2回目イスラエル人13人解放:パレスチナ囚人39人釈放 2023.11.26

イスラエル人13人とタイ人4人解放:3時間遅れの後で

25日、2回目となる人質解放は、午後4時から解放の予定であったが、ハマスがなかなか引き渡しを開始せず、このあとどうなる!?と緊張が走ったが、約3時間後の午後7時すぎ、ハマスが約束の人質を送り出した。

遅れたのは、ハマスが、支援物資搬入について不満があったようである。しかし、イスラエルは、約束通り、燃料と、人道支援物資のトラック200台(うち50台はガザ北部用)をガザへ搬入を終えていたのである。

遅れを受けて、バイデン大統領が、カタールのアル・サーニー首長に電話をかけて、ハマスに約束を履行させるよう、話したとのこと。ハマスとエジプトの説得で、午後7時(日本時間午前2時過ぎ)には、人質釈放のプロセスが始まった。

今回解放されたのは、イスラエル人13人(子供8人とその4人の母親、女性1人)とタイ人4人の計17人である。

解放されたイスラエル人はほとんどがキブツ・べエリで拉致された人々であった。キブツ・べエリでは、10月7日に、全住民の10%にあたる約100人が、ハマスに殺され、約50人が拉致されている。

ヒラ・ロッテムさん(13)

IDF

ヒラさんは、ハマスが家にきた時、なんとか逃れて外の草むらに隠れたが、みつかって、母親ラヤさん(54)とともに拉致された。

今回解放されたのは、ヒラさんだけで、ラヤさんはまだガザにいる。原則として母と子は常に一緒に扱うという約束をハマスが破ったことを意味する。

エミリー・ハンドさん(9)

家族と再会したエミリーさん

エミリーさんは、事件発生じ自宅におらず、キブツ内の友人宅に泊まりに行っていて、ハマスの襲撃にあっていた。

家族は最初、エミリーさんが拉致されたと聞かされていたが、その後殺されたとの通報を受けていた。ところが、今回、エミリーさんが生きて戻ってきたということである。

 

ノーム・オルさん(17)とその兄弟アルマ・オルさん(13)
2人の母親のヨナットさんはハマスに殺された。父親のドロルさん(48)といとこのリアムさん(18)はまだガザにいる。

ノーム・アヴィグドリさん(12)とその母シャロンさん(52)
一族の多くと共にガザへ拉致されていた。

ショシャン・ハランさん(67)と娘のアディ・シャロムさん(38)とその子供ヤヘルちゃん(3)とナーヴェくん(8)
ショシャンさんの妹のリラク・キプナスさんとその夫エビアタルさんは、ハマスに殺された。
弟アブシャロム・ハランさんは、ハマスに殺され、その妻である義理の妹は拉致され、いままだガザにいる。ショシャンさんの娘のアディさんのもう一人の息子もまだガザにいる。

ノガ・ウェイスさん(18)とその母親シリさん(53)
父親のイランさんはまだガザにいる。
イランさんの兄アミールさんとその妻マティさんは、ハマスに殺された。

マヤ・レゲヴさん(21)
マヤさんは、弟イタイさん(18)と、360人が拉致された音楽フェスティバルに参加していて、拉致されていた。イタイさんは、まだガザにいると考えられている。

解放されたタイ人4人は、以下の4人。

人質は、ガザから赤十字の車でエジプトへ出て、医療検査を受け、それから、ラファ国境より南部の検問所、カレン・ショムロンへ搬送。そこからイスラエル国内の病院に搬送された。

解放された人質はいずれも健康状態に問題はないという。ガザの市民たちが悲惨な状態になりつつあるが、ハマスはやはり、自分達に必要なものは確保しているとみえ、人質たちの外的な様子も良好にみえる。

www.timesofisrael.com/13-israelis-including-8-kids-freed-by-hamas-after-50-days-as-gaza-hostages/

昨日に続いて、家族との感動の再会の様子が伝えられている。

昨日、イエメンからミサイルが発射されたが、イスラエルはこれに対処した。イスラエルとハマスの間では、休戦から3日目となる今日も武力の行使はみられていない。3回目となる本日解放される人質のリストは、すでにイスラエルに届いているとのこと。

パレスチナ囚人39人釈放

イスラエル人13人が戻ったことを受けて、イスラエルは、パレスチナ人の女性囚人39人を、西岸地区と東エルサレムへ釈放した。昨日に続いて78人となる。今回も大変な群衆に迎えられた。

39人はれっきとした犯罪者である。以下のクリップで母親に迎えられているイスラア・ジャアビス(38)は、2015年に西岸地区の検問所で、毒ガスの瓶を破壊してイスラエル人警察官を負傷させた。11年の実刑に服役していた。

石のひとりごと:代価を払って贖われた人質

今回の人質交換に関するニュースは、イスラエルでは、人質が“Redeemed(あがなわれた)”という表現を使っている。人質一人を取り返すために、代価が支払われた、犠牲をもって買い取られたということである。

今回は、人質1人を取り返すために、パレスチナ囚人(テロリスト)3人が釈放されている。この代価を払っているのは、これらのテロリストが釈放されることで、テロで自分が命を落とすことになるかもしれないというリスクを共有するイスラエル市民全員である。

イスラエルが、ハマスに拉致された人質をとりもどすために、パレスチナ囚人を釈放するということは、今回が初めてではない。

2006年、ハマスは、ガザから地下トンネルを掘り進めて、イスラエル領内にまで至った。それを使ってイスラエルに侵入。そこでの戦闘で、ギラッド・シャリート軍曹を拉致した。

それから5年後の2011年、ネタニヤフ首相は、ハマスと交渉を行い、シャリート軍曹を取り戻すために、計1027人(280人は終身刑の凶悪犯)のパレスチナ囚人を釈放するという大技を成し遂げた。1人のために、1027人のテロリストを釈放するという代価を支払ったということである。

ところが、その釈放された1027人の中に、今ガザのトップとして君臨しているヤヒヤ・シンワルも含まれていたのである。イスラエルは、この痛すぎる経験を知っているのに、また人質を取り戻すために、テロリストを釈放し、国をあげてその支払いをしようとしている。今回、釈放された一人一人は、自分がいかにイスラエルにとって貴重な存在かを知るべきであろう。

これは以前にも書いたが、映画「プライベートライアン」のテーマでもあった。ライアン一人を助けるために多くの兵士たちが死ぬことになった。ミラー大尉は、最後に、ライアンに「無駄にするな。しっかり生きろ」と伝えて自分の死んだのだった。

mtolive.net/石のひとりごと:映画「プライベート・ライアン/

戻ってきた人質をみながら、助かった子供たち、一人一人の人生を思わされた。彼らはイスラエルの国とその人々にとって、本当に大事な存在であることを知ることになるだろう。子供だけでなく、85歳の高齢者であっても「もういい」存在とはみられず、国は代価を払って助けようとしている。聖書の価値観のイスラエルならではであると思う。

人質のことを書きながら、あらためて、イエスキリストが、罪の結果として永遠の死に向かっていた私自身を贖ってくれた。それほどに大事な存在として見てくれたのだということを思わされた。だらから無駄に生きてはならない。やるべきことをしっかりやっていきたいと、あらためて思わされたところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。