テキサス州シナゴーグに安息日人質たてこもり事件:11時間後に人質無事救出 2022.1.17

Law enforcement officials gather at Colleyville Elementary School near the Congregation Beth Israel synagogue on Saturday, Jan. 15, 2022 in Colleyville, Texas. Authorities said a man took hostages Saturday during services at the synagogue where the suspect could be heard ranting in a livestream and demanding the release of a Pakistani neuroscientist who was convicted of trying to kill U.S. Army officers in Afghanistan. (AP Photo/Tony Gutierrez)

安息日のユダヤ教シナゴーグで事件発生

マリク・ファイサル・アクラム

15日、安息日の朝10時すぎ、アメリカ南部、テキサス州コレイビル(人口2万6000人の小さな町)のシナゴーグ、ベイト・イスラエルで、朝の祈りに来ていたラビ・チャーリー・シトロン・ウオーカー含むユダヤ人4人を、イギリス国籍のマリク・ファイサル・アクラム(44)が、銃をかざして人質にし、立て篭もった。

パキスタン人神経学者で、“アルカイダ女史”と言われたアーフィア・シディクイの釈放を要求した。シディクイは、アルカイダに関係するとみられる人物で、アフガニスタンで米軍将校を殺害しようとしたとして、86年の実刑判決を受け、2008年から就役中である。

今は、事件現場から32キロ離れたテキサスの刑務所にいる。アクラムとの関係は不明。

ワシントンDCから駆けつけたFBIの突入部隊を含む、警察と治安部隊が直ちシナゴーグを包囲して、突入の時期を待った。その間、ライブストリームで中の会話などが流れてきていたもようである。その中には、「俺はユダヤ人が嫌いだ。」などと叫んだり、感情の起伏が激しかったと言う。

同時に、シナゴーグに来て、「ここは(ホームレスのための)シェルターはやっているか」と聞くと、シナゴーグ側は、アクラムを招き入れ、お茶を出したと話し、申し訳ないと言ったり、ラビ・ウオーカーは好きだ。尊敬していると犯人が言っているのも聞こえていたとのこと。

アクラムの兄によると、アクラムは精神的な病を背負っていたとのこと。午後5時ごろ、70-80歳になる高齢の人質が一人釈放された。

www.timesofisrael.com/uk-police-arrest-two-teens-in-connection-with-texas-synagogue-attack/

FBIが突入したのは時間発生から約11時間後であった。犯人は射殺され、人質は全員無事救出された。後でわかったことだが、人質たちは自ら脱出したとの報告もある。以下は突入の瞬間。左端に、まず人質が出てくるのがみえる。

なお、イギリスでは、この件に関係したとみられる2人のティーンエイジャーが逮捕されたと伝えられている。詳細はこれからさらに明らかになっていくものと思われる。

訓練ができていたラビと会員たち:地域との連携も

ラビ・チャーリー・シトロン・ウオーカー

今回特に注目されたのは、非常に落ち着いた行動をとったラビ・ウオーカーであった。人質に負傷者も出さずにすんだのはこのラビだったからだと、警察からも高い評価を得ている。

その後、ラビ・ウオーカーは、自身とシナゴーグのメンバーが、コレイビルの警察やFBI、ADL(反ユダヤ主義監視組織)が提供していた、セキュリティに関するクラスを受講していたことをあきらかにした。

今回のような事態に巻き込まれた際にどうするのかを心得ていたということである。

また、事件発生後、午後になると、シナゴーグに近いカトリック教会に、コレイビルの別のラビ、キリスト教の神父、牧師、イスラム教イマムが集まってきて、状況を見守った。シナゴーグでのテロでは、前に残虐な事件になった記憶があるので、皆が懸念していたのであろう。

しかし、それだけでなく、この地域で、ラビ・ウオーカーが、かなり尊敬されていた人物だったことも、このような超宗教のリーダーが集まることになったと伝えられている。

www.timesofisrael.com/texas-rabbi-hostages-managed-to-escape-as-gunman-became-increasingly-belligerent/

石のひとりごと

先日神戸のシナゴーグのラビ・シュムリックが、危機管理に非常にたけていると書いたが、彼もきっと、この事件の渦中にあったラビ・ウオーカーのように、多少の事態には慌てずに行動するだろうと思う。正しい恐れを持って、的確な準備をしておくことは大事なことである。

またラビ・ウオーカーは、地域で他の宗教の指導者とも良い関係を維持していただけでなく、尊敬もされていたことがわかる。神戸のラビ・シュムリックも同様で、多くの人々の深い尊敬を受けている。ラビ・シュムリックは、意外にも、ユダヤ教を厳格に守るこを優先して、目の前にいる人をぞんざいに扱ってはならないと言っていた。

相手を大事な人として、扱わなければならないと言う。それは「愛か?」と聞くと、愛だけでなく、相手への尊敬が必要だと教えてくれた。また特に自分は、シナゴーグの顔なので、特にそのことに気を配っていると言っていた。

私は、キリスト者として、目の前にいる人への愛に敬意も十分に持っていたかどうか。。そういうことばにならないことが、人々の心に触れて宣教になる。その時に、私が信じているといっている神が敬意を受けることになるのである。自分は本当にキリストの面汚しばかりしているなと思わされた。

ともかくも無事に解決したことはよかった。アメリカで、また世界中のシナゴーグがこれからも守られるように。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。