パレスチナ自治政府の活発外交と実際の現状 2023.8.15

Palestinian Authority President Mahmoud Abbas, left, meeting with Saudi Arabia’s Crown Prince Mohammed bin Salman in the Saudi port city of Jeddah, April 19, 2023. (Wafa)

アッバス議長の活発な外交:アメリカとサウジアラビアの交渉の合間

バイデン大統領とサウジアラビアの交渉が進むとすれば、パレスチナ自治政府にも大きな動きになってくる。

しかし、実際にパレスチナ自治政府は国として成り立つ状態にあるのかといえば、全くそうでないというのが現状である。

アッバス議長(87)は、4月、サウジアラビアの首都リヤドを訪問し、ビン・サルマン皇太子と会談していた。この時、同時ではなかったが、ハマスのハニエ最高指導者ともリヤドで、皇太子との会談を行っていた。

www.aljazeera.com/news/2023/4/18/abbas-arrives-in-saudi-arabia-coinciding-with-hamas-visit

続いてこの7月26日、アッバス議長は、トルコでエルドアン大統領の仲介で、ハマスのハニエ指導者と会談。

4日後、エジプトのエルアラメインで、ハマスのハニエ最高指導者も含め、その他のパレスチナ組織指導者とも会談を行なっていた。議題は、統一したパレスチナ政府の設立であった。

しかし、最も問題となるイスラム聖戦は参加していなかったとのこと。

www.timesofisrael.com/pas-abbas-to-hold-three-way-summit-with-egyptian-jordanian-rulers/

その後、アッバス議長は、ジェニンなど問題のある地域の10人以上の自治政府知事を解任するという謎の動きにも出ていた。

(AP Photo/Amr Nabil, File)

アッバス議長はすでに87歳と高齢であるだけでなく、汚職問題もあることや、西岸地区でのイスラエルとの衝突は悪化する一方でもあり、パレスチナ市民の80%は、議長の座を降りるべきと考えている。

サウジアラビアはこの状態で、パレスチナの国と考えているのだろうか。今のままで、パレスチナ人が一致して一つの国になるとは、どうにも考えにくい。

それでも、一応、現時点での国際的なパレスチナ人の最高指導者は、パレスチナ自治政府のアッバス議長なので、サウジアラビア、また、エジプト、ヨルダン首脳との会談など、外交の場には、アッバス議長が、パレスチナ人の代表として立っているということである。

変わりゆくパレスチナ人社会

パレスチナ人といえば、かつてアラファト議長が率いていたPLOというイメージが強い。しかし、2005年にアラファト議長が死亡し、今のアッバス議長になってから、時代は大きく変わっている。

以下のHPに含まれるビデオは、アルジャジーラが、今のパレスチナ人社会の様子をまとめたビデオクリップ。イスラエルを「占領者」と評するなど、イスラエルには敵対的な表現ではあるが、流れとしては、わかりやすい。

www.aljazeera.com/program/start-here/2023/7/20/who-are-the-new-palestinian-armed-groups-start-here

まとめると、今のアッバス議長は、議長に就任してから20年以上も選挙を行わず、その地位に居座り続け、今では、汚職にまみれた状態にある。

さらには、治安維持において、イスラエルと協力する様子もあることが、特にパレスチナ人たちの嫌悪感すら買っている。

中央集権力を失い、ガザでは、ハマスや、イスラム聖戦などのグループが台頭し、今では西岸地区にもそれらの組織が進出している。さらには、イスラエルが、自ら入ってきて、それらと戦うようになっている。

[Source: Lions’ Den]
ところが、今は、そのどの組織にも失望したとする若者たちの運動、「ライオンの巣」と呼ばれるムーブメントが出てきている。拠点は、イスラエルとの戦いが頻繁に発生しているジェニンである。

パレスチナの若者たちは、これまで何十年も何も成し遂げず、ただ貧困と混乱しか生み出していない大人たちに、もはやうんざりしているということなのである。

ライオンの巣は、イスラエルと戦うだけでなく、時に自治政府すらも攻撃する動きに出ている。今では、多くのパレスチナ人たちから、ヒーロー視され、支持率を上げつつあるという。

もはや、アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は、実質的には、パレスチナ人社会の代表では、まったくないというのが現状である。

これほどの混乱しているパレスチナ社会が、国として一致して運営できるようになるとは思えないのだが、アメリカもイスラエルも、サウジアラビアもまた、このアッバス議長にかけるしかないというのが、現状である。

石のひとりごと

調べれば調べるほどに、ためいきしか出ない・・・。中東の和平は、やはり人間の手では無理とも思えてくる。これをまとめる人が出てきたとしたら、それこそ天才政治家、世界統一の指導者、偽キリストということになるのかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。