人にのぼるとのこと。

その後31日、ブラック・シャドーが、電報を通じて、48時間以内に100万ドル(約1億2000万円)を要求してきた。支払わない場合は、残りの個人情報を外部に売り渡すと脅迫している。しかし、24時間経過後、政府もサイバーセキュリティ関連会社も、まだ金を払う動きはない。

www.timesofisrael.com/suspected-iranian-hackers-publish-alleged-client-data-from-israeli-sites/

しかし、サイトがLGBTのものであることから、HIVに関する情報など、かなり個人的な情報が含まれている。中にはまだカミングアウト(同性愛を公表)していない人の名前も公表されてしまうと懸念されている。Times of Israelの取材では、そういう人々は、「人生が終わってしまう」と極端な不安に陥っているという。サイト関係者は、仮に情報がリークされても、そこからさらに拡散させないよう、公衆に呼びかけている。

この他にもバス会社のダンや、子供ミュージアム、旅行会社、外来医療関係などでも発生しており、それぞれ個人データを盗まれていた。一部はブラックシャドーが犯行を認めている。

なお、ブラックシャドーは、昨年12月、イスラエルの保険会社をハッキングして個人情報を盗み、100万ドルの身代金を要求していた。会社がこれにおうじなかったため、個人情報がオンラインに流されたととのこと。

www.timesofisrael.com/hackers-demand-1-million-to-end-leak-of-user-info-from-israeli-lgbt-site/

イランとイスラエルの攻防戦。常に水面下で、お互いに犯行を認めないので、記事として非常に書きにくい動きである。

しかし、読者には、イランとイスラエルの間には、ドローンによる実際の戦闘だけでなく、サイバー分野においても、激しい攻防戦がすすんでいることをお分かりいただければと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。