ガムズ・コロナ長官記者会見:新型コロナ現状と対策 2020.8.18

ロニー・ガムズ教授 GPO記者会見 スクリーンショット

<イスラエル感染状況>

イスラエルの新規感染者は、2日前が2071人、1日前が1658人。(Worldmeter) 陽性率も以前高く、検査実施者に対する陽性率は10−11%にのぼる。これは10日ほど前が5.8%であったことからすると、かなり悪化している数字といえる。エデルステイン保健相は深い懸念を表明した。

現在、発症している人は、2万3000人前後。重症者は、400人を超えた。このうち、人工呼吸器利用者は、117人。死者は、昨日だけで17人となり、死者の累計は、711人である。

状況は決して良いとはいえず、ロックダウンも必要になるかもしれないと、イタマル・グロット保健省長官も深い懸念を表明している。

www.jpost.com/health-science/edelstein-10-percent-11-percent-of-all-israelis-screened-are-positive-for-coronavirus-639053

しかし、2週間前にコロナ対策長官に就任したガムズ教授は、できるだけロックダウンは避けるということを目標にしており、世界20カ国をグリーン国にしてイスラエル人の出入りを認めるなど、細かい分析による対策をすすめている。

<最大の懸念は9月1日新学期開始と病院の逼迫>

18日、ロニー・ガムズ教授が、記者会見を行った。ガムズ教授が今、最も懸念している点は、2週間後の9月1日に、全国で新学期が始まるのと、病院の逼迫が同時に来ているという点である。

イスラエルは今第二波にあるといわれるが、その始まりは、学校の再開であった。イスラエルで最大の感染経路は家庭内感染だという。子供達が感染し、家に持ち帰る例が多いのである。特に、大家族が一緒にすんでいるアラブ人地域、ユダヤ人地域で感染が広がりやすくなっている。

ガムズ教授は、低学年と高学年にわけて対策を考えていると述べた。低学年は、学校へ行くが、高学年は、オンラインで授業を行い、1週間に数日登校するなど、3段階にわける案を考えているとのことであった。これについては、今週中に閣議で決定するとのこと。

同時に、イスラエルの病院のキャパは、すでに100%を超えているところが多い。ガムズ教授は、この学校の始まりと病院のキャパの逼迫が同時にくるという点に、今もっとも神経をとがらせていると述べた。

<ガムズ長官の方針:地域別徹底的クラスター対策>

ガムズ教授の基本方針は、ロックダウンをできるだけ避けることである。その上で、陽性率が3%を下回ること、1人の感染者が感染させる率を0.8%にすることが目標であると述べた。

このために最も大事なのは、①国民との信頼、②感染経路の遮断、③各市町村主導のコロナ対策だと述べた。

①については、国がどんな対策をしていて、いったいどこへむかっているのかということを、明確に提示し、国民との信頼の中で、互いにすべきことをしていくということが欠かせないと言った。国との信頼関係の中で、国民は、手洗いや三蜜回避などの各自対策をすすめる。

②感染経路の遮断については、イスラエル軍とそのテクノロジーを使って、徹底的なクラスター対策を行っている。しかし、今の所、まだあまり効果は上がっていないと苛立ちをみせた。

③イスラエルの市町村とその生活様式が、非常に多様であること(ユダヤ(宗教的、世俗的)、アラブ(宗教的、世俗的)、ドルーズ、キリスト教地域など)をあげ、コロナ対策は国が主導では不可能であると強調。コロナ対策は各地の特徴をよく知っている市町村各地の指導者にかかっているとし、各地にセンターの設置をすすめていると述べた。

就任してから2週間、ガムズ教授が、現状を見て、対策に全力を挙げている様子は、その表情からもみてとれる。しかし、ものごとをはっきり言うイスラエル人である。様々な対策を説明したあと、「うまくいくかどうかはわからない。」と、その深刻性を強調した。

日本ならブーイングが来そうな言葉だが、イスラエル人は自立しているので、責任者がこういっても、それが現実なら「エイン・マラソット(しょうがない)」と言っている様子が目に浮かぶ。結局、それぞれが、感染しないように気をつけるしかないわけである。

<安全なところは解放:西壁トンネル、ヤド・バシェム一般公開再開>

ガムズ教授は、ロックダウンは極力避けるということで、感染の動向を分析し、危険でないと思われるところの解放は進めている。16日からは、ヤド・バシェムが、ミュージアムの再開を始めた。また、嘆きの壁地下トンネルの訪問もできるようになっている。。

<秋の例祭シーズン:ウクライナ訪問は控えることを要請>

イスラエルでは、9月18日から新年祭となり、ヨムキプール、仮庵の祭と秋の例祭シーズンを迎える。例年、巡礼や観光客が、もっともエルサレムに押し寄せるシーズンである。この時期、どこまでの制限をしていくのかがこれからの焦点である。

特に新年祭では、ユダヤ教超正統派ハシッド派の男性たち3万人以上が、ウクライナのウマンにあるラビ・ナフマン(18世紀のラビ)の墓にいく習慣になっている。

イスラエル政府、ウクライナ政府はともに、ハシッド派たちに、今年は訪問を控えるよう、要請を出した。しかし、これをブロックすることはないと決めた。それでも訪問する場合は、パーソナルディスタンスを守って欲しいと、ウクライナ政府は言っている。

ウクライナのチーフラビは、先月、訪問は5000人までとしたが、実際は8000人になる可能性がる。巡礼者はマスクを着用とする他、集団になるのは30人までと発表している。しかし、実際はどうなるのか懸念されるところである。

*以下は毎年のウマンでの新年祭の様子

なお、ウクライナの感染状況だが、現在、発症している人は4万2000人。死者は2100人になっている。

www.timesofisrael.com/israel-ukraine-urge-hasidic-pilgrims-not-to-visit-uman-for-rosh-hashanah/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。