アメリカがドローンでIS-K(イスラム国)へ報復攻撃: カブール自爆テロその後 2021.8.29

26日夕方に発生したアフガニスタンの首都カブールでの自爆テロでの死者は、アメリカ兵13人の他、タリバン含むアフガン人170人にまで増えてきている。負傷者はアメリカ兵が15人。アフガン人が200人。この間、アメリカは救出作業を再開し、この24時間で、1万2500人を国外へ脱出させている。

ドローンによるピンポイント攻撃

こうした中、バイデン大統領が報復を通告していたように、27日金曜、犯行声明を出していたISIS-K(イスラム国の一派)拠点へのドローンによる空爆を実施したとアメリカ中央司令室報道官が発表した。場所は、カブール北部のIS拠点とみられる地域である。

BBCによると、攻撃したのは無人のドローン。どこから発射されたかは不明である。ドローンは、テロ事件の首謀者とその仲間とみられる2人が乗っていた車を攻撃。2人とも殺したとのこと。これに伴う市民の犠牲者に関する報告はない。これに対する反撃が懸念されたため、アメリカ軍は、市民らに直ちに空港の門から離れるよう指示した。

www.bbc.com/news/world-asia-58364743

現在、カブールの空港は閉鎖されている。この時までに空港に入っていた5400人は、そのまま空港内で救出を待つこととなった。アメリカ軍によると、空港でのテロの危険性が高く、もはやこの空港からの脱出は不可能になったとみてよいだろう。

脱出期限切れで取り残された人々

BBCによると、これまでに各国が国外へ脱出した人々は10万人とみられる。アメリカ軍撤退期限が31日であることを受けて、救出に期限は今週末ともいわれていた。

NATO関係諸国は救出完了を宣言。昨日はフランスがその宣言を出した。アメリカの反撃で、もはや、空港からの脱出は不可能に近いほど難しくなったとみられている。

しかし、各国とも、取り残した人がいないわけではない。BBCによると、イギリスは、これまでにイギリス人とその関係アフガン人1万4543人を救出したが、取り残されている人が、イギリス人は100-150人、アフガン人は800―1100人いるとみられている。*木曜の自爆テロで、イギリスも、大人2人と、ことも1人を失っている。

日本の自衛隊は、昨日の時点で、自力で空港まで来た日本人1人を救出と伝えられていた。しかし、今日になり、関係アフガン人十数人をパキスタンに移送していたことがわかった。また、大使館関係者や、ジャイカ関係の日本人については、17日の時点で英国軍などによって脱出を完了していたという。

しかし、これがすべてではない。移送を予定していた日本人や関係アフガン人は500人。この多くは今もアフガニスタンに取り残されたこととなった。日経新聞は、様々な手続き上の問題などから、自衛隊の活動開始が、他国より1週間も遅れていたと指摘している。

www.nikkei.com/article/DGXZQOUA273SN0X20C21A8000000/

なお、アフガニスタンに残留を希望した人も複数いたとのことである。アフガニスタンで水道設備の設立に貢献した医師の中村哲さんに関係するクリスチャンたちである可能性も懸念されるが、情報はない。

IS-Kとは?:これからどうなる?

IS-Kとは、2015年ごろから、シリアやイラクで残虐な行為をしながら“国”を形成する勢いとなり、世界を震撼させたイスラム国の傘下にある組織で、(K)コラサン地方にいるイスラム国(IS)ということである。メンバーは、アフガニスタン人とパキスタン人のイスラム教聖戦主義者たちである。

イスラム国本体は、2017年までにアメリカと有志連合軍により、かなり縮小されていったが、イデオロギーは死なず、各地でその活動が生き続けていると懸念されていた。

実際、2018年にトランプ前大統領がISに対する勝利宣言を出し、シリアの武力を縮小すると、その後にすでにIS一派が現れていたことが報告されている。イラクでも同様である。イスラエル周辺でも、ゴラン高原南部、またシナイ半島にもその残党の存在が確認されていた。

New York Times によると、近年のアフガニスタンには、タリバンだけでなく、中央アジアや、北コーカサス地方、ロシア、パキスタン、中国などからも、テロリストたちのラスベガス、巣窟のようになっていた。そこにIS-Kも現れて、主要勢力になるべく、それらを攻撃していたということである。

前のアフガニスタン政府がこれを取り締まれるはずはなく、アメリカ軍もまた、それを独力でする気のない、アフガン政府を支援しても無駄だと考えたということである。

IS-Kは、アフガニスタンのタリバン支配を認めていないので、今後、アフガニスタンは文字通り、地獄の様相になっていくかもしれない。タリバンとの協力に乗り出している中国が、今後どう出てくるのかも注目されるところである。

石のひとりごと

各国の救出をみながら「レフト・ビハインド」ということばが頭から離れなかった。聖書によると、地球には終末が定められており、その前の7年の間、未だかつてないような天変地異や、疫病、戦争などが発生、人類の3分の1が死亡すると書かれている。これを艱難時代と呼ぶ。

未来のことなので、いろいろな聖書理解があるのだが、一説によると、この7年間の直前に、イエス・キリストが信者を地上から救出して先に天に引き上げると言われている。

キリスト教でいう救いが、霊的なものであると同時に、実質的なものであることを表している点である。

無論、今回のアフガニスタンでの出来事がそれと直接関係しているわけではない。取り残された人々がその罪のために取り残されたと言っているのではまったくない。

ただこのことを思わされただけである。今、アフガニスタンに取り残されてしまった人々が、近く救出されるよう、祈るばかりである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。