ガザ人道危機問題:燃料搬入を拒否するイスラエルに国際社会の厳しい目とイスラエルの反論 2023.10.25

燃料切れでガザの病院が機能不全の危機:ガザ内にハマスが燃料50万リットル保持の中

Rafah, Egypt, Saturday, Oct. 21, 2023. (AP Photo/Mohammed Asad)

ガザ地区では、これまでに34台のトラックが、人道支援物資の搬入を行なった。その後さらに8台が入ったが、燃料については、イスラエルがハマスが戦闘に使う可能性があるとして認めないので、搬入されていない。

このため病院では、停電が始まっており、人工呼吸器や、未熟児の保育器などが停止して死者が出る危機に直面している。WHOによると、ガザにある36の病院のうち、すでに12病院が機能停止に追い込まれているという。

その後、アルジャジーラが国連機関の報告として伝えたところによると、このままでは、本日夜には、さらに病院が停電となり、およそ130人の赤ちゃんと、集中治療室にいる140人が死に直面するという。

アメリカのブリンケン国務長官は、24日に開催された国連安保理において、ハマスとイスラエルは一時的な人道的“保留”の時を持つよう提案した。ブリンケン国務長官は、ガザの民間人が被災するのは、ハマスが彼らを盾に使うからだと言いつつも、今は人道的な一時停止が必要になっていると述べた。

www.timesofisrael.com/blinken-urges-considering-humanitarian-pauses-in-gaza-fighting-to-protect-civilians/

しかし、イスラエルは、ドローンによるガザ上空の写真を提示して、ハマスが、50万リットルの燃料を保持していると主張した。これで少なくとも数日は、ガザの電力は賄えると主張。外からの燃料搬入は不要だと言っている。

以下のXへのイスラエル軍からの投稿には、「ハマスISISは民間人から燃料を盗んで、トンネルやロケット弾、指導者らが使っている。これらがハマスの最優先だということだ。ガザの市民の皆さんは、その苦しみはイスラエルのせいなのではなく、ハマスISISこそが原因だと知るべきだ」と改定ある。

www.timesofisrael.com/idf-says-gaza-photos-show-half-million-liters-of-fuel-held-by-hamas/

しかし、ハマスが燃料を出すとは考えにくく、このままでは、イスラエルへの非難がまた高まるかもしれない。

病院といえば、先日の爆発事件について、世界のメディアはおおむね、イスラエルの主張が正しいとの味方になっている。当初、イスラエルによる空爆と報道したことは、確認なく早まって報じていたということである。

ハマスは、この時の死者は471人と主張している。しかし、欧米の諜報機関は、爆発があったのは、病院本体ではなく、駐車場であった。その場が、避難民で溢れていたとしても、爆発での死者は50から150人ではないかと推測している。

また、ハマスは、昨日の大規模なイスラエルによる空爆で、400人が死亡し、これまでの死者は5700人と言っているが、信憑性は薄く、その中のどれぐらいが、民間人だったかも明らかにしていない。

www.timesofisrael.com/hamas-claims-700-killed-in-gaza-over-past-day-as-hospitals-filled-beyond-capacity/

また、ハマスは、昨日、人質の中で、高齢女性二人を釈放したが、彼女たちを穏やかに扱っていた一面を強調し、ハマスこそ、人道的だと世界にアピールしている。

世界はおおむね、ハマスの宣伝に傾いているようでまる、イスラエルが悪い国だという印象を撒き散らそうとする、激しい情報戦争だが、イスラエルはどうもこれに負けはじめているようにもみえる。

グテーレス国連事務総長が戦争の原因はイスラエルだと非難:激怒イスラエルは事務総長の辞任を要求

国連のグテーレス事務総長は、24日、国連安保理の席において、「イスラエルを襲った前例のない恐ろしいテロ行為は正当化できるものではない。すべての人質を人道的に扱い、無条件に釈放することを求めると述べた。」しかし、続いて次のようにも発言し、イスラエルを激怒させた。

「ハマスが、イスラエルに対して攻撃したのは、背景になにもなかったわけではない。56年にわたる苦しい占領におかれてた。入植地に暴力で土地を奪われた。彼らは家を追われ、家は破壊された。政治的な解決も遠ざかりはじめていた。」

イスラエルのエルダン国連代表はこれに激怒し、「あのような残虐な行為に正当性を見る人物に、国連事務総長は務まらない」として、グテーレス事務象徴の辞任を要求するとのコメントをアップした。さらに、グテーレス事務象徴のイスラエルへのビザの発効を拒否すると陸軍ラジオを通して発表した。

また、この機会にグテーレス事務総長と会談することになっていた、イスラエルのコーヘン外相は、「ハマスのした残虐な行為について公平なアプローチはりえない。ハマスは地上から一掃されるべきだ。」とXにアップ。会談をキャンセルした。

www.timesofisrael.com/israel-livid-after-un-chief-says-hamas-attacks-did-not-occur-in-vacuum/

その後、グテーレス事務総長は、ハマスがわけなくこういう行動に出たのではないとの発言を撤回しようとしてか、Xに「パレスチナ人の悲しみがハマスの恐ろしい恐怖を正当化することはできない。その恐ろしい攻撃(ハマスの)が、パレスチナ人全体への罰則を正当化とすることはできない。」

少々ややこしいが、非難はすべてハマスのテロ行為ということのようである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/un-chief-tries-to-walk-back-remarks-justifying-hamas-assault-on-israel/

マクロン仏大統領がイスラエル訪問:人質救出優先に

Kobi Gideon (GPO)

フランスは、その国民30人がハマスによって殺され、9人が行方不明(おそらく捕虜)になっている。フランスのペディア大統領は、24日、イスラエルを訪問。イスラエルと共に立つと表明し、ハマスは撃滅させるべきだと述べた。一方で、人質を解放することを最優先だとも述べた。

www.timesofisrael.com/macron-kicks-off-israel-solidarity-visit-meets-families-of-french-victims-of-hamas/

ハレヴィ・イスラエル軍参謀総長が地上軍侵攻の遅れについて説明:イスラエルはガザの民衆と戦っているのではない

near the Gaza border, on October 24, 2023. (Emanuel Fabian/ Times of Israel)

しかし、イスラエルの地上軍は、まだ進軍しないでガザ周辺にいる。これについて、24日、ハレヴィ参謀総長は、メディアに対し、理由なく遅れているのではなく戦略的な計画の中でのことだと発表した。ハマスの残酷さ、野蛮さは疑いの余地はなく、人質問題で手をこまねいているのでもないと強調した。

また、イスラエルはガザの民衆と戦っているのではない。ガザ民間人ができるだけ無事にこの戦争を乗り越えてもらえるよう願っている。だからこそ、南部への避難を呼びかけた。だから南部への食糧、水、医薬品の搬入を認めたと語った。

www.timesofisrael.com/idf-chief-says-ground-op-delayed-by-tactical-strategic-matters-rockets-target-center/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。