イスラエル治安部隊がテロ容疑3人射殺で復讐叫ぶパレスチナ人たち 2022.2.9

パレスチナ人3人が射殺された車に残された銃弾あと スクリーンショット

パレスチナ人テロ容疑3人射殺

東エルサレムや、西岸地区では、ここしばらく、パレスチナ人と過激右派ユダヤ人との暴力、それに介入、捜査するIDFとパレスチナ人との衝突が続いており、緊張と憎しみの連鎖が、炎上し始めている。

最近の大きな衝突は、昨年12月、違法な入植地前哨地ホメシュで、右派イシバ学生ヤフダ・ディメントマンさんが、テロ事件で死亡。以後懸念された通り、ヘブロンなど西岸地区かくちで、過激右派ユダヤ人たちのパレスチナ人への暴力が頻発している。これに対し、パレスチナ人のユダヤ人への銃撃や、車両突っ込み事件も発生している。

西岸地区では、パレスチナ人とイスラエル軍との衝突も発生している。最も最近では、先週、西岸地区で抜き打ち捜査を行なっていたIDF部隊が、一時拘束したパレスチナ人オマール・アサドさん(78)が心臓発作を起こしていたのに、放置してしまい、死亡させたことが大きな問題となった。

こうした流れの中、西岸地区北部A地域(パレスチナ自治政府管理下)で、イスラエルに対し敵対心が強い街の一つ、ナブルスで、イスラエルの治安部隊の対テロヤマム部隊が、車の中にいるパレスチナ人3人を銃撃して死亡させるという事件が発生した。

イスラエル側報道によると、死亡した3人は、アシュラフ・アル・ムバスリット、アダム・マブルック、ムハンマド・アル・ダキル。4人目は生死が不明とのこと。パレスチナ側の調べによると、4人はハマスではなく、ファタハ(アッバス議長所属)のアル・アクサ殉教団のメンバーであった。この名前が出てくるのは久しぶりである。

治安当局によると、イスラエルの治安部隊は、この3人が、昨年ディメントマンさんを殺害した疑惑があるとして、逮捕するために待ち伏せをしていた。3人の車が近づいてくると、車内から治安部隊に向かって銃撃しようとする動きがあったため、先に一斉射撃で車内にいる容疑者3人を射殺した。車内からは、M16ライフルが2丁発見されている。

ハマスとファタハの旗で大混乱の葬儀

事件後、ハマスは、西岸地区住民たちに、イスラエルに反発するストを行い、葬儀に出席するよう、呼びかけた。葬儀には数千人が集まり、イスラエルに対する復讐を叫んだ。群衆はほぼ全員が男性で、マスクなし。超密状態である。

さらに、この大群衆の中に、ファタハとハマス双方の旗がみられた。ファタハとハマスはライバル組織なので、自治政府の治安部隊がハマスの旗を取り下げようとする動きもあったとのこと。

www.timesofisrael.com/vowing-revenge-thousands-attend-funeral-of-terror-suspects-killed-by-israeli-forces/

イスラエルはテロを未然に防いだと賞賛

ベネット首相、またイスラエル治安当局は、この作戦で、大きなテロを防いだとして、これを賞賛する声明を出した。

しかし、現場の様子を見ると、あまりにも激しい銃弾のあとが、恐ろしいほどである。イスラエル国内では、アラブ統一政党から非難が出た他、パレスチナ自治政府議会は、国連人権保護団体に対し、事件を精査するよう、要求する声明を出している。

先週、国際人権監視団体アムネスティが、イスラエルを人種差別と非難したところで、時期的にみて、イスラエルへの非難につながっていく可能性もある。

石のひとりごと

復讐を叫ぶパレスチナの群衆、こういう絵図は際限なく何度も何度もみせられている。暴力で、死者が出たことは深刻なことだ。しかし、テロリストが先か、イスラエル軍が先か、最終的には、だいたいイスラエルがそこにいること自体が悪いといわれてしまう。

・・とはいえ、イスラエルはもう存在するのであり、今更、それを言ってもなんの解決にもならない。実際のところ、一般のパレスチナ人たちはどう感じているのだろうか。記事でみえてくるのは、イスラエルに憎しみを投げつける多くは男性たちの様子がほとんどである。

しかし、ガザでは、ハマスに対する反発を表明する運動が起こったりもしているので、パレスチナ市民の中には、ハマス、またファタハにも同意していない人もいるはずである。

パレスチナ社会は、多少共、日本のように周囲を気にする、周囲とともに生きなければならない社会である。思っていても口をひらけば撃たれるとか、非国民と言われるとか、そういう部分もある。

一方、イスラエルは、家族は何よりも大切にはしているが、それぞれの意見を言い合いながら、その違いでは排斥はしないというか、意見をぶつけ合いながら、お互いに合意点を探し出していく文化である。

イスラエルとパレスチナ、どうどうめぐり、人間的には、本当にどうあってもうまくいかない・・のかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。