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スーダンでクーデター:イスラエルとの国交正常化はどうなる?
スーダンでは、25日、軍がクーデターを起こして、民主化勢力のトップ、ハムドク首相や閣僚を拘束し、2019年に始まった軍と民主化勢力の共同統治を終わらせることとなった。これまでに死者は7人。多数の負傷者が出ている。
とりあえず、ハムドク首相だけは解放され、アメリカのブリンケン国務長官と電話会談したが、その他の閣僚たちはまだ拘束されたままである。その後も、首都ハルツームでは、クーデターに反発する市民と軍の間で衝突が続いており、国連安保理は、懸念する事態との声明を出した。
www3.nhk.or.jp/news/html/20211028/k10013324911000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
イスラエルは、昨年10月、アブラハム合意との関連で、UAE,バーレーン、モロッコに続いて、スーダンと国交正常化で合意していた。しかし、その後の進展はないというのが現状であった。
そうした中で、今回のクーデターである。今後スーダンとイスラエルとの関係がどうなっていくかは、見通しが立たない事態となった。
イスラエルとの国交正常化は、スーダン自体の経済にも大きく貢献し、国の発展から平穏にもつながっていくと期待されていたが、このままでは再びスーダンが内戦に逆戻りんである。
またもしこのまま軍政権に統治されるスーダンが、以前のようなテロ支援、反欧米反イスラエルの国に戻るならば、イスラエルの治安に再び大きな脅威になっていくだろう。
一点の希望は、今回クーデターを起こした軍のブルハン暫定統治評議会長が、イスラエルとの国交には賛同していたと言う点である。今はまだイスラエルどころではないとみられるが、長い目でみれば、スーダンとイスラエルの関係は改善していくのではないかとの見方もある。
軍のブルハン暫定統治評議会長は、今回、クーデターを起こした理由について、革命の本来の目標とずれてきたので、それを修正するためにはクーデターしかなかったと語っている。今後のスーダンの動きが注目される。
イスラエルとの国交正常化合意の背景
スーダンは、筋金入りのテロ支援国家で、イスラエルの治安にも大きな脅威をもたらす国であった。スーダンの首都ハルツームは、アラブ諸国がイスラエルに対する3つのノー(イスラエルとの和平にノー、その存在を認めない、イスラエルとは交渉しない)を出したことで知られる。
スーダンはオサマビンラディンの拠点であり、2000年代に発生したダルフール紛争の時には、大勢の難民がイスラエルになだれ込んでくるなどの歴史もあった。その間、クーデターは何度も発生したのであり、今回のクーデターが最初のことではない。
最も最近では、2019年、30年続いたバジル大統領に対するクーデターが発生し、以後、軍の指導者であったブルハン氏が暫定統治評議会長を務め、民主化勢力のハムドク氏が首相となって共同統治を行なうようになっていた。
少しづつではあったが、農業に力を入れるなどして、長年続いたテロ支援と内戦の時代から、脱出しようとしているかにみえた。
この間に、トランプ大統領が退陣寸前に、テロ国家指定を解除するとしてスーダンにアブラハム合意への参加を呼びかけた。これを受けて、スーダンはイスラエルとの国交正常化を表明。アブラハム合意に加わる見通しとなった。昨年2月には、ネタニヤフ前首相がウガンダを訪問した際に、軍のブルハン暫定統治評議会長と直接会談を行っている。
mtolive.net/筋金入りテロ国家・スーダンがイスラエルとの和/
しかし、スーダンは歴史的にも筋金入りのクーデター、テロ支援国家としてイスラエルにも敵対し続けてきた国である。結局、内部から反発が相次ぎ、イスラエルとの国交正常化を進めることができず、スーダンは、ワシントンでの調印式にも来ることができなかった。