IS関連テロ2件目:ハデラ銃撃で警察官2人死亡 2022.3.28

ハデラ市街地でアラブ人銃撃テロ:警察官2人死亡

27日夜、ベエルシェバで市民4人が殺害されるテロが発生して5日目、イスラエル北部海岸に近い町、ハデラの市街地で、テロリスト2人が突然、銃撃テロを行い、警察官2人が即死。5人が負傷。うち2人が重傷。7人がショックで治療を受けた。

防犯カメラによると、犯人は髭に白い服といかにもイスラム教徒の服装で、バス停からいきなり通行人に向かって銃撃を始めている。その後、地面に倒れている警察官に発砲して殺害し、そのライフルを奪っていく様子も記録していた。

現場は、多くの車が行き交うまさに市街地だが、まるでマシンガンのような銃声が続いている。近くの車内いた市民がその様子をスマホで伝えいる映像もある。テロリスト2人は警察によってその場で射殺された。

www.timesofisrael.com/2-killed-in-terror-shooting-in-hadera-both-gunmen-killed-by-police/

ハデラでのテロで死亡した警察官は、どちらも19歳の新米警察官だった。ヤゼン・ファラさんは、ガリラヤ地方のドルーズの村出身。1年前に国境警備隊での働きを始めたところだった。遺族は両親と兄弟姉妹。

もう一人は、女性でシレイ・アブカラットさん。国境警備隊に入ったのは半年前であった。遺族は両親と兄弟1人。

www.timesofisrael.com/hadera-victims-named-as-border-police-officers-yezen-falah-and-shirel-abukarat/

ISが犯行声明:イスラエルとアメリカ、アラブ4カ国サミット妨害の可能性

ベエルシェバの事件の犯人はIS関係者であったが、今回の2人もIS関係者であった。ロイターによると、後にISが犯行声明を出した。

警察によると2人は、イスラエル国内で特に過激と見られることが多いウム・エル・ファハン在住の従兄弟、アイマンとイブラヒム(31)・イグバリア。警察によると、アイマンとイブラヒムは、現場に銃弾1100発と拳銃、ナイフも6丁持参していた。

イブラヒムは、2016年に、シリアに行ISに参加しようとしてトルコで逮捕され、イスラエルに搬送されて1年半、刑務所で過ごしていた。アイマンも2017年に違法な武器所持で逮捕された経験がある。

なお、2件のテロが、アラブ4国(エジプト、UAE、バーレーン、モロッコ)の外相が、イスラエル(ネゲブ地方)に来て、アメリカも含めた歴史的なサミットを計画する中で発生しているため、イスラエルとアメリカという宿敵とスンニ派アラブ諸国が手を結ぶことへの反発であるとの見方もある。

www.timesofisrael.com/minister-arab-israeli-terrorists-in-hadera-shooting-affiliated-to-islamic-state/

*IS、ISIS、ISIL、イスラム国

ISはイスラム国、ISIS, ISILなどと呼ばれるイスラム教スンニ派組織で、2015年には、内戦にあったシリアの大部分を制覇し、恐怖政治を開始した。これに対し、アメリカを筆頭に欧米諸国が有志軍を結成して打倒を図り、2019年10月に首領のバグダディが死亡。後継者のアブイブラヒム・ハシミは、2022年2月に排除をアメリカが宣言した。

しかし、その後、再び後継者アブハサン・ハシミが登場。組織の存在は大きくはないが、各地でイデオロギーを引き継いでいるグループが、世界各地に存在しているとみられている。

ラマダンに向け警戒体制強化:ガンツ防衛相

ראש הממשלה נפתלי בנט בזירת הפיגוע בעיר חדרה
ביקור בתחנת המשטרה
הערכת מצב עם המפכ”ל קובי שבתאי וראש השב”כ רונן בר
Photo by Kobi Gideon / GPO

今回の事件の犯行声明をだしたのがISであったこと。また、ISと同じスンニ派のハマスとイスラム聖戦は、称賛する声明を出したことから、イスラエルの治安組織は、同様のテロが続いて発生するのではないかとの強い危機感を持っている。

ベネット首相は、ハデラの警察署を出向いて、対処を話し合った。

パレスチナ人たちは、エジプトと湾岸諸国が、イスラエルとアメリカとのサミットに参加することに怒りと反発を表明している。

これまでからも、西岸地区の入植地近辺では、ユダヤ人が殺害される事件、それに対して過激右派ユダヤ人がパレスチナ人に対する暴力事件、その後捜査に入った国境警備隊や軍と衝突で、まだ10代のパレスチナ人が死亡するという事件が相次いで、憎しみが増大している。

加えて、4月には、イスラム教徒が過激になりやすいラマダンにも突入する。ガンツ防衛相は、国内の平穏を守るため、全国で治安維持に向けた厳しい警戒体制を表明。西岸地区などで道路封鎖などの制限を開始した。

また、問題は、この2件のテロ事件が、パレスチナ人ではなく、どちらもイスラエル国籍を持つアラブ人によるものであったということでもある。イスラエルのアラブ系住民を代表するアラブ政党ラアム党のアッバス党首は、事件を厳しく非難し、事件は、ISによるものであり、イスラエルのアラブ人社会によるものではないと強調している。

しかし、アラブ人社会では、今回のようなIS関係の他、犯罪系の殺人事件も続いている。3月27日にもベドゥインの町テルシェバで、土地問題で、28歳のアラブ人男性が殺された。こうした殺人事件で死亡した人の数は、今年に入っての3ヶ月の間だけで、20人にのぼっている。

西岸地区だけでなく、イスラエル国内のアラブ人地域でも、あらゆる面で、治安維持の向上が必要になっているようである。

www.timesofisrael.com/man-shot-dead-in-southern-israel-the-20th-killing-in-the-arab-community-this-year/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。