ユダヤ教超正統派住民の町、ブネイ・ブラックでのテロでは、4人が犠牲となったが、そこまでで止められたのは、かけつけた警察官2人が、犯人に近づいて倒したからであった。警察官のうちの1人であったアミール・コーニーさん(32)は、銃撃を受けて5人目の犠牲者となった。
アミールさんは、ユダヤ人とアラブ人が混在する町、ノフ・ハガリル出身である。この事件に先立ち、ハデラでのテロで、警察官2人が殉職していたが、この時、アミールさんは、婚約者のシャニさんに、「僕は絶対、このようにはならない。必ずテロリストを倒す」と話していたという。そのわずか3日後、アミールさんは殉職したのであった。
31日に、ナザレの受胎告知教会(マリアに天使がイエスの受胎を告げたことを記念)近くで行われた葬儀には、「イスラエルのヒーロー」を見送ろうと、数千人が集まった。
通常なら、大きな十字架がある中での葬儀に、ユダヤ教超正統派が出席することは、律法上よろしくないとされる。しかし、コーニーさんの葬儀には、ブネイ・ブラックからナザレまで、車で3時間かかるにもかかわらず、ユダヤ教超正統派の人々が、約150人大型バスをチャーターして出席していたとのこと。
ここしばらく、ウクライナ問題では、イスラエル、ユダヤ人と、クリスチャンの関係が近くなっている?との希望的な記事が出るようになっている。
ウクライナにいるユダヤ人のイスラエルへの移住を、クリスチャンたちが捨て身で助けていると言った記事が紹介されたり、長年、ウクライナからの移住を助けてきたBFPもまたイスラエル現地のメディアがとりあげていた。
今回は、超正統派の町でのテロのとき、その命をもって住民を助けたのが、ナザレ出身のアラブ人クリスチャン(ギリシャ正教)、アミール・コーニーさんで、その葬儀に大勢の超正統派たちが出席したということである。
別件だが、先週には、ヘルツエル大統領が、エルサレムの「シオンの友ミュージアム」を初めて訪問したとのこと。このミュージアムは、異邦人で、ホロコーストの時代、建国の動乱の時代に、命をかけてユダヤ人とその国イスラエルを助けた人々のことが紹介されている。
福音派クリスチャンが建てたもので、右派傾向ではあるが、いままであまり知られていなかった異邦人の貢献を、ユダヤ人たちが知る機会になっている。
ここでとりあげられている異邦人たちは、クリスチャンで、日本の杉原千畝氏も含まれている。
<石のひとりごと>
ユダヤ人たちは、かけがえのない、命を非常に大事にするので、命をもって助けてくれた人のことは、本当に大事にしている。けっして形式だけではない。何事もただではないということを本当によく知っている人々であり、特に命への感謝は、律法を守ること以上に大事であると考えているようである。
ユダヤ教は、ただただ律法を守っていると思われがちだがそうではないと思う。残念ながら、そのように彼らを救ってくれた異邦人と、キリストとの関係をみるかどうかは別問題だが、わずかづつでも両者の溝が小さくなればと思う。