イスラエル感染者1442人:ドライブスルー検査場増設 2020.3.24

出展:Ynet Motto Kimchi

イスラエルの感染者1442人:増加止まらず

世界のパンデミックがいよいよ本格化してきた。世界192国、33万4981人が感染、1万4652人が死亡。(WHO/NHK 24日14:00) 50カ国以上が国を閉鎖して、国民には自宅での隔離を要請している。地球上で今、15億人(世界の5人に1人)以上が自宅にひきこもっている。

www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/

新型コロナの影響は、人種の例外なく、文字通り世界中ひろがっている。ニューヨーク、パリ、ロンドンなど、一流と目される世界の大都市が、まるでゴーストタウンのようになっている。

以下は、New York Times から”Great Empty(すごいからっぽ)”という世界都市からの写真集。

www.nytimes.com/interactive/2020/03/23/world/coronavirus-great-empty.html?action=click&module=Top%20Stories&pgtype=Homepage

イスラエルの感染者も増加を続けており、最新データでは、24時間に371人増えて、1442人。死者は1人のままだが、重症者が29人に増えた。回復した人は41人。

www.ynetnews.com/article/91AHMAWQX

イスラエル人で、陽性と診断され、ホテルの医療施設に搬送された女性ダニ・ダニエラさんが、インスタグラムで、隔離されたときや、隔離の様子を配信。BBCがそれを取り上げている。

ダニさんは、感染が発覚するまでや、発覚してからどこへいくともわからないところへ搬送(テルアビブのダン・パノラマホテル)された経験とその時の気持ちなどをそのまま語っている。

www.bbc.com/news/av/world-middle-east-51981861/israel-s-coronavirus-patient-74-talks-about-her-experience

ドライブスルー検査場増設:エルサレム、ハイファ、ベエルシェバ

イスラエルの医療システムは、決して遅れているわけではないが、キャパでいえば、爆発的感染に対応できないとみられている。すでに、多くの医療関係者が自主隔離に入っているので、研修医が最前線で働いているとの情報もある。なんとしても、感染者、また重症化する前に治療に入らなければならない。

日本では、医療崩壊を予防する策として、急激に患者が病院におしかけないよう、検査を必要最小限に抑えている。その上で、感染者が発生してからクラスターを徹底的に探り、濃厚接触者を洗い出して隔離するという作戦を続けている。

しかし今、日本では、どこから感染したかわからず、従ってクラスターを検出できないケースが増えてきた。この作戦が限界に近づいている可能性があるとのこと。小池知事は、東京のロックダウンにも言及し始めている。

イスラエルは、国とはいえ、総人口(913万人)が、東京都人口(1395万人)より少ないので、全国民を把握することも不可能ではない。そのため、とにかくできるだけ多くの検査をして、感染者を洗い出し、その一人一人を隔離し、携帯電話を使って動きを監視する作戦を続けている。

ネタニヤフ首相は1日に3000件以上の検査を命じたが、今ようやくその数をこえたとのこと。しかし、ドライブスルー検査場はテルアビブに加えて、あらたに、エルサレム(テディスタジアム駐車場)、ハイファ、ベエルシェバにも設置された。それぞれ、1日に1500件の検査が予定されている。

www.timesofisrael.com/drive-through-coronavirus-testing-sites-open-in-haifa-jerusalem-and-beersheba/

AIを駆使してクラスター発生に先手

イスラエルでは、クラスターが発生するのを待つのではなく、AIを使って、クラスターを予知し、先手阻止する手法も行っている。

その手法とは、地域の人々への調査を通じて、地域別の動向を判断するというもの。ワイツマン研究所、ヘブライ大学と保健省が、システムを開発、実施している。調査には全国で6万人が協力している。*この手法を使っているのはイスラエルだけではない。

これにより、どの地域に隔離者が多く、従って、リスクが高まっているかを予知することができ、そこの検疫に力を注ぎ込むことができる。また、この情報は地図に書き込まれ、一般の人々もオンラインで確認できる。

現在、特に要注意地域は、西岸地区入植地エフラタと、エルサレム近郊のキリアット・エアリム。エフラタでは、感染者が20人で、全住民の9.5%が隔離している。地域指導者によると、感染した人が名前を公表しているので、町として確実に対処できるとともに、彼らへの支援も行うことができると、感染者たちへの感謝を述べている。

エルサレム近郊のキリアット・エアリムは、超正統派が多い町で、先のプリムパーティで感染が拡大。感染者は25人となった。キリアット・エアリムでは、町への入り口が閉鎖されている。この他、西岸地区入植地のハル・ヘブロンで4.9%と、エルサレムとテルアビブの中間の町、モディーンで4.5%の人が隔離している。

www.ynetnews.com/article/BkeJBCVL8

ホットライン利用者3倍に

イスラエル人は明るく前向きなので、オンラインでのコンサートやセミナーがすすみ、ベランダごしにサポートしあう様子もある。

一方で家庭内暴力が増加する傾向も始まっている。ハアレツ紙によると、自宅隔離がはじまってから、性的暴力を受けているとの相談が、家庭内暴力ホットラインで増加しているという。

イスラエルには、夫の暴力を受ける女性たちのためのシェルターがあるが、現時点で、部屋は90−95%稼働中と、すでにほぼ満室状態。しかし、今後、助けが必要な女性は増えてくると懸念されている。

WIZO(ユダヤ機関の一部門)で、2件のシェルターとホットラインを運営しているリブカ・ニューマンさんは、「いままでになかった状況に直面している。わたしたちは、”津波”のような状態(相談が殺到)に対処できない。」と語っている。

一般のクライシス・ホットライン(緊急時に助けを求める)電話相談も、コロナ危機がはじまってから1日1200件あまりとなり、平常時の3倍になったという。相談内容は、寂しさ、経済的な不安、いつまで続くのかといった不安などである。

電話対応で登録しているボランティアは1450人。このうち180人が英語対応となっている。その他、ロシア語もある。このサービスを提供する団体は、あらたにアラビア語によるサービスもはじめた。アラビア語ボランティアは2人。

www.timesofisrael.com/calls-to-crisis-hotline-triple-as-israelis-reel-from-coronavirus-travails/

食料支援グループ

これほど長くこどもたちが家にいることは、健全ではない。イスラエルの教育省は、子供達にコロナ危機をどう説明するかを伝える資料を発行するほか、オンライン授業を行っている。

しかし、問題は、教育だけでない。食料もである。イスラエル人家庭では、子供が5人、6人というケースもめずらしくない。イスラエルの子供達は、日本人の子供より3倍ぐらい食べるような気がする。そうした家庭の毎日の食事。収入が途絶えている今頃、どうしているのかと思わされる。

また、高齢者は以前にもまして孤立している。イスラエルはチャりティの国なので、このような人々に、食事を届ける働きをしている団体が今も稼働している。メイール・パニームという団体は、最初のころは、コロナ危機で、閉鎖になったホテルから、残存した食料の寄贈を受けていた。しかし、今は募金を呼びかけている。

明るいニュースは、こうした団体には、利用の申し込みだけでなく、ボランティアの申し込みも増加しているという。ビデをを見る限り、子供や高齢者のボランティアもいる。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/277676

ユーモアで危機を乗り越えるユダヤ人

様々な危機をサバイバルしてきたユダヤ人が、危機的状況で使うのは、やはりユーモア。危機的な状況にある場合、それをジョークに使うとなると、やはり多少は落ち着いてからでないと、ひんしゅくととられるだろう。しかし、ユダヤ人の場合、そういう時間差がない場合もあるという。

アサフ・ベイサルさんは、風刺アーティストで、最近では、「ファウダ」というイスラエル軍とテロリストの戦いをテーマにしたシリーズでヒットを出したが、ユダヤ教をテーマにした皮肉なクリップ、「Jews are coming (ユダヤ人が来る!)」もヒットになっている。

「Jews are coming」では、マサダの悲劇から、アイヒマン処刑まで、かなりシリアスなテーマまで、コメディにしている。

ここで紹介するクリップは、感染症をテーマにした皮肉である。

ユダヤ教では、部屋に入る前にはメズザ(入り口に装着した聖書のことば)にキスをして入るという決まりがあるが、それをテーマにしたコメディ。

メズザにキスをしないで入ってきた男性に、皆とラビが反発し、この男性が最終的にメズザとキッパにキスをするが、その後、「なぜ1週間こなかったんだ」と聞かれると、「医者に行ったら、ヘルペスと言われたんだ。」という。人々の反応が面白い。(2016年作品・3分程度)

石のひとりごと:オールマイティにはかなわない

世界のニュースを見ていると悲壮感せまってくる。緊張満開になる。イスラエルでも、深刻ではあることに違いはないが、おそらくパニックになってしまうことはないのではないかと思う。

イスラエル人たちは、往々にして、反応は劇的だが、こうなっているものはこうなっているのだから、なんとか乗り切るしかないと思っている。もし、死んでしまうことでもあれば、「私の番が来た」ということであり、誰かのせいにして恨み続けるというどろどろしたものはないように思う。

オールマイティ(全知全能の神)がやっていることだから、よくわからなくてもそうなのである。嵐がある。だからなんとかサバイバルするしかない。・・ということである。

だから政府も、最悪の危機的で希望のかけらも見えないような将来像を国民に平気で伝えるし、国民は、それをそうなのかと受け取って、それぞれが準備するか、しない人もいる。

このとき、笑うしかないし、笑ってよい。ヒトラーに関することは別だが、通常は、イスラエルに、ひんしゅく、ということばはほとんどないように思う(一般的にはだが・・)。そこがユダヤ人の強さかも。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。