パレスチナ人との悲劇は続く:西岸地区でイスラエル兵1人友軍銃撃で死亡 2022.8.16

8月15日西岸地区 IDF

ガザ地区のイスラム聖戦と戦闘が終わって1週間が経過した。その後ガザからのミサイルはないが、停戦が続くかどうか不穏な状況は続く。

西岸地区では、その後もイスラエル軍による、テロリストやその組織の摘発への努力が続けられており、軍事衝突が続いている。悲しい事件も相次いで発生している。

西岸地区:イスラエル兵1人友軍の銃撃で死亡

イスラエルの治安部隊は、15日(月)、イスラエルと西岸地区との境にあるツルカレムに突入。その中で、イスラエル兵が1人死亡した。

ナタン・ファトゥシさん IDF

死亡した兵士はナタン・フィトウシさん(20)フランスから移住してまもなくの従軍であった。

当初、パレスチナ人に撃たれたと伝えられたが、その後、イスラエル軍は、ファトウシさんが、少し席を外して部隊に戻ってきた時、危険なパレスチナ人と間違った友人が、間違って実弾で撃ってしまうという事故であったと発表した。

現場は、写真のように、現場は真っ暗であり、誤射があってもおかしくないかもしれない。イスラエル軍では、危険を察した場合は、すぐに実弾をつかってよいとしているのだが、それがまた、このような事故につながる結果になったとみられている。

20歳の若い息子を失ったナタンさんの家族だけでなく、撃ってしまった友人の兵士もまた、一生の重荷を背負うことになるとだろう。あまりにも悲しい事故である。

www.timesofisrael.com/israeli-soldier-hurt-in-apparent-friendly-fire-incident-near-west-bank-city/

東エルサレム:密輸武器捜索中にパレスチナ人1人死亡

このほか、15日、東エルサレムでは、密輸武器の捜索に入った家で、治安部隊をナイフで刺そうとして飛び出してきたパレスチナ人、モハンマド・シャハムが、逆に銃撃され、後に死亡した。シャハムの家族は、治安部隊が間違った家に入ったと主張している。治安部隊は、正確な捜査令状があると言っているが、実際に密輸武器が実際にあったとはいまのところ報じられていない。

この部隊が撤退しようとすると、パレスチナ人たちが、屋根から多くの物体を投げつけている様子がネット上に上げられた。あまりにも悲しい様相でなんとも泣けた。

ガザ:久しぶり?ガザ国境で地下トンネル摘発

ガザ地区では、15日、イスラエル軍が、ガザからイスラエル領内に続く攻撃用の地下トンネルを発見した。イスラエル軍によると、トンネルは2枝に別れてイスラエル領内に向かっていた。しかし、イスラエルが国境全域に完備している地下6メートルにまで及ぶ地下防護壁に阻まれ、イスラエル領内には到達していなかった。

この地下防護壁は、武器などに対するセンサーを完備しており、遠隔からの攻撃もできるようになっている。さらに、たとえハマスがトンネルから地上へ出たとしても、地上にそびえる防護壁に、再度直面するしくみになっている。したがって、ガザからの地下トンネルは、もはやイスラエルにとっては、脅威ではないという。

それでもイスラエルは、このトンネルにコンクリートを流し込んで完全に使用不能にした。また、これを今あえて、公開することで、ハマスに、トンネル作戦が、もはや大いなる無駄であることをアピールしているようでもある。

www.timesofisrael.com/idf-says-it-foiled-hamas-attack-tunnel-with-two-branches-along-northern-gaza-border/

ガザ市民の現状

先週のイスラエルとイスラム聖戦との戦闘の後、約200万人のガザ市民はどうしているのだろうか。今回の戦闘で、また多くの建物が破壊され。がれきあちこちにみられるようになっている。

この戦闘で49人が死亡したが、このうち17人が子供たちであった。イスラエルは、少なくともこの11人は、ガザからの不発ミサイルで死亡したと主張している。いずれにしても、子供が17人も死亡したということは、それだけ悲しんでいる家族がいるということである。

戦闘前から、ガザ市民の失業率は50%にのぼっていた。結果的に全住民の80%は、海外からの人道支援に依存していた。この状況を改善すべく、イスラエルは、ガザ住民に労働ビザを発行し、イスラエルで働けるようにした。しかし、その数はまだわずか1万4000人である。先週の戦闘で今はその人々も職を失っている。

アルジャジーラによると、停戦が確認されてから、イスラエルは、国境から人道支援物資の搬入再開を始めた他、国連職員などもガザへ戻ったとのこと。

また特に深刻なのは、ガザの電力不足である。イスラエルからの戦闘中は、1日に2-3時間しかなかったと伝えられていた。これにより、電力を特に必要とする病院が、危機を表明したことから、イスラエルは、今トラック30台分ほどの燃料を急ぎ、ガザに搬入する許可を出したとのこと。

石のひとりごと:イスラエルに与えられた終わりなき永遠のとげ

パレスチナ人のイスラエルへの敵意は、イスラエルが建国してからもう74年になるのに、まだ衰えることがない。瓦礫の前でたたずむパレスチナ人の写真は、もはやいつのものかわからないぐらいに、同じような光景が繰り返されている。

繰り返すが、イスラエルは、好んでこうした攻撃を繰り返しているのではない。実際、情報収集や、攻撃技術の発展で、ガザ市民の犠牲者の数は、毎回大きく減少している。しかし、全くのゼロにはならないのである。

ガザや西岸地区のパレスチナ人の間では、悲しくも、イスラエルと戦うという点が、パレスチナ人のアイデンティティの一部になっているといわれる。イスラエルと戦うことがパレスチナ人であるとすれば、この戦いに、終わりはないということである。まるでイスラエルに与えられた永遠のとげのようである。

なぜ主はこの重荷を取り去らないのだろう。選ばれた民。しかし、試練無くして祝福なしである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。