ヘブロン付近銃撃テロ:12歳少女目前で母親が死亡 2023.8.22

3人の子の母バットシェバさんの葬儀

ヘブロン南部・ベイト・ハガイ交差点での銃撃テロで犠牲になったのは、幼稚園教師のバットシェバ・ニグリさん(42)と発表された。

バットシェバさんは、入植地ベイト・ハガイの住民で、3人の子供の母親だった。銃撃された時、一緒にいた少女は、3人のうちの一人で、当初6歳と伝えられていたが、12歳のシレル・ニグリさんだった。

母娘は、クファル・エチオンの学校に立ち寄って、新学期の準備をする予定だったという。しかし、その同じ日、21日夜遅くに、バットシェバさんは、クファル・エチオンの墓地に葬られることになった。

朝、母と一緒に出かけたのに、その夜には母を葬ることになったシレルさん。気丈にも墓地では、集まった人々にその時のことを皆に話したという。

しかし、母に対しては、「私やお父さん、私たちを見守ってほしい。私から離れないで。いつも見守っていてほしい。いなくなって寂しい。天国であなたといっしょにいる天使たちがうらやましい。」と悲壮な声をあげた。

www.jpost.com/israel-news/article-755626

バットシェバさんは大きな家族親族の一員で友人も多く、全員悲しみのどん底にいる。

22秒の間に20発の銃撃

月曜、バットシェバさんとシレルさんは、同じくベイト・ハガイ住民の男性アリエ・ゴトリブさん(40代)の車で移動中、パレスチナ人の車が、前に入り込んできて、至近距離からわずか22秒の間に20発もの銃撃を受けていた。車は穴だらけになっていた。

シレルさんは銃声3発を聞いて気を失った。しかし、「撃たれました。すぐ来て」と、救急車を呼ぶ電話をかけたのはシレルさんだった。シレルさん自身は、奇跡的に無傷だった。

運転していたアリエさんも、銃撃を浴びて重傷だが、意識はあるとのこと。

最近の紛争はジェニンやナブルスなど西岸地区北部が多かったことから、南部ヘブロン地域の警備は、若干緩和されていたという。テロが発生した瞬間、近くに設置されていたイスラエル軍の監視は最小限で、攻撃が非常に短かったこともあり、監視員は気が付かなかったという。

テロリストはヘブロンへ入ったとみられることから、イスラエル軍は、現在、ヘブロンを包囲して、捜査にあたっている。これまでに、犯行に使われたとみられる車両が、破壊され焼き払われた状態で見つかっている。

こちらのテロもハマスが賞賛するコメントを出した。

www.timesofisrael.com/two-israelis-seriously-wounded-in-terror-shooting-near-hebron/

西岸地区へイスラエルの治安部隊倍増派遣

IDF Chief of Staff Lt. Gen. Herzi Halevi tours the scene of the deadly shooting attack near the West Bank city of Hebron on August 21, 2023 (Israel Defense Force)

2つの深刻なテロ事件を受けて、イスラエル軍は、西岸地区での治安維持に、通常なら13部隊であるところ、23部隊へと大幅な増強を開始した。

そうした中、22日早朝に、バットシェバさんを殺害した容疑者とみられるパレスチナ人2人が逮捕されたとのニュースが入っている。

www.timesofisrael.com/israeli-forces-nab-2-palestinian-suspects-in-deadly-terror-attack-near-hebron/

続くテロ事件を受けて、強硬右派政治家たちは、「これまでの軍や防衛省が甘かったせいだ」と非難した。

ネタニヤフ首相は、軍はできるだけのことはしていたと反論した。実際、西岸地区ではイスラエル兵の犠牲も出る中、ドローンを含むかなり大量の武器が押収され続けている。

ネタニヤフ首相は、ギャラント防衛相とともにヘブロン南部の現場を訪問。軍から説明を受け、背後にイランが動いているといった声明を出した。

ネタニヤフ首相は、9月に予定されていた治安閣議を来週日曜に前倒しで開催すると発表している。

イスラエルがこのまま黙っているとは思えないことと、過激なユダヤ人入植者がどんな動きをするのかも懸念されるところである。

石のひとりごと

今年に入ってから、パレスチナ人関係で死亡したイスラエル人は28人。パレスチナ人は、150人以上が死亡している。そのほとんどは、西岸地区内での紛争によるものである。

このテロの波は、今年に入ってから、言い換えれば、今の強硬右派政権になってから、ということもできなくはない。閣僚の中には、西岸地区の併合とか、イスラエルをユダヤ人の国にしようとかの過激な発言も出ているので、パレスチナ人の間に危機感を拡大した可能性はあるだろう。

一方で、最近のテロ事件では、本格的なライフルや銃も使われていることから、前政権が、西岸地区の治安維持を怠ったとも言われる。どちらが悪いとも言い切れない。

しかし、西岸地区で、テロの被害になっているのは、ユダヤ人市民である。もしかしたら、恐怖で入植者が、出ていくことを狙っているということもあるだろうか?

いや、そうはならないことはパレスチナ人は十分わかっているだろう。西岸地区に住むユダヤ人は、その地は神に与えられた地と信じているので、何があっても出ていくことはないからである。

作戦ではなく、ユダヤ人を殺すことが正義だと信じ込んでいるからこそ、こんなテロ行為に出てしまうのである。

イスラエルはここからどこへ向かっていくのだろうか。これまでのように、今回もまた、大きな衝突にならずに沈静化していくことを祈るのみである。。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。