コロナ危機・ロックダウンからどう離脱するか : INSS(イスラエル国家治安研究所)2030.4.7

2020年1月6日 リブリン大統領にイスラエルの現状を報告するINSSのアモス・ヤディン氏  出展:INSS

イスラエルは、今全国レベルでのロックダウン、都市間移動宣言をだしたところだが、今後、そこからどのように離脱するかが問題である。

防衛に関する政府へのアドバイザー的な存在であるINSS(国家治安研究所)は、ズームによる対コロナ作戦会議を行った。

参加したのは、元イスラエル軍諜報部長官アモス・ヤディン氏、元イスラエル軍司令官ウディ・デケル氏、アサフ・オロン氏など治安関係で作戦を練ることになれた人々である。それによると以下の通り。

イスラエルの現状アセスメントと課題

1)医療:一般社会で感染する率は低下しているが、ユダヤ教超正統派社会での感染と死亡率は突出している。この人々との情報共有ができていない。

2)経済:失業者が100万人(失業率は23%)を超え、GDPは4000万シェケル/月まで減少している。税収入と貧困の増加が予測される。

3)社会:病と経済崩壊への恐怖心が高まっている。封鎖が長引けば、政府の指示に従わない者が出てくる可能性がある。

ヤディン氏は、今、COVID19に対するワクチンも特効薬もないということは、このウイルスはすぐには、消えないと認識しなければならないと述べた。

一方で、GDPのこの下がり方では、イスラエル経済が回復不能なまでに落ち込むとして、今が限界だと述べた。医療的な状況を見つつも、感染のリスク、感染の地域性なども綿密に分析して、まずは社会に必要不可欠な仕事から、再開できるところは再開させていかなければならないと述べた。

その場合、たんに仕事を再開させるのではなく、まず、あらゆるエキスパートが、頭をよせて、社会を分析し、働き方もリスクをできるだけ回避できる形で、計画立てていく必要がある。たとえば、ヘルツェリアはIT関連の若い企業も多く、感染も少ないので、この地域の企業については、徐々に活動を再開させる可能性があるなどである。

ヤディン氏が、今の危機的な経済状況からして、時期としては、来週15日の過越の例祭が終わった頃からを示唆するが、それもこの過越の間に感染がどのようになっていくかにかかっていると述べた。

INSSでは、この作戦会議後、過越の例祭週の終了後を視野に、どのようにロックダウンから離脱するかの提案を、次のようにまとめた。

1)総指揮官
コロナウイルス内閣を結成する:7閣僚で保健と経済のダメージをバランスよく検討。首相の指名で、専門家からなる戦略計画チームを置く。

2)現状把握
コロナの検査とその分析については、保健省ではなく、たとえば、ワイツマン研究所のような総合的で科学的な研究所に権威を移譲する。ここで、検査の種類や検査方法、統計的なことなどあらゆる角度から分析し、報告する。

3)経済回復
経財相の元で、保健相、教育相、防衛相が経済回復班結成する。地域の年齢や、経済状況をみながら、封鎖解除開始の時期を検討する。その際は、働き方の綿密な計画を立てる。経財相は、GPO4000億シェケルのマイナスを1500億シェケルマイナスまでに引き上げる策を考える。

5)安全維持
社会的な弱者の安全維持を考える。教育相の元、学校のあり方を検討する。ディアスポラ(世界のユダヤ人)が直面する問題に目を向け、対策を検討する。

6)危機をチャンスに
”チャンス・チーム”を立ち上げ、この危機によって可能になる戦略上(防衛)の利点の可能性をさぐる。

7)メディア対策
信用のあるメディアを国のスポークスマンとして立て、統一した情報の共有を図る。

8)ガザ対策
防衛相は、ガザ地区での深刻な感染拡大を予防するための支援策を検討し、イスラエルへのマイナスの影響を予防する。

ネタニヤフ首相は、西岸地区のユダヤ人入植地を合併する計画を表明しているが、パレスチナ人との衝突を避けるため。INSSは、少なくとも半年は、この案を凍結するべきと提案した。

www.inss.org.il/publication/coronavirus-inss-war-game/

週2日は出勤・5日は封鎖案:ワイツマン研究所

ワイツマン研究所のウリ・アロン博士は実際に週2回出勤、5日は封鎖という計画を発表している。これで、コロナを封じ込めつつ、経済活動の再会も図れるとしている。

www.calcalistech.com/ctech/articles/0,7340,L-3805334,00.html

石のひとりごと

通常なら、組織力は日本人の方が上だろう。しかし、いざ危機となると、イスラエル人のこの計画力、組織力は目をみはるものがある。一気に一致団結へと向かうのである。

日本ではいよいよ緊急事態宣言だが、イスラエルのようにはっきりとした戦略がみえず、一致がほとんどみられないので、国民としては、これで大丈夫かと思わざるをえない。

特に兵庫県は、医療崩壊に対する対策が皆無なのか、していたとしても、市民には、それがほとんど伝わってこない。これはもう、神のあわれみを懇願するしかないと日々緊張させられている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。