右派イスラエル我が家党党首、リーバーマン氏が国会の承認を得て、昨日、国防相に正式に就任した。
就任演説の中で、特に明確にしたのは、「2国家2民族」を支持するという点。リーバーマン氏は、右派思想だが、2国家2民族に反対していたわけではなく、逆に、彼独自の案で国を2つに分けることを支持するということである。
リーバーマン氏の2国家2民族案は、これまでのように1967年時点でのラインで2国家に分けるのではなく、今現在の、ユダヤ人アラブ人居住区の現状を見て、それに応じて分割ラインをひくということである。
その中で、「分割する以上は、ユダヤ側に入るアラブ人は全員パレスチナ側へ行ってもらう。」というような点が、過激とされる点である。イスラエルで生まれ育ったアラブ人は当然、これに反発している。
また、リーバーマン氏は、就任にあたり、今まいこんできているエジプトとサウジアラビアを筆頭とするアラブ穏健派が仲介するパレスチナとの和平案には、イスラエルにとっても益になる点があると語り、エジプトのシシ大統領の発言を重要視するとも語った。
<2国家2民族案は可能か?>
国を2つの民族のそれぞれの国として分離する・・・この案は今にはじまったわけではない。実際、23年前に、ラビン首相と、アラファト議長がアメリカの仲介で合意に至り、イスラエルの隣に、パレスチナという国を実現する事を目標にこれまでやってきたのである。
ところが、今、その目標は、実現するどころか、両者の関係は前にもまして悪くなっている。
両者の居住地は、ますますいりくんだものになり、分割というのはどうみても不可能である。両者をあくまでも分けようとすると、リーバーマン氏案のように、極端にならざるをえない。
エルサレムに関しては、東はアラブ、西はユダヤとけっこう、くっきりと別れているのだが、リーバーマン氏がエルサレム分割までは考えていないと思われる。そうなると、パレスチナとしては、すでに交渉する以前の問題であろう。
また、それでも強硬的に分けたとして、イスラエルのアラブ人とパレスチナ人が一致してテロをやめ、建設的に国家を建設するのかといえば、ハマスなど過激派がそれを妨害したりで、そうならないのは日を見るより明らかである。
これらをみこしているので、ユダヤの家党のベネット氏は、2国家2民族など夢物語だと主張して、反対しているのである。しかし、かといって、2つに分けないで、このまま全部をイスラエルが管理できるのかといえば、これもまた、不可能と言わざると得ない。
そのどうみてもインポッシブルな2国家2民族をまたやろうとしているのだが、今回、エジプトたちがどんな案を持ち込んでいるのか・・・今後の動きが注目される。
<右派内部でも争い>
今回、リーバーマン氏が入って最強右派政権の様相になっているわけだが、だからといって右派で一致団結しているわけではない。同じ右派でも、政策については様々な意見があるのは上記の通りである。
リーバーマン氏をとりこんだことで、ネタニヤフ首相の2国家2民族推進が、さらに強くなりつつることを受けて、右派ユダヤの家党のベネット氏が必死にブレーキをかけようとしている。
ベネット氏にしてみれば、ネタニヤフ・リーバーマンのコンビで、彼自身は悪夢を招くと考えている2国家2民族をすすめてもらいたくないのである。
ところで、イスラエルには、戦争を始めるなど、重要な治安問題の決定を行う機関として、国家治安委員会がある。ネタニヤフ首相を筆頭に、閣僚たちでなりたっている。
”反抗的”なベネット氏も教育相であるため、委員会の一員だ。常にもめていることから、この委員会が本当に一致してよい決断ができるのかどうか、社会からは不安視されているところである。
ベネット氏は、今の国家治安委員会では、重要な情報を知っているのは首相や国防相だけで、委員会メンバーは、会議で初めて状況を聞かされ、十分検討する余地がないと指摘。
特別な治安秘書を置き、治安上の重要な情報は、首相だけでなく、委員会メンバーにもすみかに届けられるシステムを構築することを、リーバーマン国防相承認の条件として、ネタニヤフ首相と争っていた。
結果、どんな合意になったのかは不明だが、最終的にネタニヤフ首相が勝ったとみられ、日曜夜に落着。月曜には国会で承認。翌朝火曜、国家治安委員会は何も変わらないままで、リーバーマン氏が国防相になったということである。
要は、首相が決断しやすい、つまりは暴走もしやすい状況があるということであろう。この直後から、ベネット氏は、「首相の任期は2回までにすべきだ。」とまたあらたな策にとりかかっている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4810058,00.html
政治はこんな状況だが、イスラエルのメディアではこれと平行して、ネタニヤフ首相と妻のサラ夫人の公費使用の問題が再び表沙汰になり、連日報じている。
これだけ緊急死活問題の多い国で民主国家、イスラエルの首相という仕事は、なかなか大変である。。。。
*昨日、テルアビブの国防省の近くの通りで、イスラエル兵(19)が刺されるというテロ事件が発生した。犯人は西岸地区在住のパレスチナ人(17)で、無事逮捕された。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4809846,00.html
<5日:エルサレム統一記念日>
上記のように、土地分割の話がわき上がって来たところだが、イスラエルでは、5日、49回目のエルサレム統一記念日を迎える。
1967年の六日戦争以降、エルサレムが統一され、イスラエル領内に入ったことを祝う日で、市内では、右派の若者たちが、イスラエルの旗をふりながら、市内から嘆きの壁までをパレードをすることになっている。
パレードは、あえてテロが多発しているダマスカス門から嘆きの壁に入ったりすることがあるため、治安上、非常に緊張した状況になる。今年も、数日後にはそのルートが発表される見通し。
言うまでもなく、このイベントは東エルサレムのパレスチナ人たちにとっては穏やかなことではない。旧市街では、店を閉め切って様子を見たりしている。
今年は、特に、6日からイスラム教のラマダンである。1日ずれたのが幸い。。。といったところか。