西岸地区で少年3人が誘拐され、イスラエルの治安部隊が大規模に捜索活動、ならびにハマス一掃にむけた作戦が行われていたが、残念ながら、まだ生存の確証も得られていない。
西岸地区では、6月28日から断食月ラマダンが始まることもあり、パレスチナ人の生活に支障を来さないよう、道路封鎖を徐々に解除し、捜索人数も縮小し始めたもようである。*今年のラマダン(断食月)は6月28日から7月27日
これまでに作戦に参加した治安部隊は15000人。逮捕した容疑者361人(うちハマス250人)。衝突で死亡したパレスチナ人は4人。
イスラエル軍が一斉捜査に入った家屋は1700軒。閉鎖されたハマス事業所65カ所。92のハマス事業所から活動資金を没収した。
<ハマス・3人の居場所知らない>
ハマスの政治部門指導者カリッド・マシャアルが、ハマス高官として、誘拐事件以後初めてメディアに現れた。マシャアルは、誘拐事件を支持すると語った。しかし、ハマスの関与は否定。「3人がどこにいるのか知らない。」と語った。
ガザからは、連日、ロケット弾が飛来している。昨日から今日にかけても迎撃ミサイルが4つのうち2つを撃ち落とした。一発は市街地に落ちたが被害はなし。
一発は、ガザ地区内部に落ちて、パレスチナ人の少女が死亡、その家族3人が負傷した。
ガザでは、今年もハマスの少年夏キャンプが行われる。小学生ぐらいのパレスチナ少年たちに軍服を着せ、軍事教練のようなことを行うキャンプである。今年は10万人の参加があると推測されている。
こうしたハマスの相変わらずの様子に、ネタニヤフ首相は、「ハマスはイスラエルに戦争を仕掛けている。」と非難した。
イスラエルの方針は「やられたらやりかえす。」である。一発のミサイルにもいちいち報復の空爆を行っている。
<釈放したパレスチナ囚人が釈放後に殺人>
今回の西岸地区ハマス一掃作戦では、誘拐されたシャリート兵士との交換でイスラエルが釈放したパレスチナ囚人が50人以上再逮捕されている。
その中に、今年の過ぎ越しの例祭でテロリストに殺害された警察官バルフ・ミズラヒさんを殺害した犯人ジアッド・アワッドが含まれていたことが明らかになった。囚人釈放がいかに危険なことであったか、イスラエル市民は怒り心頭といったところである。
しかし、これに対して、「非常に心痛むことだが、シャリート兵士と交換に囚人を釈放したことが、バルフ・ミズラヒ警官を殺す結果になったのではない。当時はそうするしかなかった。
ミズラヒ警官を殺したのは、確かに釈放されたジアッド・アワッドだったが、彼でなかったとしても、別のテロリストが殺しに来ていただろう。これが、イスラエルが置かれている現実であるということだ。」と反論する記事が出ていた。
<イスラエル世論もいろいろ>
イスラエルの世論は、一般的に、被害者少年たちとその家族に同情的である。しかし、まるきりそうとも限らないようである。
昨日、イスラエル人の友人と話したが、今回の誘拐事件について、誘拐された少年たちがだいたい危ないとわかっている場所で夜の10時にヒッチハイクしていたことへの怒りを訴えていた。
彼らを救出するために国は同年輩の青年からなる大軍を危険な任務につかせている。またそのために費やしている軍事費は計り知れない。
イスラエル軍の経済は、今かなり逼迫しており、空軍パイロットの戦闘機での実地乗務訓練の回数を減らさなければならくなっているほどなのである。
友人によると、少年たちが誘拐された夜、同じバス停で、同じ時間に女性が一人でヒッチハイクしていたという。西岸地区の入植地では、誘拐事件が発生してからも、あちこちのバス停でまだ若者たちが夜にもヒッチハイクしている。
この件については、イスラエルのテレビも問題ありとして報じていたが、西岸地区ではイスラエルのバスは2時間に1本しかないなど、ヒッチハイクは、いたしかたなく、入植者にとっては日常生活の一部なのだと言う。
ならば、国が援助してでも入植者たちで送迎バスのシステムを企画すればいいとは思うのだが、これまでそうはならなかったということである。
友人は、「入植者は神が守ってくれると信じている。ファナティック(狂信)だ。」と相当激しい言葉で怒っていた。
友人は、世俗派だが、常識的なレベルでユダヤ教の習慣を守っている、いわば、一般大衆の代表だと思っていただいてよいだろう。
通常、こうしたことは、公には話さないとは思うが、イスラエル人としても複雑なようである。