休戦中に自宅の現状を見るキブツ住民たち:畑に小麦を巻くキブツ・べエリ住民 2023.11.30

Kibbutz Be'eri residents and visitors on November 27, 2023 inaugurate a Torah scroll in the kibbutz in memory of Amit Man, among those murdered by terrorists on October 7, 2023. (Courtesy of Amit Man's family)

変わり果てた故郷へ

ガザとの休戦となり、イスラエル側のキブツ住民も、避難先から自宅を見に帰った人もいた。あまりの酷さに、故郷を訪問した人々は精神的なショックを受ける結果になっている。

たとえばスデロットは、2万7000人の住む街であったが、今はまるでゴーストタウンになっている。当時からの食べ物が腐って、異様な匂いが漂っているという。

しかし、それでも先に進もうとするイスラエル人たちに様子も伝えられている。

November 23, 2023. (Canaan Lidor/Times of Israel)

スデロットの警察署はハマスに占拠され、警察官は全員殺されていた。そのスデロットの警察署では、ハバッド派のラビたちが、「暗闇に光をもたらすから」と言って、トーラーの中からのことばを印刷して奉献する様子が伝えられている。

キブツ・べエリは、最も殺された人が多かったキブツである。生き残った住民たちは、27日、キブツのシナゴーグに、クリニックで患者とともに殺された救急隊員アミット・マンさんを記念してトーラーの巻物を奉献していた。

また10月7日以来、はじめて、治安部隊の兵士たちが、キブツのダイニングで食事会をしたという。

www.timesofisrael.com/ceasefire-offers-traumatized-israelis-a-chance-to-visit-home-or-whats-left-of-it/

Fields of wheat in Be’eri
(Photo: Gilad Cohen)

またキブツ・べエリでは、短い休戦期間をチャンスとみて、740エーカーに、10人のチームが、小麦を植えた。全部で1235エーカーあるのだが、治安上まだ到達できない地域があるためである。

ディレクターのモティ・バラクさんは、「私たちは引き下がらない。いつも最善をつくすのみだ。静かな日を利用して土地を耕すのだ」と語っている。

www.ynetnews.com/environment/article/r1qi9o4hp

石のひとりごと

キブツ・べエリは本当に緑豊かな美しいキブツだった。春には、赤い野生のアネモネがいっぱいに咲いて、全国から人々があつまる命いっぱいの場所である。これを破壊しているところからも、ハマスがいかに悪であるかを思わされる。

しかし、ユダヤ人たちは、どんな悲惨なことがあっても、それで神をうらむことはない。What you have to do, you have to do.
これまでからもそうだった。全ては神の主権の下にある。だから何があっても、悲観的という“ぜいたく”に陥らず、前に進む。相変わらずの様子に励まされた。

また今、虐殺の現場に、聖書のみことばがとどけられている。苦しみの中でみことばと共に立ちつづける。これこそが選びの民の使命なのだ。主が彼らをあわれみ、この戦いに勝利させてくださることを信じる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。